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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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ダンジョンマスター戦

「これは、ちょっと」

「動きが早すぎて、介入できませんね」

 新城志摩と結城紬は、そんな会話を交わしている。

 彼女らの目の前では、赤鬼が必死で鉄の棒を振り回していて、その棒になにかがぶつかる音が、ひっきりなしにしている。

 おそらく、だが、馬酔木恭介と宙野遥の二人が、姿を隠したままで猛攻をかけ、赤鬼が、防戦に回っているところなのだろう。

 それは、理解出来るのだが。

「これだと、下手に手出しできないなあ」

 と、新城が、こぼす。

 動きが早すぎて、新城の目では追いきれない。

 こんな状態で下手に手出ししても、味方の足を引っ張るだけ。

 と、そう思えた。

「それじゃあ、二人は、まず要救護者を現場から遠くへ運んで」

 思ったよりもずっと近い場所から声がしたので、新城はあやうく悲鳴をあげそうになる。

「あそこに寝ている人たちが居ると、全力が出せない。

 その間、おれたちが敵の気を引いておく」

「わかりました」

 結城紬が、冷静な声で即答する。

「あの方々を、敵から引き離せばいいのですね」

「余裕があれば治療までしてくれてもいいけど、その余裕は、まず与えてくれないと思う。

 あの人たち、死なないように気をつけていたぶられたようだから、最悪、そのまま放置しておいてもいい」

「あの中の誰かを殺害すれば、あのパーティは自動的に外に出られると思いますが」

「そんなことをする必要はない。

 故意に手を出せば、手を出した方のダメージになる」

「それもそうですね。

 あの方々の運命は、あの方々の運にお任せしましょう」

 結城紬はその声に頷き、その直後から、新城を促して行動に移る。

 男性の声だったから、宙野姉弟とつるんでいるとかいう、男子の声だったのだろう。

 姿を消したままの相手からいきなり声をかけられ、それでも冷静に対応出来ていた結城紬も凄い。

 対話の内容に一部かなり物騒なものが含まれていたような気もするのだが、自分の精神衛生のため、新城はあえてそのことを無視した。


「なんだ、もう手詰まりか?」

 長大な鉄の棒を軽々と振り回しながら、赤鬼は挑発する。

「期待して損を……おっ」

 背後から異様な気配を察知した赤鬼は、慌てて鉄棒を両手で構え直す。

 直後、そこに強大な、赤鬼の体よりも大きな氷の塊が激突。

 鉄棒を両手で掴み、赤鬼はどうにかその衝撃を相殺する。

 氷の塊は、粉砕されて周囲に破片をまき散らした。

「今のは、少し驚いた。

 奇妙な術を使う」

 鉄棒を大きく振ってから、赤鬼はいった。

「遠慮せずに、もっと手の内を……」

 いいかけた赤鬼は、途中で言葉を止める。

 視界が。

 妙に、霞んでいる。

「幻術?」

 赤鬼は油断なく周囲の気配を探りながら、ひとりごちた。

「いや、霧を発生させているのか。

 多少視界が悪くなっても、たいして」

 いいかけて、強制的に中断させられる。

 唐突に発生した放電現象に、赤鬼は全身を包まれていた。

「そこ!」

 間髪を入れず、距離を詰めていく人影があった。

 赤鬼は、感電して思うように動かない四肢を強引に動かして、その人影の打撃を、鉄棒で受ける。

 受けた場所から灼熱の炎が吐き出されて、鉄棒を押し返した。

 その炎は、赤鬼の体表にも降りかかり、皮膚をわずかに焦がす。

 これも、妙な仕掛けだ。

 と、赤鬼は思う。

 感電していて、今、なにかをしゃべってもろれつが回らないので、口にはしなかったが。

 今、目の前に居る連中は、いつもの腑抜けどもとは、少し違うかも知れない。


 雷は、割とダメージが通るっぽい。

 恭介は、頭の中で、そうメモを取る。

 目の前の敵、その最大の特徴は、知性があること、だった。

 あの巨体も、それを自在にする身体能力も、知性を持つという特性の前ではあまり意味をなさない。

 ああいうのは面倒だから、出来れば正面からは戦いたくはないのだけれどな。

 と、恭介は思う。

 あの手の敵は、こっちの手口を学習して、対策を講じる。

 同じ手口は、二度と通用しない。

 と、そう思った方がいい。

 恭介たちが敵の注意を引いている間に、結城紬が要救護者の確保に尽力してくれていた。

 新城もその作業を手伝っていたが、たまに敵に手を出すので、あまり助けにはなっていない。

 それはそれで、敵の注意が分散する効果があり、ありがたい動きではあるのだが。

 要救護者の安全がある程度確保出来たら試したいことはいくつかあるのだが、彼らが安全な場所まで移動するのには、もう少し時間がかかりそうだ。

 六人もの、自分の意思では動けない人間を、遠く離れた場所場で移動させる作業はなかなか面倒で、手間も時間もかかる。

 恭介は頻繁に移動しながら、敵を撃ち続ける。

 鉄棒に弾かれるだけであり、敵本体にダメージを与えるまではいかないのだが、今の段階ではそれでいい。


 赤鬼は絶え間なく降りかかる姿なき敵からの攻撃を鉄棒で反射的に振り払いつつ、目の前の槌使いに迫る。

 槌使いは交替している最中だったが、赤鬼自身の動きよりは、よほど遅い。

 一息に距離を詰め、鉄棒を振りおろす。

 その途中で、間に割り込んで来た盾が、視界を占有する。

 当然、鉄棒もその盾によって阻まれている。

 盾はそのまま赤鬼に迫り、赤鬼の体が押しやられる形となった。

 なかなかの、力だ。

 と、赤鬼は盾使いを評価する。

 こいつらは、体格的には自分よりもよほど劣っている。

 しかし、力や能力は、決して劣ってはいない。

 自分の同等か、あるいは、自分以上か。

 赤鬼は、冷静にそう判断した。

 だが、解せない。

 その、自分に見劣りをしない敵が、なぜ最初から、全力を出してこないのか。

 視界の隅に、先にここにたどり着き、今では完全にお荷物になっている仲間の体を抱えて移動している女の姿を認め、赤鬼はその答えを直感した。

 そうか。

 こいつらは、そこまで仲間のことを、気に掛ける種族なのか。

 ならば、そのお荷物を取り除いてやれば。

 もう少し、やつらもやる気を出してくれるかも知れない。

 赤鬼が踵を返して、お荷物を何人も抱えた女に迫ろうとした、その時。


「やらせないって」

 声が、した。

 どこから?

 と、思う間もなく、赤鬼の体は沈んでいく。

 意に反して、膝がさがっていた。

 足に、力が入らない。

 なぜだ。

 疑問に思った直後に、その答えを悟る。

 右膝の裏が、大きくえぐられていた。

 痛みを、今さらながらに自覚する。

 赤鬼は鉄棒を地に着け、それを腕で強く掴むことで、どうにか倒れるのを回避する。

 その隙を見逃さず、一度は離れ掛けた槌使いが、再び迫る。

 うるさい。

 左腕で払おうとするが、その二の腕に、大槌の頭が当たる。

 大槌の頭が爆発するように熱気を吐き出し、左腕は、肘から先から、きれいに焼き切れた。

 油断、だな。

 と、赤鬼は自覚する。

 もう少し気を張っていれば、こんな隙を見せることはなかった。

 ならば。

 赤鬼は、吠える。

 周辺の空気がびりびりと震えた。

 追撃しようとした槌使いはその場で足を止める。

 姿を消した敵どもは、どうやらこの程度では、姿を現さないらしい。

 赤鬼が丹田で力を込めると、えぐられていた膝の裏はその場で回復していく。

 焼き切られた左腕は、自戒のため、回復せずにあえてそのままにしておく。

 赤鬼は、再生した右足を踏み込んで、改めて直立した。

 右手一本で軽々と鉄棒を操り、それを肩にかつぐ。

「いいなあ、お前ら。

 予想よりも、ずっといい」

 そういって赤鬼は、対峙している敵に向け、笑顔を作った。

 そんな赤鬼の全身を、灼熱した火球が呑み込む。

 赤鬼の巨体よりも、さらに大きな火球だった。


「これで片付いてくれるといいんだけど」

 恭介は、姿を消したステルス状態のまま、心の中でそう呟く。

 恭介自身は、赤鬼のようにバトルジャンキーではない。

 こんな戦闘など、出来れば避けたいと、日頃から思っている。

 だから、手早く済ませてしまいたかった。

 幸いなことに、結城紬は勤勉に働いてくれ、要救助者を遠くまで移動させ終わっていた。

 だから、こうした大技も使えている。

 今の恭介は、ジョブを魔術師に変え、獲物を杖に持ち替えている。

 周囲の環境に影響を与え過ぎない程度の規模、に絞って、魔法攻撃をおこなっている最中だった。

 まだ、このダンジョンの攻略を終了した、というメッセージは響いていない。

 だとすれば、あの赤鬼は、この火球の中でまだ健在なのだろう。

 少なくとも、死亡はしていない。

 恭介は、そう判断する。

 ならば。

 恭介は、倉庫の中から杖をもう一本取りだし、左手で握った。

 先ほど、多少の効果があった雷撃を、火球とほぼ同じ効果で生み出し、持続させる。

 これでも、駄目か。

 攻略完了のメッセージは、相変わらず流れてこない。

 と。

「があああああっ!」

 吠え声が、あたりに響いた。

 先ほどもあった赤鬼の声だが、さっきよりもずっと大きい。

 恭介の魔法は二種類ともに強制キャンセルされ、火球が消えた中から全身焼けただれた状態の赤鬼が姿を現す。

 その焼けただれていた体表も、見る間に内側から盛りあがって肉に押される形でパラパラと下に落ちていく。

 すぐに、かなり健康に見える赤鬼が、立っている状態となった。

 以前と違うことといえば、左手の肘か先を失っていたことと、腰回りにわずかに身につけていた衣服も失い、全裸であったことくらいか。

 その状態で、まだ煙をあげている灼熱の鉄棒を右手で握り、赤鬼はそれを肩に担いだ。

 鉄棒を乗せた肩の肉が焼け、煙をあげはじめる。

「面白い術者が居るなあ!」

 赤鬼が、大きな声を出した。

「これだよ!

 こういうのでいいんだよ!」

 再生能力つき、かよ。

 と、恭介はげんなりする。

 赤鬼は満足そうであったが、恭介自身はこんな戦闘を楽しむ趣味は持っていない。

「どうした?

 もう来ないのか!

 面白い術者!

 お前が来ないのなら、今からおれがこの場に居る全員を皆殺しにして……」

 赤鬼が最後までいい終える前に、恭介の体は動いている。

 素早くステータス画面を操作してジョブを戦士に変え、倉庫から、以前、オーバーフロー五日目の朝に酔狂連から預かった試作品を取り出す。

 瞬時に赤鬼に迫り、みぞおちに試作品の頭を叩き込む。

 赤鬼の体の中心部で、爆発が起こった。

「は?」

 赤鬼は、なにが起きたのか理解しないまま、胸部から腹部にかけての部分を一瞬で失い、肩と頭の部分が落下していく。

 出力調整に難がある、ということで、お蔵入りになっていたHEATハンマーの試作品を、使用したのだった。

 ただでさえ出力が出過ぎる、という評価があったのに加え、恭介個人の魔力操作をセーブしないまま使用したので、このような有様になっていた。

 試作品のHEATハンマーは、その一撃だけで魔力の過剰供給に耐えきれずに砕け、壊れている。

 恭介は倉庫から試作品の剣を取りだし、地面に落ちかけていた赤鬼の頭部に振り下ろした。

 この剣は、魔力を注ぎ込むことで重量が変化する、という武器だった。

 単純に、魔力操作に長けた剣士が現状では居ないという理由で、お蔵入りになっている。

 その剣に、恭介は渾身の魔力を込めて、振り下ろす。

 赤鬼の頭部に命中した刃は、そのまま振り抜いて頭部そのものを破砕した。

 高速度で動く大質量の物質がぶつかったようなものだから、当然の結果といえる。

 恭介はその剣を倉庫に収納し、試作品の槍を取り出す。

 その槍で、赤鬼の残った部位、手足などを攻撃した。

 流れるような動作であり、ほんの数瞬で、赤鬼の体は目に見えない状態となった。

 恭介が動きはじめてからここまで、数秒も経っていない。


「はい、もういいから」

 遥に肩を叩かれて、恭介はようやく動きを止める。


『戌のダンジョンが攻略されました』


 その時になってはじめて、そんなメッセージが全プレイヤーの脳裏に響いた。

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戌のダンジョン、『諦めれば即座に帰還できる』『1度に1パーティーまで』の縛りをダンマスがある程度調整できることが明らかになった時点で1人死ねば退出の縛りが改変されてないか試すのはリスキーですよね 主人…
効率考えればそうなんだけどさ、初っ端から一人殺ればいいと言える凄女様ステキ
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