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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
境界に立つ

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修学旅行1日目:霊と異能力

正直に言います。ここ数日モチベが終わっててサボってました。すみませんでした。

 佐々木君が落ち着いた頃に班のみんなから連絡が来て、もうすぐ次の目的地に着くところだったらしい。佐々木君の体調が問題ないことを確認して、移動しながら彼の話を聞くことにした。


 「…ふ、双葉君には迷惑かけちゃったね」


 「それは全然大丈夫だけど、取り憑かれてる間って意識はあったの?」


 「う、うん。何もできなかったけど、ちゃんと全部見てたよ…」


 「そっか、とにかく無事で良かったよ」


 京都の街を並んで歩きながら、佐々木君に寄ってくる黒い影をたまに追い払いながら進んでいく。黒い影はやっぱり大した力はないみたいで、〈浄火〉を纏わせた手で叩けばあっという間に消えていく。


 「…それって、双葉君の異能なの?」


 「うん?あぁこれ?」


 不思議そうに僕の手を見つめてくる佐々木君に〈浄火〉を見せつけると、彼は〈浄火〉から何かを感じ取ったのか驚いたような表情になる。


 「これは異能じゃないよ。何かって言われると…何だろう?」


 「い、異能じゃないの?異能以外で霊を祓える人なんて居るんだ…」


 「正直僕もなんでできるかはわからないんだけど…。ところで、霊って佐々木君に憑いてた黒い影のこと?」


 「う、うん…仮想体になる前の人の悪意とかが、霊になるんだ。霊は普通人に何かできる力はないんだけど…」


 そう言った佐々木君は、その先を言い淀んで何かを考え込むようにする。佐々木君に憑いていた霊も〈浄火〉さえあれば簡単に倒せる霊だったけど、そんな弱い霊が佐々木君に憑けた理由…。どんな理由にしろ、佐々木君が言いづらいことを無理に聞くつもりはない。


 「…無理に言わなくても大丈夫だよ。人に言いたくないことなんて、誰にだってあるからね」


 「い、いや…大丈夫、信じてもらえないかもしれないんだけど…ボクには異能力がないんだ」


 「…異能力がない?」


 佐々木君の口から出てきた言葉は、普通では考えられないような言葉だった。普通誰しもが異能力を持って生まれてくるものだし、異能力のない人なんて今まで聞いたこともなかった。


 「う、うん。異能力がないボクは霊にとってはすごく憑きやすいみたいで、小さい頃からよく霊に憑かれてたんだ…」


 「そう…なんだ」


 仮想体に対抗する手段は、基本的には異能力と異能でしか対抗できない。特殊な手順を踏めば無力化できるのも居るけど、そんなものは滅多にいない。仮想体になる前でも、仮想体と似たようなものの霊は異能力を持つ人には影響を与えられないらしい。


 「だ、だからボクは霊から身を守る方法がなくて…一度霊に憑かれてしまったらボクにはどうすることもできないんだ」


 「…大変だね」


 「う、ううん…いつもはそんなに大変じゃないんだ。普通は霊が人に近づくことなんてないし、こんなにいっぱいはいないから。…京都は普通じゃないんだ」


 「やっぱりこの街ってなんか変だよね?僕もここに来てからなんだか落ち着かなくてさ」


 佐々木君の言葉に、僕が京都に来てから感じていた違和感が確信に変わる。僕の言葉に佐々木君はまた驚いたような表情になる。


 「ふ、双葉君は霊への感覚が鋭いんだね…異能力のある人にとっては霊なんて意識する必要がないから、普通はわからないんだけど…」


 「僕もこの街に来てから初めてこういう感覚があったから、なんで霊が見えるのかはよくわからないや」


 「そ、そうなんだ…これからは帰ってからも霊が見えるかもしれないけど、近寄っては来ないと思うから気にしなくて大丈夫だよ」


 「わかった、ありがとう佐々木君」


 佐々木君から色々と教えてもらいながら京都の街を歩き、たまに寄ってくる霊を祓っているとふと疑問を覚える。


 「佐々木君って今まで霊に憑かれたらどうしてたの?」


 「え、えっと…実はボクの実家は京都にあってね?親戚が神様に仕えてる神職の異能を持ってる人が多くて、その人達に除霊してもらってたんだ」


 「え、それじゃあ憑かれる度に京都まで来てたの?」


 「う、うん…お母さんの異能でボクが憑かれてるかの判断ができるから、何かあったらすぐ京都に連れてきてもらってたんだ」


 「へぇ〜…本当に大変だったんだねぇ」


 佐々木君が朝のリニアの中で何回か乗ったことがあるって言ってたのはこういうことだったのか。佐々木君の苦労は僕なんかには想像もできないけど、人には言えない苦労がいっぱいあったんだろう。


 「あ、あの…ちょっと聞いても良いかな?」


 「どうしたの?何でも聞いてよ」


 こちらの表情を伺いながらそう言う佐々木君に笑って答える。正直霊に関してとかなら佐々木君の方が断然詳しいだろうけど。


 「ふ、双葉君って何であんなに強かったの…?ボクを押さえてた時も、何だか慣れてるような感じだったけど…」


 「あぁ〜…なんて説明したら良いかな…」


 冷静に考えて、僕がここまで戦いなれてる理由は普通の人からしたらかなり特殊だ。双葉家のことを言わないで説明するのがかなり難しい…。無難な説明は…


 「えっと、僕の家って対仮想で働いてた人が多くてさ。小さい頃から憧れて、強くなりたくて色々やってたんだ」


 「そ、そうなんだ…!すごいね、だからそんなに異能力の扱いも上手いんだね…」


 「師匠達に比べたらまだまだなんだけどね」


 「それでもすごいよ!さっき火の玉を浮かべてたのもすごい綺麗だった!」


 珍しく身を乗り出すように興奮した様子で言ってくる佐々木君に少し驚くけど、その時にうっすら佐々木君の目が見えて行きのリニアでの光景が蘇る。


 「そう言えばさ、佐々木君って何で目元を隠してるの?嫌だったら言わなくて良いんだけど」


 「あぁ…え、えっと笑わない?」


 「え?うん、笑わないと思うよ?」


 「それなら…元々は霊に見えてることに気づかれないように目を隠してたんだけど、それが普通になっちゃってから何だか人に目を見られるのが恥ずかしくなっちゃって…」


 「…ふふっ」


 笑ってはいけないと思いつつも、小さく笑いが漏れてしまう。それじゃあ行きのリニアで沈んだようにしてたのは単に恥ずかしかっただけなんだ。僕が笑ったのを見て、佐々木君は顔を赤くしながら口を開く。


 「ひ、ひどい…!笑わないって言ったのに!」


 「ご、ごめん!ふふ、すごく綺麗な目なんだから恥ずかしがることないのに」


 「そんなことないよ…からかわないでよね?」


 「え〜?ケンも言ってたけど綺麗な顔してると思うよ?」


 「双葉君と桂君に言われてもみじめなだけだよ…」


 そんなやりとりをしながら、ふとこんなやりとりを前にケンともしたなと思い出して笑ってしまう。ケンとするようなやりとりを、佐々木君ともできている。そんな嬉しさが心の中に広がり、一気に佐々木君との距離が縮まったような感覚があった。


 「ふふ…ねぇ佐々木君、佐々木君のこと名前で呼んで良いかな?僕も名前で呼んでくれて良いからさ」


 「え…い、いいの?」


 「うん、いつまでも他人行儀なのもね」


 僕の言葉に佐々木君は少し考え込むようにして、覚悟を決めたように僕に向き直って口を開く。僕はそんな様子に思わず少し笑顔になりながら答える。


 「…それじゃあ、よろしくね葵君」


 「うん、よろしくね(レイ)君」


 …そうして零君との距離が縮まったのを感じながら、僕らは班のみんなが待つ目的地に向かって行った。


ここ数日更新しない間も見てくださってた方々、感想や評価して頂いていた方々、本当にありがとうございます!

これからまた気を引き締めつつも楽しんで更新して行きますので、お付き合い頂けると嬉しいです!

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