第13章 「剣槍合体・ガンブレードランサー!」
ガトリング砲は破壊され、豪腕ロケットは煙と消えた。
これで戦闘ロボットは丸腰も同然。
大技を仕掛ける好機は、まさに今この瞬間ですわ。
「今だよ、フレイアちゃん!合体攻撃だ!」
葵さんの叫び声に促され、軍用スマートウォッチの表示に目をやれば、私と葵さんのシンクロ率は高い数値を弾き出しておりましたの。
合体兵装のガンブレードランサーを駆使するには、充分過ぎる数値ですわ。
「お任せ下さいませ、葵さん!破邪の二刃よ…」
「今こそ1つになれ!」
阿吽の呼吸で個人兵装に設けられたスイッチを押す、私と葵さん。
すると、私のエネルギーランサーの柄に設けれた装飾がスライドし、葵さんのガンブレードとの合体機構が露わになりましたの。
「行くよ、フレイアちゃん!」
そうして葵さんは、スラッシュモードに変形させたガンブレードの峰を、叩きつけるようにしてあてがったのですわ。
「うおおおっ!剣槍合身!」
「心得ましたわ!剣槍合身!」
小気味の良い連結音をガシャンガシャンと響かせて、私のエネルギーランサーと葵さんのガンブレードは1振りの巨大な合体兵装に姿を変えていきましたの。
「御覧なさい!これぞ私達の合体兵装!」
「ガンブレードランサーだ!」
そうして私と葵さんはエネルギーランサー部分の柄を左右から支え合い、大鉈を思わせる合体兵装の刃を高々と振り上げたのですわ。
「推して参りますわ、不埒者!葵さん、準備は宜しくって?」
「勿論だよ、フレイアちゃん!行くよっ!いっせ~の~で!」
葵さんの掛け声に従い、神経を一点に集中。
このガンブレードランサーの強大な破壊力を制御するには、私と葵さんの精神がシンクロするか否かに懸かっておりますからね。
「ウオオオッ!」
裂帛の気合いや絶叫は勿論の事、その息遣いに至るまでピッタリと一致した私と葵さん。
このシンクロ具合でしたら、つつがなく制御出来そうですわ。
「神雷!断罪剣!」
無我の境地で振り下ろしたガンブレードランサーの刃が、憎き怪ロボットの頭部を的確に捉えましたの。
「チェストォォォッ!!」
そしてそのまま何の抵抗も無く、土偶みたいな頭部から下半身まで、一気に切り下げましたの。
『損傷、レッドゾーン突入。任務継続は困…難…』
真っ二つに切り裂かれた戦闘ロボットが上げる、不気味に歪んだ電子音声の断末魔。
それはみるみるうちにノイズと判別がつかなくなり、最後は怪ロボットを爆心地とする爆発音にかき消されてしまったのですわ。
爆発で生じた熱風にブロンドの髪を嬲られながら、私は敵の末路を目視で確認致しましたの。
原型も留める事なく粉々に砕けた怪ロボットの残骸が、産業振興センターの敷地内に点々と散らばっておりますわ。
歪んでへしゃげた残骸は、本来は赤銅色だったはずの外装を黒焦げに焼け爛れさせ、未だに白煙を燻ぶらせている有り様。
付属研究所の方々には申し訳ありませんが、調査目的の復元は難航しそうですわね。
「やりましたわね、葵さん!」
「うん!オペレータールームの通信によると、もう1体の戦闘ロボットは英里奈ちゃんとマリナちゃんが連携してやっつけたみたいだよ。」
左手で軍用スマホを掲げた葵さんが、朗らかな笑顔で応じて下さいますの。
そして利き手には、先だって分離させたばかりのガンブレードが。
高出力なガンブレードランサーは、あくまでトドメ用の切り札。
普段携行する際には、小回りが効いて破壊力も手頃な分離形態を選択しているのですわ。
「そうでしたか、葵さん。確かにあの御2人なら、ムザムザと遅れを取りはしませんわね。」
同じく分離させたエネルギーランサーを肩掛けした私は、先んじて戦闘ロボットを撃破しおおせた2人の特命遊撃士に思いを巡らせておりましたの。
レーザーランスを用いた槍術に長けており、戦国武将の血を引く公爵家のお生まれでありながら、内気で気弱な生駒英里奈少佐。
そして大型拳銃を持たせれば百発百中で、鋭い美貌とクールな立ち振る舞いからファンの多い和歌浦マリナ少佐。
まるで真逆の性格な御2人ですが、親密な交遊関係は研修生の頃まで遡れるのだとか。
先日の大浜大劇場で展開された「吸血チュパカブラ駆除作戦」にしても、見事な連携で事件を早期解決に導けたのですから、その深い絆と厚い友情は、私と葵さんのそれに勝るとも劣りませんわ。
「残りの1体とは御子柴1B三剣聖の子達が戦ってるみたいだから、加勢に行かないとね!」
「勿論ですわ、葵さん!義を見てせざるは勇無きなり!急ぎますわよ、葵さん!」
そうして私と葵さんは互いの顔を見合わせると、軍用スマホのGPSアプリが指し示すエリアを目指して駆け出したのですわ。
枚方京花少佐。
淡路かおる少佐。
そして手苅丘美鷺准佐。
暫し御待ちになって下さいませ。
私と葵さんが助勢に馳せ参ずれば、貴官達は鬼に金棒。
正に、百戦危うべからずですわ!




