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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
ふたりの異能

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寝相がひたすら悪いタイプ-1

 いつもは整然と並んだ書架に収まった本達が津波のような圧倒的質量で宙を舞い、空(?)ではテレビの宇宙特集で見たようなとてつもない規模の爆発が起きては黒い点に全て吸い込まれて消えてゆき、いつもは静謐な空気を出している地平線の果てまで揺らぎなく広がっている水面は大蛇のように複雑に絡まりながら激流を産んでいる。


 「……zzz」


 そして、その中心でロッキングチェアに腰掛けて静かに寝息を立てるセラスさん。


 …なんだこの地獄絵図。


 現実で起こったら龍災よりも酷いことになっていたかもしれない光景に、僕の頭は自然と現実逃避のためにどうしてこうなったのか少し前までの記憶を辿り始める。


 感覚で言えば1分も経っていないが少し前…僕はセラスさんと夢の中で会えないかなぁなんて思いながら、食事と慣れない体でのお風呂を済ませていつもより早めにベッドに入った。そしたらこんな光景が目の前に広がっていた。


 …訳がわからなすぎて現実逃避にもならなかった。


 っと、よくわからないことは考えても無駄だ。とにかく今はセラスさんだ。せっかく直接会えたんだから今起こさないと次いつ会えるのかわからない。なんとかしてセラスさんのところまで行って…行けるかなぁ?


 目の前では相変わらず本の津波と水流の大蛇が暴れ回り、空では大爆発が続いている。


 「うおっ!…っと」


 真正面から雪崩れ込んで来た本をなんとか跳躍して回避する。うん…セラスさんに近づこうにもこうして四方八方から殺人アトラクションが飛んでくる現状じゃあ、眠っているだけのセラスさんになかなか近づくことができない。


 「ふ〜…よし!」


 大きく息を吐いて覚悟を決める。頭を戦いのためのものに切り替えて状況を改めて見定める。近づきようもない状況に見えるけど、無作為に暴れ回っているだけで切れ目がない訳じゃない。


 足に力を込めて勢いよく走り出し、セラスさんを取り囲むようにしている本の津波と水流の大蛇の側を沿うようにして進んでいく。


 走り出してから気づいたけど、今の僕はセラスさんの体じゃなくていつもの男の体に戻っている。体育の授業で発揮したような速さは異能力で足を全力で強化してようやく出せるぐらいだけど、これぐらいのアスレチックならなんとかこなせる…と思う。


 「よっ!ほっ!ごはぁっ?!」


 跳んで避けてを繰り返していたところで、急に足元から迫り上がってきた水流に体をカチあげられて宙を舞う。夢の中のはずなのにとてつもない圧迫感と痛みを感じながらなんとか後ろに視線を向けると、今にも空の爆発に巻き込まれそうなほどの場所に来ていることに気づく。


 「まっずい…!」


 いくら夢の中とはいえ、こんな特殊な死に方したらどうなるかわからない!普通なら夢で死んでも焦りながら起きるだけだけど、ここは普通じゃあないし…何より普通に起きるだけでも次いつセラスさんに会えるのかわからない以上、起きてしまうのは大変よろしくない。


 「くっ…!ふんっ!!」


 なんとか上げた手から異能力を火に変換して思い切り噴き上げる。大蛇の進行方向から直角に噴き出た炎が僕の体を押し出し、なんとか大蛇の口から抜け出して自由落下を始める。


 「これなら…訓練済みだ!」


 前にも落下しながら炎で姿勢を制御しようとして木に突っ込んだことがあったけど、あの経験から炎で空を飛ぶ方法は訓練してある!


 地面の方向を見れば本の津波の隙間からセラスさんのいる少し開けた空間が見えた。


 「見えるってことは…行けるってことだ!」


 セラスさんに向かって直線になるように手を後ろに向けて、全力で炎を噴射する。久しぶりの全力で夢の中でも体に負荷がかかっているのを感じながら、セラスさんに向かって一直線で進んでいく。


 「…っ!」


 視線の先ではさっきまで見ていた濁流の隙間が、今にも埋まりそうになっている。


 「くっ!…どうせ夢だ!どうにでもなれ!!」


 身体強化に回していた異能力も全て炎に変えて推進力を生み出し、さらに速度を上げる。どんどんと近づいてくるセラスさんと本で埋まりそうな視界に、体がすくみそうになるのを抑えて加速を緩めずに突っ込んでいく。


 「…っ!!!」


 ふと思いついて、少しだけ手に角度をつけて体を回転させる。圧倒的な速度で炎を撒き散らしながら錐揉み回転し始めて、側から見たら隕石のようになっている状態で本の隙間に突っ込んでいく。


 「本が傷付いたらごめんなさいっ!!!」


 一瞬で距離を詰めて、回転する視界ながら目の前が何かで埋まるのを理解した瞬間…とてつもない衝撃が響いた。


突然始まる主人公による全力アクロバティック。

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