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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
境界に立つ

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帰宅

本当に間隔空きがちになってしまってすいません!

ついでに今回は短めですいません!

 班のみんなとも別れて、僕も家への帰り道を歩いていた。今日は双葉家の用事もないし、片桐さんの送迎はない。6年間登下校してきた道を歩きながら、卒業までもうあまり時間はないのかと少し寂しくなる。


 みんなと一緒に過ごせる時間ももうすぐ終わりなのかぁ…。


 「にゃ」


 「どうしたのゆず?」


 僕の肩に静かに乗っていたゆずが短く鳴き声をあげた。何かあったのかと思ったけど、僕が声をかけてもどこかを見つめて黙り込んでいた。


 何か気になるものでも見つけたのかな…?


 そんなことを考えているところで、ふと思い至った。やばい、お父さんとお母さんにゆずのこと言ってない…!うちには蒼がいるんだからダメって言われるかもしれないなぁ…ちゃんと早めに言っておくんだった。


 『あぁ、リニアで寝てる時に一応伝えておいたよ。トークアプリ確認しておいて』


 「え、本当ですか!?」


 『うん、とりあえず声出さないでね』


 あ、すいません。つい声出しちゃったけどセラスさんには思うだけで伝わるんだった。


 『とりあえずゆずを連れて帰ることになった事情は軽く伝えておいたから、詳しい説明は自分でしてね』


 セラスさんの説明を聞きながらトークアプリを確認すれば、神社で猫と出会ったこと。そして神様の関係者の人に一緒に連れていってほしいと言われたことを両親に簡単に説明してあった。


 詳しいことは帰ってから話す、という言葉で締めくくられたトーク履歴を見れば、両親はそこまで否定的な反応はしていないので少し安心できた。


 …本当に助かりました!ありがとうございます!


 『いいえ〜』


 セラスさんはなんでもないように言ってくれるけど、僕が困っているときはなんだかんだで助けてくれる。夜に話した時には僕に干渉するつもりはなかったって言っていたけど、今までもこうして僕にバレないように助けてくれたりしたんだろうな。


 トークアプリに来ていたメッセージを確認していると、由奈さんや片桐さん、師匠達からもメッセージが来ていた。どれも僕が無事に帰れたのかという様なメッセージで、師匠なんかは『もちろん土産はあるんだろうな?』なんてふざけているけど眺めているだけで不思議と心が温かくなる。


 来ていたメッセージに一件一件返信しながら歩いていると、もう家が目の前にあった。


 『バウっ!』


 『あっ蒼!どうしたの?』


 『ふふ、凛月も一緒にいきましょうか』


 扉の向こうからそんな声が聞こえてくる。家族(みんな)に会うのも随分久しぶりなように感じる。


 僕がいない間、凛月は大丈夫だっただろうか?蒼はゆずちゃんとうまくやっていけるだろうか?お父さんは仕事で無茶していないだろうか?お母さんは家事に育児で疲れていないだろうか?


 そんな修学旅行中は抑えていた考えが頭の中に溢れ出して、自然と早足になってドアに手をかける。


 自動認証で鍵が開いた音が聞こえた瞬間に扉を開ける。


 真っ先に目に入ってくるのは、凛月にのしかかられて疲れたような表情の蒼と嬉しそうな凛月。そしていつもの優しい表情で迎えてくれるお母さん。


 話したいことは山ほどある。大変だったこと、新しい友達のこと、新しい家族のこと、新しく知れたこと。そして、僕を迎えてくれた家族(みんな)に何より先に言わなくちゃいけないこと。


 僕に飛びついてこようとする凛月を受け止めるために荷物を手放しながら、湧き上がってくる温かい感情のまま口を開く。


 「ただいま!」


 「「「おかえり(わうっ)!」」」


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