おねえさんのおうち
みなさん!総合評価Ptが3000を超えました!本当にありがとうございます!
これからも更新続けて行くので、面白いと思ってもらえたら気が向いた時にでも読んでいってもらえると嬉しいです!
「おねえさん?大丈夫?」
「…え?あ、大丈夫…だけど。一体何が起きたの…?」
僕が声をかけると、ようやくおねえさんは気を取り直して返事をしてくれた。ただやっぱり困惑しているみたいで、腰を抜かしたように座り込んだまま僕に何が起きたのか聞いてくる。
「う〜ん…僕はおねえさんがお願いを聞いてくれるっていうから助けただけで、なんでこんなことになってるかはおねえさんの方が詳しいんじゃない?」
「それは、そうかもしれないけど…。その人達って生きてるの?」
「大丈夫、気を失ってるだけだよ」
さっきまでこの人達に捕まりそうになってたのに、ずいぶん優しいんだなぁ。僕の言葉を聞いて少し安心した様子のおねえさんの手を引いて立ち上がらせる。
「…とりあえず、助けてくれてありがとう。私は東片理有、あなたは?」
「あ〜…僕は双葉湊。よろしくね、おねえさん」
なんとなくそのままセラスと名乗るのもあれかと思って偽名を名乗る。偽名と言っても葵の苗字と僕の人間だった頃の名前を組み合わせただけの安直なものだけど。
「とりあえず、ここで話すのもなんだし移動しようか」
「あ、そうね。…近くにいいところがあるからそこに行きましょうか」
そうしておねえさんの案内で移動を始める。移動しながら、なんでおねえさんがスジモンさん達に狙われていたのか聞いてみる。
「それで、おねえさんはなんであの怖そうな人たちに追われてたの?」
「それは…私が東片自動車の社長の一人娘だから、だと思うわ」
東片自動車っていうと、よくテレビとか動画の広告で出てくるかなり大きい車のメーカーだったよな?確かにスジモンさん達が人質とか言ってたし、身代金目当てだったのか?いや流石にこの犯罪者が生きにくい世の中でそんな短絡的な犯行するのか?とはいえ…。
「へぇ〜!おねえさんのお家ってお金持ちなんだね」
「まぁ、そうね」
そう答えたおねえさんの表情は少し曇っていた。おねえさんが何を考えていたのかはわからないけど、話題を変えるように僕のことを聞いてくる。
「えっと、湊ちゃんでいいかしら?」
「うん、好きに呼んでいいよ〜」
「それじゃあ湊ちゃん、こんな時間に一人で出歩いてて大丈夫なの?お家の人が心配してるでしょ」
真剣にそんなことを聞いてくるおねえさんにそっちも大概でしょとは思ったけど、実際なんて答えたもんかなぁ…。その帰る家を今日だけでいいから提供してもらおうと思ってたんだけどね。
「あ〜…それは大丈夫。僕お父さんもお母さんもいないから」
「え…ご、ごめんなさい無神経なこと聞いてしまって」
「大丈夫だよ!別に悲しいことがあったわけじゃないからさ!」
「…そうなの?」
そうなの。実際お父さんもお母さんも僕にはいないし、家もないから嘘は言ってない。
「そういえば、今ってどこに向かってるの?」
「あぁ、えっとね?私の家で所有してるビルがあって、すぐ近くだからそこなら落ち着いて話せるかなと思って」
「へぇ〜、おねえさんのお父さんとお母さんもそこに住んでるの?」
僕のその質問におねえさんはまた表情を少し曇らせる。…藪蛇だったかと思ったけど、おねえさんはすぐに表情を明るいものに切り替えて口を開く。
「ううん、私だけ。…あ!湊ちゃんがよかったら、今日はうちに泊まっていく?」
「え!本当に!?」
そのおねえさんからの提案は僕にとっては渡りに船だった。そもそもお礼はそのことを頼もうとしてた訳だし。おねえさんからそう言ってくれるなら楽で助かる。
「うん、湊ちゃんがいいならだけど…」
「もちろん!よかったぁ…これで今日の寝る場所には困らないや」
「え…」
僕の言葉を聞いておねえさんは何やら驚いた様子で何かを考え込むように黙ってしまう。どうしたんだろ、僕何か変なこと言ったかな?…あ、もしかして僕のこと天涯孤独のホームレス娘だと思ってるのか?いや合ってはいるけど。
何を考えたのかはわからないけど、おねえさんは僕が誤解を解こうと口を開く前に僕の手を取ってぐいっと顔を近づけてくる。
「湊ちゃん、何か食べたいものとかある?私、結構料理得意だし言ってくれれば作ってあげられるわよ!」
「え…あ〜、そうだなぁ」
食べたいものかぁ…。そういえば今日は対仮想に行く前に食べたみたらし団子しか腹に入れてないな。…そもそもまともな食事自体が久々だからなぁ。あ、そうだ。
「ハンバーグ…かな?」
「ハンバーグね!そうと決まれば急ぎましょうか!材料ならあったはずだから!」
「え、ちょとおねえさん!」
おねえさんは握っていた僕の手をそのまま勢いよく引いて駆け出す。もしかしたらこのおねえさん、思い込みが激しい方なのかもしれない。僕の言葉は全然耳に入っていない様子で小走りで進んでいく。
そうしておねえさんに手を引かれるままに連れて行かれてしばらくすると、僕がおねえさんを最初に見つけた時に登っていたビルの真下でおねえさんはようやく足を止める。
「ついたわよ!ここの最上階が私の住んでるところよ」
「えぇ〜…確かにお金持ちとは言ってたけど、ここまでなんだ」
おねえさんは僕の手を引いたままホテルのセキュリティを操作してエレベーターに向かっていく。迷いない動作で最上階のボタンを押してエレベーターが動き出し、あっという間に最上階に到着する。
「うわぁ、こんなに広いのにふた部屋しかない。えっと…おねえさんの部屋はどっちなの?」
「え?どっちも私の部屋よ?」
「…え?」
「言ったでしょ?最上階が私の住んでるところって」
…言ってたけど。確かに言ってたけど!ここまでだとは思わないじゃん!
あの…?多分双葉家の方がお金持ちですよ?あんまり恩恵受けてないからしょうがないかもしれないけど。
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作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…




