修学旅行2日目:付き添い土御門様
神様の歴史博物館の中を昨日の自由行動の班で回る。神様がこれまで進んできた道筋の中で残ってきた遺物とでも言えるような物品が並ぶ中を歩く…土御門様と一緒に。
「ふふふ…この美術館も見慣れたものですが、一緒に回る方がいるだけで見え方は変わるものですねぇ」
「えっと…土御門様?」
「なんですか?それと様なんて入りませんよ?」
何から聞いたものかととりあえず名前を呼べば、お土産屋さんや道の駅で会った時と変わらない人の良い笑みで返事をしてくれる土御門様。その様子は本当にただ人の良い老人といった様子で、神の代行を勤めているような威厳は感じられなかった。
「その…昨日のお土産屋さんと今日の道の駅で会った方で間違い無いですよね?」
「えぇもちろん。先程はお茶をありがとうございました」
「そんな…!お礼を言うのはこちらの方です!昨日からお世話になりっぱなしで」
「ふふ、それはもう良いじゃないですか。せっかくの修学旅行です、つまらないかもしれませんがこの博物館を楽しみましょう」
「は、はい…」
本人から間違いなく昨日から何度か会っていた老紳士が土御門様だったことの確認が取れたあたりで、班員のみんなが僕にコソコソと話しかけてくる。
「(葵君、土御門様と知り合いだったの?)」
「(いや、昨日から少し会ったことがあるぐらいだったんだけど…土御門様だとは思ってなかったよ)」
「(そんな偶然あるんだね…)」
コソコソと話していたけど土御門様がすぐ近くにいるし、短く切り上げて博物館の見学に戻る。
他の生徒達は自由行動で普通に観光スポットなどを回っていた中、僕らの班は神様関係の建物に絞っていた珍しい班だった。だから博物館で展示されているものを見て、昨日知った知識などと紐付けてみることができていた。
「…あ、土御門様ちょっと良いですか?」
「はいなんでしょう?それとさっきも言いましたが様はいらないですよ?」
「そう言うわけにも行かないです。それでですね…」
調べ物や昨日見たものだけではわからない部分は土御門様に聞くことで、なんだかんだ楽しく博物館を回れていた。土御門様はどんなことを聞いてもスラスラと分かりやすく教えてくれて、他の班のところも回りながら完全に学習の助けになるようにしていた。
「…ありがとうございます!それと、土御門様についても聞いても大丈夫ですか?」
「もちろん…と言いたいところですが、今は博物館に集中しましょう。後で話す機会はありますから、そこでお聞きしますよ」
「そうなんですか?」
「ええ、実は昼食にお邪魔することになっていまして。その際はあなたの…失礼、お名前を伺っても?」
ここまで何度も会話していて、お互いフルネームを知らないことに今更気づく。お互いなんだかおかしくなりながら自己紹介をする。
「そういえば僕も自己紹介していませんでしたね。僕は双葉葵と言います」
「葵さんですね、私は土御門です。お役目の都合で名前はないんですよ」
その説明を受けて、ネットで調べていた際に名前が出てこなかった理由にようやく合点がいく。出てこないんじゃなくて、そもそもなかったんだ。そんなことを考えていると、土御門様が僕の耳元に顔を寄せてくる。
「…(もしかして、葵さんは双葉家の?)」
「(はい、そうなんです。まだまだ勉強中の身ですが、いずれは家を継ぐことになっています)」
「(あまり他の生徒さんの前では言わない方が良いですかね?)」
「…(そうですね、まだみんなには言っていないので)」
僕の言葉を聞いて、土御門様は変わらない優しい笑顔で耳元から顔を離す。ただ優しい老紳士に見えていた土御門様だけど、やっぱり神様の代行なんだとわかる。この少ない情報で僕が双葉家の人間だってよくわかるなぁ。
「では葵さん、また昼食の際にお話しましょう。私は他の生徒さん達のところを回ってきます」
「はい…土御門様、ありがとうございます」
そうして土御門様は去っていった。幼い頃から神様の代行として数えきれない苦労をしてきた人とは思えない優しい笑顔を…捉えようによってはチグハグな印象すら受ける優しい表情で他の生徒達のところに向かって行った。
葵「あの、この下駄ってなんですか?」
土「あぁ…あの方は結構ズボラなところがあるというか、おそらく昔仮想体と対峙した時に何かの拍子で脱げてそのままにしていたのでしょう」
葵「えぇ…?神様ってなんというか…」
土「あの方に人間的な常識を求めるのは間違いだとは思うのですが…。履き物ぐらいしっかりしてくださいと何度か申し上げて…」
ゆ「にゃ!」
葵「あっ?!こらゆずダメでしょ!」
ゆ「にゃ…」
熾「…ゆずちゃんさぁ」
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作者プロフィールにあるTwitterから次話投稿したタイミングでツイートしているので気が向いたらどうぞ…




