第二十四話【8月3日・土曜日】
無事にご飯を済ませ、僕とゆうは二階の自室へと移動していた。
「雪くんのお母さんのご飯、美味しかった~」
「僕としては、懐かしい味だったかな」
「私もあれくらいできるように頑張るね」
「うん。……まあ今のままでも十分すぎるほどに上手だけど」
「ふふっ、雪くんこそ。女の子を褒めるの上手だね」
「いや、本心だよ」
「ありがとっ! ……それより、この部屋もアパートと同じで本だらけだね」
「ああ、中学生の頃とかは特に本ばかり読んでたし」
僕はそう返答し、部屋のなかを一度見渡す。
さてと。
一気に暇になったな。
何しようか。
あっ、そういえば!
ぬいぐるみのくまちゃんを探さないと。
汗かきそうだし、お風呂へ入る前に探しておくか。
「ちょっと物置で探し物をしてくるけど、ゆうもくる?」
「何探すの?」
ちょっと言うのが恥ずかしいため、僕はゆうから視線を逸らし、
「僕の大切なぬいぐるみなんだけどね、最近会ってないから、見てみたくて」
「……」
「ははっ、高校生にもなって変だよな。……けど、僕は今まであのぬいぐるみにどれだけ助けられたかわからない。だから、ぜひゆうにも見せてあげたい。そしてくまちゃんにもゆうを見て欲しい。僕にも彼女ができたよって」
「……そっか」
やけに反応が静かだなと思いゆうに視線を向けると、彼女は下を向いて寂しそうな表情をしていた。
「ゆう、どうしたの?」
「ううん、ごめん。なんでもないの。じゃあ探しに行こっ」
「? おう」
廊下に出て電気をつけると、トイレの横にある物置の前へと移動した。
扉を開けると、なかにはたくさんの物が入っており、若干埃っぽい。
「えっと、確かこのなかに入れてたはずなんだけど」
そう言いつつ、物を廊下に出していく。
段ボールや、本。
使わなくなった電化製品。
だがいくら探しても、目的のぬいぐるみは出てこない。
あれ? 段ボールのなかにしまってあるのかな?
そう思い先ほど廊下に出した段ボールを開けてなかを確認するが……やはりない。
「ごめん、ゆう。ちょっとここで待ってて」
さっきからずっと黙っているゆうにそう告げ、一階のリビングへと降りた。
そして洗い物をしているお母さんのもとへ行き、
「お母さん。昔僕がよく遊んでたあのくまのぬいぐるみ知らない?」
「あ~、懐かしいわね。あれなら二階の物置にあるわよ。探してみたら?」
「それが、物置はもう探したんだけど、全然見つからないんだ」
「……じゃあ雪の部屋のなかじゃない? 少なくとも私とお父さんは触ってないと思うけど」
「わかった。ありがとう」
そう告げ、再び二階へと戻る。
すると、廊下に出しっぱなしだった段ボール箱は、全てなくなっていた。
「ゆう……段ボールは?」
「あ、私がしまっておいたよ」
「そっか、ありがとう。……さてと、物置のなかにはなかったわけだし、次は部屋のなかを探してみるか」
「……うん」
「あっ! そういえば、ずっとほったらかしでごめん。一階のリビングでテレビを見ててもいいよ」
「ううん、私は大丈夫だから」
「ならいいけど」
廊下の電気を消し、部屋のなかへ。
まずは勉強机の引き出しを探そうと思ったんだけど……よく考えたらぬいぐるみが入るわけないよな。
となると、クローゼットのなかか。
そう考えて開けてみたが、見た感じ布団しかない。
「申し訳ないんだけど、ゆうも探しててくれる? くまのぬいぐるみだから、見たらすぐにわかると思う」
「あ、うん。わかった。じゃあ私は一階のリビングを探してみるね」
「おう、頼んだ」
そういえば一階にある可能性もあるな。
もしかするとお父さんが勝手に移動させているかもしれないし。
あの性欲猿……まさかおかずに使ったりしていないだろうな。
絶対にやめてくれよ?
あれは僕の大事な宝物なんだからな。
穢さないでくれ。
まあ、そんなことはしないだろうけどさ。
なんてったってぬいぐるみだぜ?
そんなことを思いながらも、一度折りたたまれている布団を全て出してみたが、くまのぬいぐるみはどこにもなかった。
僕は再び布団を綺麗にしまい、もう一度部屋のなかを見渡す。
だが、やはりない。
となると、一階か。




