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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
英雄の誕生

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父との初訓練-3

すいませんちょっと書きたいところまで書こうと思ったら長くなりました。

 満面の笑みで大鎌を指差す葵に、父はどうしたものかとこめかみの辺りを抑える。まさか好きな武器を選べと言った3歳の息子が、大鎌を使いたいと言うとは思わないだろう。


 『〈二人とも使う武器は決まったかナー?〉』


 父が悩んでいる間に、一条先生から声がかかる。返答に困る父を置いて、葵が真っ先に声をあげてしまう。


 『きまりました!』


 『〈え〜と、どれどれ。康太クンは対仮想で支給されるタイプの大剣だネ。葵クンは…中々いい趣味だネェ!〉』


 父が口を出す暇もなく、一条先生はそれぞれの武器のデータを簡単に調整すると言ってこちらの言葉に反応しなくなってしまう。


 『…葵、それはかなり使い辛い武器だが本当にいいのか?』


 『うん!これがいいの!』


 満面の笑みで答える葵に、父はいよいよ何も言えなくなって諦めたように頷く。すると、調整を終えたのか一条先生から声がかかる。


 『〈二人とも、調整が終わったからブレスレットに異能力を込めてみてネ〉』


 『『はい』』


 短く返事をした葵と父は、自分のブレスレットに異能力を込めていく。二人とも初めてでどの程度異能力を込めればいいのかがわかっておらず、込められるだけの異能力を込めていく。


 『〈ハイ、ストップ!それ以上込めると設定したサイズに収まらなくなっちゃうからネ!〉』


 一条先生の言葉で異能力を込めるのをやめると、父のブレスレットからは澄み切った水が。葵のブレスレットからは青い炎がそれぞれ溢れ出す。ブレスレットから溢れ出したそれぞれの異能力は、二人の手元に集中して行って水色を基調とした大剣と、青を基調とした大鎌に姿を変える。


 『〈ウンウン、実体化も各設定も問題なく反映されてるネ〉』


 一条先生の言葉通り、大剣は父の体躯に合わせたサイズで、大鎌は葵のサイズに合わせた大鎌(子供用)になっていた。父は感覚を確かめるように自分の身長の三分の二ほどの大剣を片手で数回振って、最後に上段からの振り下ろしを目線ほどの高さでピタッと静止させる。


 『問題ないです。むしろ普段のものよりも扱いやすいですね』


 『それはそうだヨ、この私が二人のためだけに調整してるんだからネ!』


 そんなやりとりをする二人の陰で、葵も興味津々といった様子で自分の手に握った大鎌を眺めている。葵の大鎌は、装飾などはない無骨なもので、葵の身長とほぼ同じ長さの柄と歪曲した刃に石突がついたものだった。


 『…えいっ!』


 父の真似をしようと思ったのか、柄を両手で握りしめて大鎌を振る葵。訓練用で重さもそれほどではなかったが、大鎌に振り回されるようにバランスを崩し、刃先も何故か上を向いて柄が地面に当たって葵は反動で尻餅をつく。


 『いたた…』


 『葵、大丈夫か?』


 地面に打ちつけて痺れる腕をぷらぷらさせる葵に、父が手を差し伸べる。父は葵が大鎌を振りかぶったあたりからずっと見ていたが、いつでも手が届く範囲で黙って見守っていた。


 『ちょっといたかったけど、だいじょうぶ』


 『そうか、ならそれを上手に使えるように訓練をするか』


 葵の手を引いて立ち上がらせた父は、葵に微笑みかけながら言う。葵も先ほどの失敗にめげずに頷いてやる気をみなぎらせる。


 それからしばらくの間、父から素振りの指導を受ける。父も大鎌は扱ったことがないようで、自分も大鎌を出して感覚を確かめながら葵に指導していく。


 『初めのうちは大きく振りかぶって、振り下ろして止める。これだけに集中すること』


 『はいっ!』


 葵は武器を使うこと自体が始めてということもあり、武器を扱う下地を作るための素振りを覚えるところから始まっていった。葵はここでも運動神経の良さを発揮して、父が素振りをする動作を真似してどんどんと力の使い方を覚えていった。


 『いいぞ、もっと腰を使って振るように意識してみなさい』


 『はぁっ…はぁっ…ハイっ!』


 父の指導の元、どんどんと力の使い方を覚えていった葵だが、そもそもの筋肉量が少なく、限界が近づいてきていた。父もそろそろ限界が近いことはわかっているようだった。


 『…よし、そろそろいいだろう。今日は最後に試し切りだけして終わるか』


 そう言って葵に素振りをやめさせると、父は一条先生に向かって何かを言う。一条先生の『〈了解〜、ちょっと待ってネ〜〉』と言う言葉が聞こえて少しすると、白い円筒状の試し切り用のダミーが出現する。


 『まずはお父さんがやってみるから、真似してやってみなさい』


 父はそう言って大鎌を持ってダミーへ近づいていく。ダミーの前で大鎌を構え、振りかぶってから大きく袈裟にダミーを切り裂く。父が振り抜いた大鎌は、綺麗にダミーを両断して地面につくスレスレで静止する。


 『すごい…』


 感動する葵を置いて残心をとった父は、大鎌を霧散させて葵に向き直る。葵の肩を押してダミーの前へ立たせ、構えを取らせる。


 『葵なら間合いは…ここだな。やってみなさい』


 『うん…』


 葵はダミーの前に立ち、先ほど見た父の動きを頭の中で思い描きながら構える。思い浮かべた父の動きをなぞるようにして動き出す。


 『えいっ!』


 父の動きをなぞるようにして気合いと共に振り下ろされた大鎌は、ダミーを斜め上から切り落とすように当たり…三分の一ほど進んだあたりで動きを止める。


 『あぁ…だめだった…』


 ダミーを切れずに肩を落とす葵に、父はそっと頭を撫でる。


 『切り落とせはしなかったが、いい動きだった。これから練習していけば、きっともっと上手くなる』


 『…うんっ!』


 笑顔を見せる葵に、父も笑顔で返す。訓練が終了し、ダミーが消滅していく。葵の汗を拭きながら帰る支度をしていると、父の目の前に半透明のディスプレイが表示される。ディスプレイには受話器のマークと誰かの名前が表示されており、父はディスプレイをタッチして葵に背を向けて話しだす。


 『はい、双葉康太。…あぁ、その件か。…すぐ必要なのか?…そうか。わかった、今から行く。』


 通話を切った父は、葵に向き直り視線の高さを合わせて話し始める。


 『葵、すまない。少しやらなくてはいけないことができた。10分程体を休めながら待っていてくれないか?』


 『…うん、わかった。おとうさん、おしごとがんばってね』


 父は少し寂しそうな顔をしながらもそういった葵の頭を撫でると、小走りで訓練室を出てエレベーターのある方へ向かう。父の背中を見送った葵は、息を整えながら壁際に座り込む。訓練の疲労からか、葵の目がゆっくりと閉じた時、一条先生から声がかかる。


 『〈セラスク〜ン、ちょっといいかナ〜?〉』


 …はぁ、嫌だけど疲れた葵を起こすわけにもいかないな。


 「なんでしょう、できるだけ手短にお願いします」


 精神交換すると、先ほども感じていた葵の疲労感がすっとなくなる。やっぱり僕が出ているだけで色々と性能は上がるんだな。…それはそれとして葵の治癒力を強化しておくか。


 「〈良かったら、セラスクンが仮想敵と戦うのを見せてくれないかナ?〉」


 「…何故ですか?」


 「〈いやぁ、単純に好奇心だヨ。プレゼントのお礼とは言わないけど、ちょっとだけでいいからサ!〉」


 う〜ん…プレゼントは二つともまぁまぁ使えそうなものだったし、それを言われると弱いな。


 「…一度だけなら構いませんよ」


 「〈本当かい?!それなら早速仮想訓練を起動するネ!〉」


 一条先生がそう言うと、すぐに視界に映る景色が変わりだす。先程までの殺風景な部屋は、岩肌が剥き出しになった切り立った山の中のような環境に一変する。視線を感じて上を見上げると、そこには上空を飛びながらこちらに狙いをつけているプテラノドンのような翼竜がいた。


 「仮想敵:大型翼竜型仮想体、脅威度:A+、訓練を開始します」


 そのアナウンスが流れるのと同時に、翼竜はこちらに向かって急降下してくる。ひとまずブレスレットに僕の力を流し込んでみると、ブレスレットから光る粒子が溢れ出し、先程まで葵が使っていた大鎌が透明で不思議な光沢を放つ結晶の大鎌として出現する。


 「〈形状変化〉」


 訓練用に刃引きされたものが出てきたので、とりあえず手を加えて切れるようにして重心も調整しておく。片手で大鎌を握って振れば、しっかりと手に馴染む。


 「ギャオオオ!!!」


 そうこうしているうちに、翼竜は威嚇するように鳴き声を上げながらあと数瞬で僕に到達する場所まで迫っていた。


 「試したことはないけど…まぁイケるか」


 「ギャ…!」


 翼竜は急降下してきた勢いのまま、僕をすり抜けるようにして落下していく。大鎌を振り抜いた姿勢で、落ちていく翼竜を見守って少しすれば、切り立った山から元の殺風景な部屋に戻っていく。部屋の照明を反射してキラキラと光っている大鎌を消していると、一条先生が困惑した声で話しかけてくる。


 「〈…えっと、何が起こったのかナ?非戦闘員にもわかるように説明して欲しいんだけど〉」


 「…向こうから近づいてきてくれたので、頭を両断してやっただけですよ」


 通信越しに一条先生の絶句して息を飲み込む音が聞こえる。…まぁ頭を切った後に、翼竜の体が僕に当たる軌道だったから石突で少し上にずらしてあげたけど、後で記録を見ればわかるだろ。


 「とにかく、これで満足ですよね?」


 「〈う…うん、ありがとうセラス君〉」


 口調取れてますよ、とは言わずに葵が眠っていた姿勢に戻って精神交換する。葵に戻ると同時に襲ってくる肉体の疲労感を感じながら、結局父が戻ってくるまで眠り続けた葵を見守っていた。


完全に気分で書いてるので長くなると投稿時間も遅くなるのは許してください。


閲覧、ブックマーク、評価やいいねして頂けた方、誠にありがとうございます。

感想も励みになっています。誤字報告も助かります。


作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…

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