50モフ目
お待たせしました。
更新再開です。
ゴーハンダーギン。モフナーがログアウトしたあと、セカディアまできましたよ、っと。
海水浴に行っていないプレイヤーも結構いるようで、パツダもセカディアもそれなりに人はいた。
けれど、アイテムボックスを持っているのは見当たらない。
おかしい。他のプレイヤーが作ることに成功したらしいのに。
「あ、毛皮丸くん」
おや、この声は。
「白衣君。久しぶ、り…?」
なん…だと。
「白衣君が白衣じゃない、だと?」
血染めの白衣 品質:良
数多の生物の血を吸い込んできた白衣。呪いにより鮮血の色を保つ。
という設定。
やっぱり設定かよ!
「一応白衣、だよ?」
「【鑑定】したよ、このブラッディドクター!」
「ちょ、毛皮丸くんもその二つ名で呼ぶのやめてよ」
「二つ名?」
「え?」
「え?」
「ブラッディドクターって知ってたんじゃないの?」
「いや、ノリと勢いで」
「なん……だと」
なるほど。
「ふーん、ほーー、へー」
「なんだよぅ」
「いや、なんでも」
「絶対何かある言い方だったじゃないか」
「そんなことより」
「そんなこと!?」
「アイテムボックスができたって聞いたんだけど、あんまり出回っているように見えなくてさ」
「ああ、そのこと」
簡単さ、と一言おいて白衣君は続ける。
「作ったのはフリーのプレイヤーだったんだけど、速攻で大手ギルドに囲いこまれたんだ」
「なるほどねぇ」
ふむ。売り時だな。
「アイテムボックス欲しいの?」
「むしろ売りたい。スキルのレベル上げがてら大量に作ってさ。持て余してる」
「露天やるの?」
「アイテムボックスばっか作って売る生活は勘弁だから、どっか信用できるとこに委託できたらいいかな」
「NPCの店に頼んだら?」
「NPCに?」
「うん。NPCの店が委託販売受け付けてるんだよ。一部限定だけど。プレイヤーなら対面して預けたりして顔を合わせなきゃいけないけど、NPCならシステム的に情報の保護ができるし、詐欺もできないからね」
「なるほど」
「その分知る人ぞ知るって感じになっちゃうけどね」
「その辺は仕方ないだろ」
「このあと約束があるから場所を教えるだけになっちゃうけど」
「十分。ありがとな」
「ここ、だよな」
白衣君に教えてもらった店は、いかにも胡散臭そうな露天商が並ぶ通りを、上上下下左左右右と入り組んだ階段の奥の奥にあった。
年季の入りすぎた小汚い暖簾。
妙にかび臭い空気。
湿った地面。
胡散臭い。
意を決して入ってみると、アクリルっぽいケースが壁面や中央に人一人分通れるすき間を残して幾列も並んでいる。
奥のカウンターには牛乳瓶の底のようなメガネをかけたデブがいるが、あれがここの店主だろうか。
胡散臭い。
近づくとちらりと視線をこっちに向けるが、すぐに手元に落とす。
「買いたいものがあるなら、直接ボックスに向かいな」
「いや、レンタル希望だ」
「ならこれを埋めな」
そう言うと僕の目の前にウィンドウが開く。
販売アイテムと個数はウィンドウに直接アイテムを押し込んで対応して、値段設定と、レンタル期間と……………。
「ボックスの指定は?」
「不可だ」
ならこれでOK、と。
「承りました。レンタル期間終了後売れ残ったアイテムは自動でオーナーのもとに転送されます。戦闘中などでも考慮されませんのでご注意ください。またのご利用、お待ちしております」
いきなり敬語になりやがった。
胡散臭い。
隅の方に亀甲縛りの縄水着変態がいたことも胡散臭い。




