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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
戦闘狂の誕生

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謝罪とお礼

 幸いなことに一条家の方々は昨日のことがあってもそこまで変わった様子はなかった。一条家の方々を車に案内しようとすると、初日のように御当主に同じ車内まで連行されてしまった。


 昨日は僕と師匠の判断でお嬢様を危険に晒してしまったわけだし、なんなら遠ざけられてもしょうがないと思っていたんだけど…。


 「あの、道也様?私は別の車でも…」


 「言っておいただろう、君にはできるだけ娘といてほしいと。それにね…」


 僕のそんな考えを知ってか知らずか、道也様は僕の耳元にそっと口を近づけて小声で囁く。


 「(娘も昨日のことは少なからずショックだったようでね、守ってくれた君が近くにいた方が安心すると思うんだ)」


 「…そう、でしょうか」


 元はと言えば僕が原因で危険な目に遭わせてしまったのに、僕が居て安心できるなんてことはあるんだろうか…?


 伺うように道也様を見れば、道也様はにっこりと微笑んで頷く。…親である道也様がそう言うなら、そうなんだろう。少なくとも昨日会ったばかりの僕なんかよりもお嬢様のことはわかっているはずなんだから。


 「よぅし、それじゃあ行こうか葵君」


 「えっ…あ、はい」


 そうして道也様に肩を押されて連行され、初日のようにお嬢様の隣に強引に座らされてしまった。仕方ないかと思いつつも隣を見ると、お嬢様がこちらに視線を向けていた。


 「あ、あの…葵さん」


 「お嬢様!」


 何はともあれ昨日の事を謝らないと、と口を開いたらお嬢様に被せてしまった。


 「「あっ、すみません…」」


 「えっと…遮ってしまってすみません、なんでしょうかお嬢様?」


 また被せてしまった…と思いつつお嬢様が何を言おうとしていたのか尋ねると、お嬢様は少し恥ずかしそうにしながら口を開く。


 「あ、その…葵さん、昨日はありがとうございました」


 「え…」


 全く予想していなかった言葉に呆然とする僕に、お嬢様は佇まいを直しながら続ける。


 「葵さんがいなければ、私はここにはいなかったかもしれません。ですので、助けて頂いてありがとうございました」


 「そんな…」


 そんなことはない。むしろ僕のせいでお嬢様は危険な目に遭ったんだ。お礼を言われる理由なんて…


 「そんなことはありません…むしろ、危険な目に合わせてしまって申し訳ありませんでした」


 僕もお嬢様に向き直って深く頭を下げる。


 「私が中庭に誘導しなければ、あんな危険な目には遭わなかったかもしれませんでした。私の実力不足です、申し訳ありませんでした」


 謝って済むことじゃあない。けど、護衛が護衛対象を危険に晒した以上謝らないと気が済まない…。後で改めて道也様と真由子様にも謝らないとな。


 「そんな、葵さん!頭を上げてください!」


 頭を下げたままでいると、お嬢様が慌てたような声でそう言ってくる。ひとまず顔を上げると、至近距離にお嬢様の顔があった。


 「事情は私も聞いています!中庭に案内してくれたのも私を守るためなんでしょう?」


 「あ、あのお嬢様…」


 至近距離でさらに身を乗り出すようにして僕に詰め寄ってくるお嬢様に、僕は必死に体を逸らして距離を取ろうとする…が、抵抗虚しくお嬢様に両肩をガシッと掴まれてしまう。


 「何より、葵さんは私を守るために必死に戦ってくれました!謝られる理由なんてありません!」


 「お嬢様…お嬢様!」


 「なんですか!」


 僕の必死の呼びかけにようやく返事をしてくれたお嬢様を、できるだけ刺激しないような言い方はあるものかと必死に考えながら口を開く。


 「えっとぉ…その、お顔が…」


 「え…?」


 僕の言葉にようやく自分の体勢がわかったのか、みるみる顔が赤くなっていくお嬢様。…もうちょっと気の利いた言葉は出てこないのか僕!


 「ひゃっ!ご、ごめんなさい!」


 「い、いえ…大丈夫です」


 顔を真っ赤にして離れるお嬢様。なんとも言えない気まずい空気をなんとかしようと口を開こうとした瞬間、通話の着信が入る。


 「あ…すいません、少し失礼します」


 「あ、はい…」


 前にも車でお嬢様と話している時に通話が来たなぁ…なんて思いながら通話を確認すると、前回同様に師匠からの着信だった。


 「はい、葵です。どうしました?」


 「〈葵、これから仮想体頻出地帯に入る。この後少ししたら車が停車するから、降りてオレと周囲の警戒と仮想体の対処に当たってもらう〉」


 あぁ、朝のミーティング中に話していた仮想体頻出地帯か。確か車に仮想体が接近しないように、周囲で警戒と対処をしないといけないんだったな。


 「分りました。停車後すぐに合流します」


 「〈おう、車から降りたら走って守ることになるからな。今のうちに体を休めておけよ?〉」


 「はい…ん?」


 走る…?走るってどういうことだ?そういえば走っている車の周囲を、走りながらついていくのか?…僕が疑問を口にする前に、師匠は通話を切ってしまっていた。


全然関係ないですけど、身体強化すれば車のスピードぐらいは余裕で出せるんですよね…


閲覧、ブックマーク、評価やいいねして頂けた方、誠にありがとうございます。

感想も励みになっています。誤字報告も助かります。


作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…

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