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かつて救世の勇者転生、あるいはいずれ滅世の魔王降臨 ~王立学院の呪眼能力者~  作者: Sin Guilty


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第15話 『群抜き』③

 俺は冒険者ギルドでの見習いを介して、ゲームの時代から千年経ったこの世界における魔物の強さが、ゲームの最序盤にすら及んでいないことはすでに確認できている。


 つまり今のこの世界において、ユージィン(勇者様)に勝てる魔物など存在しないのだ。


 数で押したところで蹴散らされるだけだし、なんなら万が一魔獣が復活したところで、拡張シナリオ以降に登場した奴でもない限りは例外なく5分針で(危なげなく)始末されてしまうだろう。


 まあゲームオタクの早口での語りなど、即座にユージィンに理解しろという方が無理だ。


 それでも「どんな武器、防具を身に着けても確かに何も変わらないね」と俺の説明を納得してくれてはいるようだ。どの種類の武器を使っても、天才といわれるほどの技量を発揮できる理由についても「なるほど」と頷いていた。

 本人としても武器を持ち換えたら急に使えるようになる、もしくは逆に使えなくなる能力(スキル)が在ることには当然気付いていたので、俺の説明に納得がいくのだろう。


 まあゲーム時の設定など理解できなくても、文字通り桁違いの戦闘能力を有している――ユージィンは本物の勇者なのだと考えればいい。


 能力(スキル)の発動数であれば当然俺が圧倒しているが、まともな武器防具が存在していない現代においては、呪印が発動しなければたとえ俺であってもユージィンには勝てないということでもある。


 少なくとも『血戦』は魔獣の覚醒に呼応する形でしか起動しないので、対人戦(PvP)では役に立たない。


 つまりは拡張版級の魔獣が復活でもしない限り、俺は自然に№2以下でいられるということでもある。ユージィンには真実を伝えることは大前提となるが、これは相当にありがたい状況といえるだろう。

 しかもその上位者が大貴族であるというのも素晴らしい。


 右目の呪印の発動条件が整うことはまずないだろうし、万が一魔獣が復活することになったとしても俺の『血戦』はたとえ幻獣種(クリア後の強敵)相手でも一撃必殺である。


 俺にとってユージィンとつるむのは、実際的に考えればメリットしかない。


 だからこそ俺も、ユージィンにとってメリットもある相手になる必要があるだろう。

 少なくとも俺にとって友人というものは、どちらか一方だけがメリットを享受、あるいは搾取する関係ではないのだ。


「その僕と互角――いや凌駕しているクナドは何者なのだって話にならない?」


 そんな俺の考えを見透かしたというわけではないのだろうが、ユージィンがさも当然のようにそんなことを口にする。


「そんなことまでわかるのか?」


 ユージィンには嘘をつかないと決めている以上、「そんなことないって」とは言えない。

 確かに俺の呪印が発動さえすれば、ユージィンとてまるで相手にはならないからだ。


 だが当然俺は右目の呪印はもとより、左目の『血戦』についてもまだユージィンには詳しく説明などしていない。


 しかも当然の事とはいえ、さっきまでの身体能力測定において、俺がユージィンを上回った項目などひとつもないのだ。


 それも当然だろう。


 呪印に溶かし込んだ全ての能力(スキル)が上限レベルで発動しているとはいえ、拡張版における中盤入り口前後の適正武器防具を装備しているのと同義であるユージィンの能力を基準にすれば、そんなものは常人との誤差の範囲でしかない。


 プレイヤー・キャラクターの基礎ステータスは、それを基準に攻撃力、防御力を係数計算される高位の武器、防具があってこそ輝くものなのだ。

 強制的に武器防具を装備した状態の攻撃力、防御力を実現している『勇者の呪印』の持ち主に、係数がしょぼいゲーム最初期以下の武器防具で敵うはずもない。


 片っ端から測定器具を破壊していた本気モードのユージィンのような真似は、普通に人間離れしている程度の俺には不可能なのだ。

 

 確かに俺の呪印が発動すれば、物語中盤相当の武器防具の性能など問題にもならない。


 逆に最終DLCボスの魔物素材を使ったぶっ壊れ装備一式と最初期装備の差ですら誤差と見做せるほど、あらゆる魔獣を一撃で倒せる攻撃力と、あらゆる魔獣からの攻撃を無力化する防御力というものはとんでもないからだ。


 だが今の俺にはその呪印を発動させる手段などないのに、どうしてユージィンが俺の方が強いと判断しているのかがわからない。ユージィンの様子に俺への気遣い(遠慮)など全く感じられない以上、少なくともユージィンは本気でそうだと信じているのは間違いない。


「僕は一応全力を出していたからね。だけどそれを目の当たりにしても、クナドが全く脅威と見做していないことくらいは流石に理解できるよ。それは僕だけではなく先生方――試験官たちも同じだと思うよ?」


「マジか……」


 なるほどそういう理屈か。


 確かにスゲーとは思うものの、俺は真の意味で『勇者の呪印』を脅威とは感じていない。

 普通にしていて俺がユージィンに敵うことはないだろうが、万が一本気で殺し合いをした場合であれば、俺がユージィンに負ける要素が無いからだ。


 力を前にしての反応で、そういうことも見抜けるものなんだなあ……


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