最後のおやくそく
仕事あるから寝ようと思ってたのに結局徹夜で書いてしまった。まぁ若干ストックできたしええわ。
『葵、起きて』
心地よい小さな振動に揺られながら眠っていた僕の意識は、聞き慣れたどこか安心するその声で一気に覚醒する。
ありがとうございます、セラスさん。
『いーえ、僕も久々に1人?でゆっくりできてよかったよ』
なんだか気の抜ける様な声で返事をするセラスさんだったけど、久々にゆっくりできたってどういう事だろう?今まで僕の中にいた時はゆっくり出来なかったのかな?
そんなことを考えていると、担任の先生の声が僕らのいる車両の先頭の方から聞こえてくる。
「みんな〜!もうすぐ駅に着くから、眠っている人は起こしてあげて〜!」
「「「はーい…」」」
僕らの班以外のみんなもなんだかんだ疲れていたみたいで、周りの席から聞こえる返事はまちまちだ。班のみんなを見れば、ケンと椿さん以外は眠そうに目をこすりながら起き始めていた。
僕の正面に座っていた流奈ちゃんは、まだぼーっとした様子で僕の方を見ていた。僕の顔に何か付いているのかとも思ったけど、起きてすぐの時に何も考えないで目の前の人と目が合ってて気まずくなるのってあるあるだよなぁ…。
「流奈ちゃんは椿さんを起こしてもらってもいいかな?」
「…え、あぁうん。わかった」
流奈ちゃんは僕の声を聞いてようやくはっきりと目が覚めたみたいで、隣で涎を垂らしそうになっている椿さんを揺さぶり始める。
「ケン、起きて?」
僕も隣で眠っていたケンに声をかけながら揺さぶる。ケンも椿さんもかなり眠そうにしながら目を覚ましたあたりでリニアが静かに速度を緩め始めた。
「それじゃあ荷物をまとめて降りる準備しようか」
みんなが食べていたお菓子のゴミを片付けたりしている中で僕も自分の荷物を片付けようと自分の周りを確認すると、僕が食べたお菓子のゴミや荷物は綺麗にまとめられていた。
「あれ…?僕片付けてたっけ?」
『あぁ、読んでた本片付けるついでにやっといたよ』
あ、そうなんですね。ありがとうございます。それなら僕は荷物を持つだけで出れるようになってるんだ。じゃあみんなの荷物も下ろしておくか。
「えっと…これは零君ので、こっちは…」
「あの、葵くん…」
僕がみんなの荷物を下ろしている所に、流奈ちゃんが話しかけてくる。起きた時から僕の方を見ていたけど、ぼーっとしてた訳じゃなくて何か言いたかったのかな?
「どうしたの流奈ちゃん?あ、これ流奈ちゃんのだったよね」
「あ、ありがとう…ごめん、やっぱりなんでもない」
「?」
流奈ちゃんは僕から荷物を受けると、逃げるように自分の席に戻っていってしまった。
…?なんだったんだろう?
『…本人が言いたくないんだったら、あんまり気にしない方がいいんじゃない?』
流奈ちゃんを視線で追ってしまっていた僕を咎めるようにセラスさんの声が頭に響く。…そうですよね、流奈ちゃんなら本当に必要な事ならちゃんと言ってくれるだろうしあまり気にしすぎるのも悪いですよね。
そんなこんなで気になることはあったけど、あっという間にリニアは僕らの住む街に到着した。数日前に学校を出発した時とはまた違った、どこかふわふわした感覚で校門を通って待っていた先生や保護者の人に迎えられる。
「「「おかえりなさ〜い」」」
出発した時とは違って何故か猫を連れている僕を見て不思議そうな顔をしている人たちもいたけど、ひとまず暖かく迎えられた。
この修学旅行で僕らの中で何か大きなモノが変わったような気もするけれど、こうしていつも通っている学校で、いつも会っていた人たちを見ると、変わっていない部分がちゃんと残っているっていう感覚が湧いてくる。
『…』
…?今なんだかセラスさんから感情が伝わってきた気がする。何かありました?
『別に…ちょっと眩しいなぁって』
…確かにいい天気ですけど。
『気にしないでいいよ、そろそろ先生の話も終わるんじゃない?』
セラスさんの言葉で現実に意識を戻すと、丁度校長先生が話の締めにかかっているところだった。今日の予定はこの校長先生の話で最後だったはずだから、この後は解散になるはずだ。
「それでは…家に帰るまでが修学旅行ですから、全員無事に帰れるように気をつけてくださいね」
校長先生の話は、これまでにも行事の際に何度か聞いたことのある文言で締められて解散になった。
解散後はそれぞれ友人と雑談したり迎えに来ていた家族と合流したり、それぞれ帰路についていた。
…さ、僕も帰ろうかな。この時間だと凛月はもう家に居るかな?
熾天使さん『…若いなぁ』
行事の最後の校長の挨拶と言えば、ですよね。




