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熾天使さんは傍観者  作者: 位名月
境界に立つ

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修学旅行2日目:龍災の爪痕

前話の後書にもありましたが、この作品の世界における災害の描写があります。

気分を害される方もいるかもしれませんので、念のため注意して読んでいただけると助かります。

 バスに揺られて次の目的地、龍災の展示をしている場所に向かいながら僕らの間では土御門様の話で持ちきりだった。


 「神様の代行ってたまにニュースで見るぐらいだったけど、まさに『聖人』って感じの人だったなぁ!」


 「そうだね、うまく言えないけど…不思議な雰囲気のある人だったね」


 「そ、それにしても…あんな人でも普通に街を歩いてるんだね」


 「確かに、昨日のお土産屋さんで会った時は普通に人の良いおじさんって感じだったよね」


 昨日も会っていた僕と零君は昨日の話でも盛り上がり、他の班員たちにもその話をしたりしてあっという間に時間は過ぎていった。そんな中、前の方に座っていた先生が立ち上がって声を張り上げる。


 「みんな〜、もうすぐ展示場に着くからもう一度説明しておきま〜す!」


 それから先生が龍災についての説明を始める。修学旅行の前にも何度か説明は受けていたけど、土御門様の話で少し浮ついた空気になっていたので落ち着かせる意図もあったんだろう。


 先生の話は、今から行く場所では昔あった災害の記録を展示してある場所で、その災害で家族を失った人たちもいるため展示場内でふざけて良いような場所ではないということ。


 「皆さんも単に過去に起こった事というだけではなく、これから先に起こるかもしれないという考えで見学してください!」


 先生の話は、以前に龍災の追悼式典に護衛として出た僕には理解がしやすかった。あの式典はあくまで過去の災害による被害者へ追悼の意思を示すものだけど、龍災を実際に経験した人たちは皆「次の龍災」へ意識を向けていた。


 「それじゃあ到着したしバスから降りるよ〜!」


 先生の話を生徒たちはそれぞれ自分の胸の内で噛み砕き、神妙な面持ちでバスから降りていった。


 バスから降りて展示場の外観を見て気づいたことは、神様の歴史博物館と龍災の展示会場の外観…そして龍災の慰霊碑の側にあった展示場は似通った外観をしているということ。建てた時期が同じなのかは調べてみないと分からないけど、何かしら同じコンセプトで建てられているのかもしれない。


 「それじゃあ行きますよ〜」


 それからある程度まとまってはいるものの、ある程度自由に展示場内を回って良いことになった。


 展示場の中は当時の様子を再現したジオラマや、明らかに龍災が起きてからの経過年数よりも風化している物が展示されていた。


 「なぁアオ?龍災って、確か40年ぐらい前のことだよな?」


 「そうだね」


 「これ、明らかに40年以上前の物じゃねぇ?」


 「ちゃんと当時のものだよ。説明にも書いてあるけど、龍災はいろんな自然現象から生まれた龍の仮想体が暴れ回ったんだ」


 そのうちの一つ、風化を司る龍…おじいちゃんの話だと時間を操る龍だったらしいけど、その龍が建物や災害の被害をより深刻なものにしていたらしい。


 「…なるほどな。昔の人は実際そんなやつどうやって倒したんだろうな」


 「風化の龍は確か範囲外からひたすら遠距離攻撃したらしいけど…風化の影響で攻撃の威力も減衰して大変だったみたいだね」


 「こう言っちゃなんだけど、俺らの時代じゃなくて良かったな」


 「…まぁわかるけど、これからも起こる可能性はゼロじゃないんだよ?」


 「…」


 凄惨な当時の様子や残骸から感じ取れる悲惨さに、皆自然と口数も減っていた。展示は道に沿って進んでいく形式で、ある程度進んだところで注意書きのある部屋があった。


 部屋の前にある注意書きは、「当時の映像が流れます。ショックを受けるような内容がありますので、ご覧になる際は注意してください」というものだった。この注意書きを軽々しい気持ちで見れる人は、今までの道筋の展示物を見てきた人には一人もいなかった。


 「僕は見ていこうと思うけど、みんなは?」


 「俺も行くわ」「私も見る」「私も行くわ」


 一緒に見に行くと答えたのは、ケンと流奈ちゃんと早乙女さん。みんな真剣に覚悟を決めたような表情で僕の質問に答えていた。


 「…ボクはやめとくよ」「あたしもやめとく…」


 零君と椿さんはこれまでの展示を見た時点で若干顔色が悪くなるほどにショックを受けていたようで、映像を見るのはリタイアしていた。零君はなんとなくそうだろうと思っていたけど、いつも明朗快活な椿さんもかなりショックを受けていたのは少し意外だった。


 「それじゃあ、後で」


 みんな多くは話さずに別れる。零君と椿さんを見送って僕らは映像展示の部屋に入っていく。映像の展示は全員で同じスクリーンを眺めるんじゃなく、部屋に入り椅子に座った段階で個別にナノマシンにアクセスされて映像が再生されるらしい。


 既に入っていた生徒たちが真剣な表情で虚空に見入っているのを尻目に、僕らも椅子に座る。


 表示された画面には再度注意書きがあり、大体10分で再生が終わると書いてあった。注意書きが消えると、当時の映像が流れ出した。


 「「「「……」」」」


 再生されていった当時の映像では、龍やその支配下にあるらしい仮想体との戦闘の様子や崩れゆく建物の映像がシンプルな字幕とともに流れていった。中には僕らの班が昨日見た建物が大きな結界で覆われている映像などもあり、神様が京都をどうやって守ったのかもある程度わかった。


 刺激の強い映像だったけど、神様の力や当時の対仮想の奮闘で龍災を終結に導いた様子で幕を閉じていった。


 『この災害を過去のものだと思ってはいけない。龍災の原因は現代でもわかっていない。どうか、この先も起こりうるものだと理解しておいてほしい』


 暗転した画面にその言葉が浮かび上がったのを最後に、映像は消えた。10分とは思えないほど濃密な映像に消化しきれない余韻を胸に抱えながら、班のみんなも見終わっているのを目線を合わせて確認して黙って部屋を出る。


 部屋を出た後も、僕らは黙ったままで様々な展示を見ていった。


大丈夫でしたでしょうか?

この話は現実の災害の暗喩などではなく、あくまで世界観の深掘りのための描写です。

あくまでフィクションだということにご理解頂けると幸いです。


閲覧、ブックマーク、評価やいいねして頂けた方、誠にありがとうございます。

感想も励みになっています。誤字報告も助かります。


作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…

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