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【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!  作者: 夕姫


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962. 姫は『一肌脱ぐ』そうです

 962. 姫は『一肌脱ぐ』そうです



 熱々の焼き鳥が運ばれてきたが、誰も手をつけない。この後悔こそが、川口さんをここ数日、仕事に集中できない状態に陥らせていた原因なのか。


 とはいえ、なんて声をかけてあげたらいいものか。彼女自身も言っているが、桜庭さんは気にしてないと思うしな。『気にしてないよ』とか『大丈夫』とかは言えるが、普通の人と状況が違う。よりによって推しとの話だからな。


 事務的な失敗であれば、リカバリー方法やプロとしての心構えを教えれば済む。しかし、今回は「推しにプロとして認められなかったかも知れない」という、自己肯定感に関わる感情的なトラウマに近い。表面的な慰めは、かえって彼女の悔しさを増幅させるだけだろうな。


 隣に座る高坂さんも、難しい顔をしている。彼女もまた、言葉を探しているようだった。


「あのね、文華ちゃん。すごく気持ち分かるよ」


 高坂さんは、川口さんの顔をまっすぐ見て、小さく笑った。


「だって、私も遠山さくら推しだもん。私も最初は現場にマネージャーとして入る時、緊張してた。『絶対に失敗できない』って責任と、『推しに迷惑をかけたくない』っていうファンとしての気持ちが、ごちゃごちゃになって、手が震えてたよw」


「陽葵先輩も?」


「うん。だから、文華ちゃんが舞い上がって頭が真っ白になったの、すごく気持ちが分かる。推しの前では、色々剥がれちゃうんだよね。でも……気付いたの。さくら先輩、香澄さんはいつも私のことをファンじゃなくて、『仲間』として見てくれている。マネージャーの時は高坂陽葵というマネージャー、ライバーの時は、星影つむぎという後輩ライバー」


 高坂さんはそう言って、微笑みながら続ける。


「つまり、公私の区別は、私たちがつけるべきものじゃないってこと。文華ちゃんは桜庭さんに気を遣わせてしまった思ってるけど、実際は違う。文華ちゃんが気を遣わないようにプロの仕事をしたのは桜庭さんの方だよ。文華ちゃんが新人マネージャーだと知って、『新人に余計なプレッシャーを与えないように』と、すぐに自己判断して切り替えただけなんだよ」


 高坂さんの言葉は、理屈ではない、当事者だからこそ持ち得る共感の力を持っていた。川口さんは、目を見開いて高坂さんを見つめ、それから俯いた。


「でも……マネージャーとして失格、ですよね。仕事とプライベートの区別もつけられないなんて……」


「失格なんかじゃないよ」


 高坂さんはそう言って、焼き鳥の皿の一つをそっと川口さんの前に寄せた。


「あのね、文華ちゃん。仕事って、一回一回の成功失敗で決まるものじゃないよ。そだから、文華ちゃんが今すべきことは落ち込むことじゃない。桜庭さんが自分にしてくれた『仲間としての配慮』に、仕事で応えることだと思うな。それに、推してくれている人が身近にいるんだもん。桜庭さんも嬉しいと思うけどな?どうですか神崎先輩?」


「うん。もちろん嬉しいよ。しかもオレは、『姫宮ましろ』が男だと知っても推してくれてるからね。本当に彩芽ちゃんには感謝してるよ。川口さん。オレたちライバーにとって、自分の活動を好きでいてくれる人が、一番近い場所で支えてくれるっていうのは、何物にも代えがたい心の支えになるんだ。それに、推しに会って全く動揺しない方が、人間としてどうかと思うぞ?」


「そういうこと。だから気にしないで次頑張ろうね文華ちゃん。焼き鳥美味しそうだよ?食べよ?」


「あっはい。ありがとうございます神崎先輩、陽葵先輩」


 そう言って川口さんは、目の前に寄せてあった熱々の焼き鳥を一本取り口に運ぶ。


「……美味しいです」


「うん!美味しいね。でも、文華ちゃんはまだ完全には吹っ切れてないよね?ということで、神崎先輩お願いできますか?」


「え?何を?」


「えっと……今、桜庭さんは歌枠の配信中ですねw」


「……凸しろってこと?」


「私は、すでに退社してますし、文華ちゃんも直接、桜庭さんから気にしてないって聞きたいと思いますし。それが出来るのが神崎先輩の特権じゃないですか。ね?文華ちゃん?w」


「え……」


 高坂さんは、茶目っ気たっぷりに笑っている。その視線は、焼き鳥を噛みしめたまま俯いている川口さんへと向かっていた。当の川口さんは、顔を真っ赤にして、何も言わない。しかし、その耳元が微かに震えているのを見て、彼女が「推しからの言葉」を切望しているのは明らかだった。


 確かに、彼女の心のわだかまりは、オレや高坂さんの理屈や共感だけでは消えないのは分かっている。オレたちがいくら「桜庭さんは気にしてない」と言っても、それは第三者の言葉に過ぎない。「プロとして認められなかったかも知れない」という自己肯定感に関わる感情的なトラウマには、やはり、「推しからの直接の言葉」こそが特効薬なんだろう。


 仕方ない。ここはマネージャーの先輩として一肌脱いでやるか。高坂さんが言うように、この場にいるオレが一番適任なのは事実だ。それに、川口さんがこのまま仕事に集中できない状態が続くのは、事務所全体にとっても損失だ。早めにこのトラウマを解消してやるべきだしな。

『面白い!』

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