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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
戦闘狂の誕生

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生の敵意

 「え…?」


 黒装束の人を見たお嬢様が引き攣ったような声をあげる。そりゃあそうだよね、訓練をするのですら怖いと言っている人が近寄る人間殺しますみたいな人を怖がらないわけがないもんな。


 「ん…おや?こんなところに子供がいるとは。お父さんやお母さんはどうしたのかな?」


 黒装束の人は道端で迷っている子供に声をかけるような口調で話しかけてきた。声質からして男だろうことぐらいしかわからないが、気遣いすら感じる口調とは裏腹に赤い液体が付着したダガーを隠す様子もなく見せてきている。


 「お花を見にきたんです。お母さんから中庭の薔薇が綺麗だと教えてもらったので」


 あえて年相応な語り口調でそう答えてみる。相手がどういう対応をしてくるのかがわからないから、とりあえず半歩だけ前に出ながらお嬢様と黒装束の男の間に立って様子を見る。後ろからお嬢様の上擦ったような息遣いが聞こえてくる。


 「そうか、ご覧の通りここの薔薇は見事なものだよ。私もやることを忘れてつい見入ってしまっていたんだよ」


 そう答えながら黒装束の男はゆっくりとした歩調で近寄ってくる。相変わらず刃物を隠す様子もなく近寄ってくるし、これはもう完全に始末するつもりなのかな?殺意や敵意を感じないから判断がしにくいけど、あくまで子供だからと舐めているだけかもしれない。


 「そうなんですね、お兄さんは何しにホテルに来たんですか?」


 僕が今できる対策はなんだ?最善は僕もお嬢様も無事に師匠と合流すること。とりあえず攻撃してきた時のために反撃の手段は用意しないといけないから、指輪をはめた手を体の後ろに隠してナイフを準備しておく。


 「私かい?まぁ、ちょっとしたお仕事だよ。君たちは何をしに来たんだい?」


 少しでも何か聞き出せないかと思ったけど、適当に誤魔化されてしまった。それどころかこちらが答えたくない質問までしてきた。ここで何か答えることで僕達の安全を確保できる可能性はあるのか?そもそも攻撃してきたら使い慣れていないナイフで凌げるのか?初めから変に希望は持たないで大鎌で反撃できるように備えた方がいいんじゃないか?


 「えっと、お父さんとお母さんがかいしょく?って言うのに行ってるから僕らは暇になっちゃったんです」


 …と、僕がそう答えると黒装束の男は歩みを止める。なんだ?何が引っかかったんだ?僕がナイフを準備していたのがバレたのか?


 僕が焦りを隠せないでいると、黒装束も相変わらずダガーは隠していないものの悩むようなそぶりをしながらその場で立ち止まっている。


 「…ふむ、この場合はどうしたものか。事前契約にない状況だ」


 そう呟いて悩んだ様子の黒装束は、数秒後に纏う雰囲気を一変させる。それは、訓練中の師匠とは違い冷酷な空気の中に明確な殺意が込められていた。それは、黒装束がその手に持ったダガーを首元に突きつけられているような威圧感の伴うものだった。


 「…ひゃっ」


 僕の後ろでお嬢様が短く悲鳴をあげてへたり込んだような音が聞こえたけど、僕にはそちらに視線を向けることすら許されていなかった。 少しでもこの男から目線を外せば、僕もお嬢様も二度とあの会食会場に戻ることはできないという確信があった。


 「うん。この場合はあちら側の不手際だ。残念だがここで消えておいてもらおう」


 「!!」


 黒装束はあくまで自問自答するようにそう言いながら先ほど同様のゆっくりとした歩みで近づいてくる。これは…もう戦闘を回避するのは無理そうだな。幸いなことに黒装束はこちらを脅威とは思っていないのか、あくまで余裕の態度でこちらに向かってきている。そこを突いてうまくいけば、師匠に事態を報告することぐらいはできるかもしれない。


 「…フッ!」


 近づいてくる黒装束に向かって、隠していた手に持ったナイフを投げつける。そして相手の反応も確認しないまま指輪に異能力を込めて大鎌を作り出す。


 「…!これはこれは、ずいぶんやんちゃなお子様だな」


 なんとか不意をつくことには成功したようで、大鎌を作ることはできた。近づいてくる黒装束に対して完全にお嬢様の前に立って構え、未だに繋がったままの師匠との通話に向かってなんとか報告しようと口を開く。


 「師匠!中庭で正体不明の敵と接触しました!」


 「ふん?なるほど、君は護衛側だったわけだ。これは油断していたと言わざるを得ないな」


 「誰かが助けに来てくれるまで油断したままお相手頂けると大変嬉しいんですが」


 「それは君の実力次第だ。せいぜい生き残れるように奮闘するといい」


 僕の情けない言葉に、黒装束は今までだらんと手に持っていたダガーを腰よりも高いぐらいの位置に構えながら答える。動作としてはただ手を少し上に持ってきただけなのに、先ほどまでよりも威圧感が増す。師匠に向かって呼びかけたはいいものの、五感が全て目の前の黒装束に向かっていて通話から聞こえてきている音を音として認識できない。


 「それじゃあ、始めようか」


 「…!!」


 平坦な口調でそう言った黒装束の取った行動は、間合いを詰めることでも様子見でもなかった。よく師匠に木を見て森を見ろとか訳のわからないことを言われて訓練していたおかげでなんとか理解できた黒装束のその行動は、手に持っていた唯一の武器だと思い込んでいたダガーを僕に向かって投擲して、新しいダガーを取り出しながら僕に向かって走り出すと言うものだった。


次回、初の対人戦闘!


閲覧、ブックマーク、評価やいいねして頂けた方、誠にありがとうございます。

感想も励みになっています。誤字報告も助かります。


作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…

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