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43モフ目

 ≪手刀斬岩 浸透波 滅多殴打 頭割り 石砕き 二段突き を取得しました≫

 長かった。

 ようやく取得できた。

 一度に複数取得しようとすると、建前の修業が長くなる傾向にあるそうな。

 これからはこまめに来よう。

 ちなみにこのフェルザード世界での技は、武器が固定されていない。例えば浸透波を僕は【徒手空拳】で取得したけど、これは【槌】でも使える。二種類だけじゃなく、一つの技を三種類、四種類の武器で使うことができるものもある。

 そんなわけで、修行を終えた僕、毛皮丸が、大浴場からお送りいたします。

 いやー、まさか一日がかりになると思わなかったよ。

 ゲームだから汗かかないけど、さっぱりしたかったからさんしょうちゃん宅の風呂場を借りている。

 男子高校生(毛皮)の全裸の需要なんてどこにあるのだろうか。

 じゅるりとよだれをすする幻聴が聞こえた気がしたけど、この幻聴はモフナーだな。

 濡れ衣?

 ないない。

 さて、さっぱりしたから上がりますか。

 引き戸をガラッと開けると。

「さんしょうさん、何してるんスか」

 さんしょうちゃんが正座待機してた。

 横に置いてある湿ったタオルはよだれをふいたやつですか。そうですか。

 床にできてる水たまりはなんでしょうかね。

 あ、すいません。

 近づかないでもらえますか?

 淡雪、ちょっと抑えといて。


 急いで装備を整えたところで、さんしょうさんが淡雪を振り切ってとびかかってきたので、とりあえず踏みつけて動けないようにした後、メニューを開いてタップする。

『はーいオラトリオでーっす。毛皮丸さん、どうしましたかー?』

 軽っ!

「NPCからセクハラされるんですがどうしたらいいですか?」

『えっ? 少々お待ちください』

 待つ時間が長い。

 さんしょうさんが、なんとかこっちに飛びかかろうとうごめいている。

 もうちょっと力入れておこう。

 保留音がオープニングテーマか。いいよなぁ。治ったらCD買おう。

 お、動かなくなった。あきらめたか?

『お待たせしました。毛皮丸さん?』

「はいはい」

『対象のNPCにこちらでバインド処理を行いましたので、そのまま立ち去ってもらって大丈夫です。この度はご迷惑をおかけしました。』

「わかりました」

 そろっと足を外してみれば、さんしょうさんはぴくぴくうごめくだけで、起き上がってこない。

 うん。大丈夫そうだ。

「じゃ、行こうか、淡雪」

「きゅい」

 海水浴場で適当な試し切りの相手を見つけるか。



「手刀斬岩!」

 手刀を作った僕の右手がエフェクト光に包まれ、迫りくるゴーレムの左手首から先を切りとばす。


砂岩ゴーレム

アクティブ

長い時間をかけて降り積もった砂が岩となり、動き出した。魔力により、普通の砂岩より丈夫。


「うん。使えるな」

 僕は今、トトをパートナーにして海水浴イベントの一つ、障害物スイカ割レースに参加している。

「浸透波!」

 障害物である二体目の砂岩ゴーレムが、僕が触れたところから爆散する。

「使い勝手はいいな」

 一回の競技に使える装備の都合上、【徒手空拳】以外の技は試せていないけど。

「ぷう」

 さっき僕が切り落とした手首を、トトが蹴り上げ次の砂岩ゴーレムの頭にシュート。そのまま双方が砕け散る。

 スイカまで残り百メートル。

 砂岩ゴーレムは十体。

「お。まとめてくるか」

 全部のゴーレムがこっちに向けて動き出した。

 先頭のゴーレムがつかみかかってくるのを、腕の下を潜り抜けてかわし、浸透波。

「まず一体」

 続いて突進してくるゴーレムはトトが背中から駆け上がり、頭を蹴り砕く。

 ……きっとウサギという種はどこでも武闘派になる運命なんだ。

「二体」

 砕ける砂岩を振り払いつつ、続くゴーレムの腹を連続でなでるように浸透波を発動。

「三体、四体」

 崩れるゴーレムから飛びついてきたトトをキャッチしてそのまま次のゴーレムに投げつけ。

「五体」

「ぷうぅぅぅ!」

 どってぱらを蹴り抜かれたゴーレムを横目に、手を伸ばしてきた六体目を手刀斬岩で一閃。

 肘から切り飛ばしたら、落ちてくる腕をキャッチ。

 【槌】扱いできそうだな。

「石砕き」

 相手の体と、僕が持った腕の両方が砕け散る。

「六体」

 七体目はトトがつま先から順番にけり砕いているから放っておいて。

 八体目を僕のこの手が光るよーうなるよーとかやっていたら、九体目と十体目が動きを止めた。轟き叫んじゃう?

「なんだ?」

「ぷう」

 ぐへっ。

 トトさんや。頭の上に勢いをつけて飛び乗るのやめませんか?

 首があらぬ方向に曲がるし、トトさん重いs痛い痛い痛い! 首はそっちに曲がりません!

 ほら! 敵を気にしないと!

 消防車とクレーン車とか、ミキサー車とダンプカーみたいに左右対称合体してるから!

「ってか、でけぇ!」

 モーフィング変形なんか目じゃないってか、身長十倍じゃないですか?


勇者ゴーレム ダイサガン

イベントモンスター

倒された仲間の敵をとるために弾丸スイカの力を借りてパワーアップ。進め! 戦え! ダイサガン!


「えー」

 いつの間にか胸の中央に巨大なスイカが埋まってやがる。

 スイカはライオンじゃありませんよ?

 しかしまあ、どうしよう、これ。

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