27モフ目
お読みいただきありがとうございます
おはようございます。もう昼だけど。
淡雪の尻尾を枕にし、ドリーの羊毛を抱き枕にし、トトの尻尾をもふりまくる。
絶賛ログハウスに引きこもり中です。
経過観察から現実時間で一週間。集中力が切れたー。やる気がおこらねぇー。
ここまで駆け抜けて来た分、水差された感じで気力がどっかいったー。一人モフモフまみれで無期限充電だー。
世の中夏だけど、うちの高度が高度だから、熱さはたいして気にならない。
補償でもらった儀式魔法核で水源用のアイテムを作った後は、ずっとこんな感じでただれた生活を送っている。
その間の食事はモフナーの手料理を消費している。それもそろそろなくなりそうだけどな。
「相変わらずだれてますねぇ」
「ん、オラトリオさんか」
急にあらわれて声をかけてくる人物。浮遊岩に許可なく入ってこれるなんて運営しかいない。一日一度、こうして僕の様子を覗きにくる。
「僕の様子見なんてモニター越しのチェックでいいんじゃないの?」
「そう邪険にしなくても。人との会話は大事ですよ?」
否定はしないけど、そんな気分にはなれないなぁ。
「まあ、今日はお知らせを持ってきたんですけど」
「お知らせ?」
何かあるというなら姿勢を正すとしますか。
「よっこらせと。で、どんなお知らせ?」
「おっさん臭いですね。まあ、いいですけど。一つはPvPデュエルシステム実装のお知らせ。もう一つ、正式発表はまだ先になりますが、夏の期間限定イベントといたしまして、海水浴場が実装されます。期間は現実時間で一週間後の正式発表の後から八月末日まで。不定期でミニイベントも開かれます」
「海?」
「はい」
「ビーチ?」
「はい」
「セーフティエリア?」
「だけではないですけど、はい」
「水着だな!?」
「え、えぇ、まぁ、そうですねー」
「水着の入手方法は?」
「買うこともできますが、好みのものは【裁縫】で作られた方が速いかと。【付加】もできますし」
「ふはははは。よし!まずは材料調達だな!この際糸からいくか!」
服の素材を糸から探すのは、神様にまでなった工房主さんからの伝統!
別にカレーパンは用意しないけどな。
しかし、糸。糸。ふっとドリーと視線がぶつかる。
「紡がれてみる?」
びくっと体を震わせて汗をだらだら流し始めるドリー。ゲームならではの表現だな。
「なにか顔色が悪いようですが…」
「あいつはドMだから喜んでるだけ。っていうか、水着なんだから毛糸は不向きだろ」
「ああ、そうですね」
「でも、下に行ったら熱いから刈るだけでもしておくか」
「そのあたりはお好きにどうぞ。では、私はこれでー」
よし。引きこもり脱出だ。気合入れていこうか。
メンバーはトト、ドリー、マイスナ、プラムだ。久しぶりに街に出よう。
「さすがにみんないい装備にかわってるなぁ」
久しぶりに来た始まりの街。プレイヤーの装備も変わっていれば、モンスターもちらほら、おそらく三段階目がいる。
これはぐずぐずしていられないか。ベルトリス近くの森に行って糸系素材を探そう。
【空間】スキルのレベル上げを兼ねてショートジャンプを駆使して移動することで、二日ほどの距離を二時間に縮める。
「ぜはぁ、ぜはぁ」
MPが空になったけどな。MPポーション塩素超添加当社比500%増プール水幼女エキス入りを一息に飲み干す。
さて。幼女成分はどこかな。
「マイスナはドリーの上。プラムは僕の頭の上。トト、全周警戒よろしくな」
いざゆかん!魅惑の水着を手に入れるために!
うん手に入れるべきは糸だってワカッテルヨ。
「水着にできそうな糸。んー、綿、麻、絹、羊毛」
ちらっ
びくっ
「羊毛」
ちらっ
びくっ
「絶対喜んでるよな、ドリー」
こら、そこ。しれっと早足にならない。
「ポリエステルとか無理だからなぁ」
防水と透け防止を考えないと。魔石を使った【付加】はできなさそうだしなぁ。使わなくてもできるものもあるけど、効果とか何段か落ちる。
「ぴぃ」
プラムに髪の毛を引っ張られる。上か?
太めの木の枝にさなぎがくっついていた。
シルクコクーン オス
パッシブ
変態 中。繭は糸同士が溶着し、繊維としては取れない。
おい。そのスペースはなんだ。
まあ、ともかく、こいつははずれか。さくっと経験値に変えてしまうか。【木登り】の熟練度上げがてら、上まで行くか。
「雷帝電杓」
繭を電撃が襲えば、
ぱきっ
そう、ぱきって繭が割れて
ぶしゃーーー
内容物が……あふれて僕にかかったじゃねーかよ、コンチクショウ。
うえぇぇぇ。まごうことなきTAIEKIです。本当にありがとうございました。
さなぎの体液 品質:悪
さなぎの中身が変態する際に一時的に変わる液体。一部地域では食す。
ドロップも体液でした。品質:悪なのは噴出したからだろうなぁ。
……気を取り直して次、探そう。
あれから二時間余り。
≪おめでとうございます。従魔:ドリー がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
眠りひつじ:ドリー Lv:9 up
HP:79 up
MP:21 up
STR:13
VIT:13 up
DEX: 7
AGI:11 up
INT:10
MIN:15
糸を出しそうな昆虫系モンスターを狙って狩っているけども。
≪おめでとうございます。従魔:マイスナ がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
フェルトパペット:マイスナ Lv:8 up
HP:34 up
MP:11 up
STR:10 up
VIT: 7
DEX:11
AGI: 8 up
INT: 3
MIN: 3
糸はいっこうにドロップしない。
≪おめでとうございます。従魔:プラム がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
ピクシー:プラム Lv:4 up
HP:17 up
MP:20 up
STR: 5
VIT: 5
DEX: 8 up
AGI: 6 up
INT: 6
MIN: 6
気が付けばかなり森の奥に来ていた。迷うのはたいして心配していないんだけどね。
辺りは木の密度が上がって、日が入りにくくなっている。たまに入る木洩れ日は、きらっと何かを光らせる。
「糸かな。木の間をわたっているってことはクモか。プラム。引っかからないように、ドリーの背中にいなさい」
「ぴぃ」
うん。素直ないい子だ。
しかし、視認しにくいせいか、どうもうまく【鑑定】がきかない。
「ぷう」
トトもせわしなく耳を動かすけれど、何かを聞き取れてはいないようだ。クモは静かだからな。
「ぴぃぴぃぴぃ!」
なにを騒いでるのかと思えば、糸を伝って降りてきたクモにプラムがさらわれていた。
バットイーター オス
アクティブ
コウモリを主食とするクモ。その他サイズの小さな動物も捕食する。
うわー。プラムが頭から丸かじりされるのか。
「ドリー、クモに【睡眠誘導】いけるか?」
「めぇー」
その場に突然柵があらわれ、ドリーが飛び越しては元の位置に、飛び越しては元の位置に戻る。
あれか。羊が一匹、羊が二匹を地で行ってるのか。
そのうちプラムの動きが大人しくなって、クモごところりと地面に転がる。
何でお前がかかってるんだよ。
とりあえず引きはがして、と。
「トト、かかと落としでぷちっと……」
ドリーの陰に隠れるようにダッシュして、そんなにいやですかそうですか。
……迦具土炎槍で焼いてしまえ。
…………そして糸は手に入らず、っと。
糸玉くらいどっかないかなー。
とりあえず夢の中のプラムは、ドリーの背中に戻しておこうか。
≪おめでとうございます。従魔:ドリー がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
とりあえず20匹くらいはクモをやったけど、一行に糸をドロップしませんよ?
眠りひつじ:ドリー Lv:10 up
HP:84 up
MP:23 up
STR:13
VIT:13
DEX: 7
AGI:13 up
INT:10
MIN:15
おかげでドリーがクラスチェンジの季節だし。
≪おめでとうございます。従魔:マイスナ がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
フェルトパペット:マイスナ Lv:9 up
HP:38 up
MP:12 up
STR:10
VIT: 7
DEX:11
AGI: 8
INT: 4 up
MIN: 4 up
マイスナのクラスチェンジもすぐだし。
≪おめでとうございます。従魔:プラム がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
ピクシー:プラム Lv:5 up
HP:18 up
MP:25 up
STR: 5
VIT: 5
DEX: 8
AGI: 6
INT: 8 up
MIN: 6
≪従魔:プラム は 簡易手当 を習得しました≫
プラムは新しいスキルを覚えるし。
いいことなんだけどね。
「しゅー」
そしてプラムはずっと寝たまま。
「しゅー」
さらには最後の戦闘が終わる直前くらいから、一匹のクモがドリーの毛にからまっている。
「しゅー」
ヒメグモ メス
パッシブ
小さいながらも立派な巣を作る。毒は持たない。
ふむ。糸がドロップしないなら、糸を吐くモンスターをテイムすればいいじゃない。
「そんなわけでテイム!」
≪ヒメグモ のテイムに成功しました。名前を登録して下さい。≫
ヒメグモ:アドネー Lv:1
HP: 5
MP: 3
STR: 3
VIT: 3
DEX: 5
AGI: 3
INT: 3
MIN: 3
スキル;糸 罠
「ステータス低っ」
≪召喚可能枠がありません。送還されます。≫
せっかくドリーがいいレベルになったんだ。丁度いいから交代だ。
「てなわけで、トト。アドネー背負っていこうか」
「ぷぷう!」
そんなに首を振らなくてもいいじゃないか。
「しょうがない。当面僕の頭の上でおとなしくしていてな」
「しゅー」
さすがに顔文字表記はないな。
「たっぷり糸を出してもらうために、頑張ってレベル上げをするかね」
……そういえばテイム枠ってあといくつあったっけ。
スキル:テイム:8 [8/9]
召喚:2
徒手空拳:7
鉈:9
槌:2
短槍:2
陰陽:8
筆記:5
写本:3
写経:2
読書:1
鑑定:7
識別:8
解体:6
ブラッシング:6
愛撫:5
高笑い:1
爆笑:1
引き笑い:1
皮革加工:3
付加:5
採取:1
ダッシュ:3
忍び足:1
掴み:3
木登り:2
森林踏破:5
降下:1
歌:1
水泳:3
潜水:4
耐寒:3
木工:6
祝福:1
空間:2
拠点転移
あと1しかない、だと。
これは帰ったらブラッシングしまくらねばなるまい。
ワイルドボア オス
アクティブ
突進を得意とするイノシシ。肉はそれなりにおいしい。牡丹鍋、じゅるり。
レベル上げを目標として一番に出会ったのがこいつだ。
運営は食欲が行動の最上位なんだろうか。
っていうか、こいつ、モフナーのカツ丼の材料じゃなかったか?
さあ、肉のために仕留めるか。―――ごきっ―――そう、さくっとごきっと。……ごきっ?
どうやら三日前のかつ丼を反芻してる間にトトがしとめてくれたか。
「ぷう」
うん。がんばるよ。
≪おめでとうございます。プレイヤーがレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
プレイヤー:毛皮丸 Lv:16 up
HP:201 up
MP:182 up
STR:20
VIT:14
DEX:18
AGI:17 up
INT:15
MIN:13
≪おめでとうございます。従魔:アドネー がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
早速きたな。
ヒメグモ:アドネー Lv:2 up
HP: 7 up
MP: 4 up
STR: 3
VIT: 5 up
DEX: 5
AGI: 3
INT: 3
MIN: 3
これでよし。順番に行こう。
そういえば、【糸】の出せる量とかあるんだろうか。
『糸:一度の食事ごとにVIT値mの糸を出せる』
おおっと。ナイス。ナイス判断僕。
つまり、今のアドネーは何か食べるごとに5mの糸を出せるんだな。
よし。ガンガンVITを上げていこう。
と、言いたいところだけど、今日はここでタイムアップだな。あたりが完全に暗くなってしまった。無理して戦い続けることもないでしょう。
明日はここからの続きだな。
感想より指摘があったので、冒頭部分の加筆を行っています。
指摘があったもう一点、モフナーが来ないというのは、拠点の存在は知っていても移動手段がないためです。もちろんメッセージなどのやり取りはできますが、毛皮丸の精神状態としてそれさえもやる気でない状態です。




