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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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人形の使い方

「なあ。

 あとで、でいいんだが、今日だけでもシャワー貸して貰えないか?」

 八尾が訊ねて来る。

「おれたち野郎はどうでもいいけど、女子は汗を流したいだろうし」

「シャワー設置したの、魔法少女隊だから、そっちに確認してください」

 彼方が即答する。

「多分、大丈夫だと思いますけど。

 その前に、今日も風呂を焚くかも知れません」

「そうなのか」

 八尾は少し驚いたようだった。

「この人数であんな大きな風呂を焚くのは、毎日だとちょっと贅沢すぎないか?」

 あれのために消費する水量と燃料を考えると、そう感じるのも無理はないかな。

 と、恭介も思う。

「まあ、ここは異世界ですし」

 彼方が、そんな風に答えていた。

「苦労している分、その程度の役得くらいあってもいいでしょう」

「それもそうか」

 八尾は、そういって笑った。

「あっちの人形は、今、なにをやっているんです?」

 八尾の人形が、少し離れた場所に車座になってなにやら作業をおこなっている。

 細長い棒状の物やら角張った金属片などを手渡しながら、なにかの組み立て作業をおこなっているように見えた。

「今やっているのは、ハンマーの組み立てになるな。

 商品名でいうと、HEATハンマー改」

 八尾が、説明してくれる。

「やつらは単純作業しかしてくれないんで、最初のセッティングが面倒なんだが、一度教えたことは忘れない。

 それに、やれといったことは延々と繰り返してくれるので、ああいうオートメーションにはぴったりだ」

「なるほど」

 恭介は、とりあえずそう返答しておく。

「あの人形も、八尾さんが作ったんですか?」

「ああ、そうだ。

 人形遣いと、それに、人形制作ってスキルがあってな」

 八尾が、さらに説明をしてくれる。

「発見した時は、なんだそれは、と思ったもんだが。

 実際に使ってみると、ご覧の通りに、かなり便利だ。

 向こうの拠点では作業場の広さが限られていたんで、あまり数が増やせなかったんだが。

 こっちなら、もっと増やしておいた方がいいな」

「人形遣いと、人形制作、ですか?」

 彼方が、なにか考え込みながら、質問する。

「それって、製造スキルですか?」

「人形制作は、そうだったな。

 人形遣いは、確か、趣味とかホビー系のスキルだったと思う」

 八尾がいった。

「戦闘系のスキルやジョブ以外は、まだ詳しく調べ尽くされていないのが現状だよな。

 この他にも、探せば有用なスキルがまだまだ眠っている可能性はある。

 生活スキルの皿洗いや床磨きだって、極めておけば、状況によっては、もの凄く役に立つかも知れないぞ」

 なるほどなあ。

 と、恭介は思う。

 戦闘系以外のスキルがまだ十分に検証されていないのは、単純にそこまで手間をかける時間がなかった。

 というのが、要因としては大きい。

 それ以外に、戦闘系以外のスキルやジョブが多過ぎて、とてもではないがそのすべてを検証しきることは難しい。

 という、事情もあった。

 戦闘系のジョブはたった五つしかなかったが、それ以外のジョブは二千以上もある。

 スキルは、そのさらに数倍になるだろう。

 たった百五十名のプレイヤーだけでは、とてもではないが、すべてを検証しきることは出来ない。

 単純に、物理的なマンパワーの問題だ。

 恭介はそんなことを考えている間にも、八尾は自分の倉庫から木の幹や根を取りだし、なにかのスキルでそれを切り出して、小さな部材を作っている。

 よくみるとそれらは、手や足、腰、胴体など、どうやら人形の部材のようだ。

 八尾は完成した部材をかたわらの人形に手渡していき、部材を受け取った人形は部材同士を組み合わせて、すぐとなりの別の人形に手渡していく。

 そうして部材が手渡されていくのに従って、だんだん人形が完成形に近づいていた。

 人形を作る、人形。

 状況的にはシュールにも見えたが、仕組みを考えると、それなりに合理的にも思える。

「それ、今伐採したばかりのやつですよね?」

 彼方が八尾に質問する。

「生木でも、問題はないんですか?」

「どうやら、そうらしいんだよなあ」

 八尾は答えた。

「一度部材なり完成形の人形なりになっちまうと、そういうオブジェクトとして存在してしまうらしい。

 おれたちが居た世界では、生木は水分量が多過ぎるんで、そのまま加工しても割れたり縮んだりと、問題が起きるわけだが」

 スキルを使って加工するのは、通常の、元の世界でいう加工とは、別の性質を持つ。

 と、いうことらしい。

 これも、生産職でなければ、なかなか気づけない知見ではあった。

「いや、ちょっと待って」

 あることに気づいた恭介が、疑問を口にする。

「そうやって人形で人形を作り続けると、理論的には、無限の労働力が得られるんじゃないですか?」

「ある意味では、そうともいえるが」

 八尾は答えた。

「こいつらは、アホだからなあ。

 いわれたこと、教えられたことしか出来ないし、なにより基本的な判断能力というのがない。

 単調な動作を繰り返すボット、というか。

 だからまあ、そこは使い方次第、になるな」

 そういえばこの八尾は、以前、建築関係の労働力については、

「心配する必要はない」

 的なことをいっていた気がする。

 今日の作業は、「物体を倉庫に収める」という、プレイヤーにしか出来ない工程があったから、仲間の手を借りていたわけだが。

 そうでない作業ならば、大半は、この人形たちで代替可能なのだろう。

「分析者と研究者は、基礎研究。

 おれの鍛冶士と三和の錬金術師は素材研究。

 岸見の武器職人は、それらの成果を使っての製品設計。

 桃木は、全体のマネジメント。

 で、この人形たちが、製造ラインを担当するわけだ」

 八尾は、さらに説明を続けた。

「他のパーティがこれから真似をしようと思っても、おれたち以上にうまくやれるとは思えないな」

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― 新着の感想 ―
この人形達って条件判断は出来るのだろうか? 例えば石を渡して「5g以下なら箱に入れろ、出なければ隣に回せ」というもの。 コレが出来るかどうかでかなり使い勝手が変わってくると思う。
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