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20モフ目

本日二話目となります。ご注意ください

 おはようございます。起きても僕の尻尾は編み込まれたままです。

 さて。今日の朝ご飯は何かなっと。

「うむ。息災のようだな、毛皮丸よ」

「何でここにいるんですか、師匠」

 食堂には、僕に【陰陽】を教えてくれたタヌキのドーマン師匠がいた。

「なに。わしの故郷も米が主食でな。たまに食べたくなるとここに来るだけの話よ」

 米は正義!

「なるほど」

「む? なかなか【陰陽】が育ってきておるな。本は読んでおるか?」

「え?」


「まったくなげかわしい」

 麦とろ定食をぱくつきながら叱られています。

「せっかく手引書があっても、読まぬのでは宝の持ち腐れではないか」

 返す言葉もございません。

 昨日の段階のどこかで【陰陽】のレベルが5に上がり、新しい術を覚えれるようになっていたのだ。慌てて確認したスキルリストがこちら。


スキル:テイム:7 [6/8]

    召喚:2

    徒手空拳:5

    鉈:5

    陰陽:5

    筆記:3

    写本:2

    写経:1

    読書:1

    鑑定:3

    識別:5

    解体:4

    ブラッシング:6

    愛撫:5

    高笑い:1

    爆笑:1

    引き笑い:1

    皮革加工:3

    付加:5

    採取:1

    ダッシュ:3

    忍び足:1

    掴み:2

    木登り:1

    森林踏破:1

    降下:1

    歌:1

    水泳:2

    潜水:3

    耐寒:2

    短槍:2

    木工:6

    祝福:1


 師匠の土手煮もうまそうだな。

「早々覚えておけば戦闘も楽になったであろうに」

「はい」

「ゆめゆめ、精進を忘れぬようにな」

 にらまれました。

 こわっ。

「では、わしは行く」

「ありがとうございました」


 広場で手引書を広げています。

「さて、どれにするか」

 他の属性、盾、回復系……。

 継戦能力は今のところ大丈夫だから、他の属性をとるか。

 どーれーにーしーよーうーかーなー。

 君に決めゴフッゴフッ。

 危なかった。

 というわけでこれです。

「雷帝電杓!」

 府を構えた手から、30度くらいの扇状に雷撃が放射される。

 うん。なかなかに使えそうだ。

 こうなると、スキルレベルが5ある【徒手空拳】と【鉈】にも何かありそうだよな。

 どこで覚えればいいんだろう。

「やほー、毛皮丸。道端でぼーっと突っ立ってどうしたの?」

「モフナーか。いや、米を手に入れるという短期的な目標を達成したから、武器技覚えようと思うんだけど、どこで覚えるんだろう? って考えててさ」

「パツダの道場で覚えれたけど?」

「なにそれ!?」

 おっと。これはしまったか?

 モフナーの襟首をつかみ、がっくんがっくん前後に揺さぶってみる。

「ちょ、わ、わかった、話すから、話すから放して」

 一回頭が往復するごとに地味にHPが削れていくが、気にしちゃいけない。

 そうして僕はモフナーを手腕(物理)により、技のことをあらいざらい吐かすのであった。


「そんな便利なものがあったなんて」

「むしろ覚えずにここまで来てただなんて」

「あははは」

「これからどうするの?」

「決めてない。進むか戻るか」」

「好きにするといいよ」

「で、これからどうするかなんだけど」

「私は一度ベルトリスにもどるつもり」

「そか。僕も戻るかなぁ」

「一緒に行く?」

「でもログイン時間は?」

「世の中は今日からゴールデンウィークというものでして」

「……そっか。もうそんなになるか」

「湿っぽいのはなしなし。ギルドで輸送依頼とかないか見てみない?」

「そだな」


「これとこれとこれとこれが採取依頼で達成済み。マンモスの討伐はこれ見せればいいんだよね?」

「は、はぃぃぃ、依頼報酬が……」

「で、こんだけの輸送依頼を受諾で」

「大丈夫ですです、はい」

「私はこれだけ受けるね」

「はいぃぃぃ、これで手続き完了ですぅぅぅ。荷物は裏に回ってもらえますか?」

 持っていたドロップ品などで複数の依頼を達成して輸送依頼を受諾する。

 いやあ、なんとか鞄に収まりそうだな。

「じゃ、行くか」

 荷物をすべて鞄に収納し、ベルトリスに向かって出発する。



 二日かけて淡雪をクラスチェンジさせたストーンサークルまで来た。

「モフナーごめん、ちょっと寄り道」

「クラスチェンジ?いーよー」

 ようやくシンシナティのクラスチェンジをやってやれる。

 一緒にいたドリーとマイスナを待たせ、馬具を外す。サイズが変わったら大変だからな。

 ……馬具が調整で効かなかったらどうしよう。歩くか、ここで作るかすることになるな。

「さてやるか、シンシナティ」

「ぶるるる」

 ≪従魔:シンシナティのクラスチェンジを行ないます。クラスチェンジ先を指定してください≫

 魔法陣が光ったところで流れるシステムメッセージ。

 選択肢は


ホワイトホース


ドサンコー


サラブレット


 三つもあるんですか。

「どうしたのー?」

「選択肢が三つもある。ホワイトホース、ドサンコー、サラブレットだって」

「なにそれ」

 淡雪もトトも一択だったからなぁ。分かれるにしてももっと先かと思ってたよ。全部同じように分かれるんじゃないんだな。

 さて、どうしよう。これ、【識別】とか効くのか?

 ……ダメでした。うーむ。素直に一番上を選ぶか。

 白い光に包まれてクラスチェンジが完了する。


ホワイトホース:シンシナティ Lv:1


 HP:192 up

 MP:61 up



 STR:28 up

 VIT:25 up

 DEX:14 up

 AGI:37 up

 INT:16 up

 MIN:16 up


スキル:疲労軽減 障害踏破 跳躍 暗視new 耐暑new


 移動に便利なスキルが生えたな。

「真っ白になったねぇ」

 結果を知りたくてうずうずしているモフナーに、ステータスウィンドウをスクショして送ってやる。

 ちなみに尻尾の編み込みとリボンはクラスチェンジしてもそのままだ。

 取るのを忘れてただなんて言えない。

 馬具は……そのままつけれるな。

「アダムスのクラスチェンジは別ルートにしようかなー」

「アダムス?」

「あれ?うちの子の名前言ってなかったっけ?」

 今明かされる驚愕でもない事実。ちなみにウサギは雪見、ぴよこはぴーというらしい。

「さて、行くか」


 その日の夕方にはベルトリスまで戻ってこれた。納品先である冒険者ギルドで荷下ろしをする。鞄から取り出すだけの簡単なお仕事です。

「ありがとうございました。依頼達成です」

「では、これで」

「あ、毛皮丸さんは少々お待ちください」

「僕だけ?」

「はい。今回の依頼を持って毛皮丸さんの依頼達成数が500を超えたのでギルドからの表彰と粗品があります」

「えー、めんどくさい」

「いえいえ、式なんかなくて本当に表彰状と粗品を渡すだけですから」

「んー、ならいいか。っていうか500もクリアしてたか?」

「えっと、魔物よけの柵の作成がすごい数で達成になっていますが」

 え?【木工】の熟練度上げに何度も受けてたけどそんな数になるか?

 もしかして柵十個くらいで依頼一つ分とか?そう考えると、作った数と達成数の釣り合いがとれるな。

「じゃあ、私は行くね」

「はいよ」

「ではこちらの中から二つお選びください」

 二つももらえんの?

 ふむ。

 渡された羊皮紙には結構な数のアイテム名が書かれている。っていうか粗品レベルじゃないぞ。

 ざっと目で追ったところで気になるものは多いな。振動低減馬車、モンスターの卵、魔法の手引書。

 そしてひときわ目を引くこれ。

「では、空間魔法の書と儀式魔法核(極大)でお願いします」

「それでよろしいのですね?」

「はい」

「では、ギルドの中までお願いします」

 儀式魔法核。これ、魔法核生成ためせるんじゃね?試しに使ってみたときはだめだったけど、これはきたんじゃね?

 すぐに進めたいけど時間が時間だから明日だな。

 きょうはほんをよんであしたにそなえよう。

 どきがむねむねするな。




 おはようございます。太陽はまだ昇っていないけど、僕は元気です。

 だってテンション上がって上がってしょうがないんだもの。

 空間魔法は無事に覚えることができた。短距離の移動がせいぜいだけどな。ま、それはいいや。

 では、広場にいって、早速魔法核生成発動。

 ≪広さが足りません≫

 え?

 無慈悲なるシステムメッセージ。

 ここでできないと街の外に出るしかないか。

 しょうがない。シンシナティに乗ってさくっと移動しましょう。


 ≪魔法核生成を発動します。MPが足りないため、術者のHPおよびステータスの一時減衰を代償とします。発動すると術者は一週間この場より動けなくなります。よろしいですか≫


生成対象 浮遊岩

      浮島


 おいいい。ちょっと待って。キャンセルキャンセル。

 見過ごせないメッセージが流れましたよ?これはまずい。

メンバーを淡雪、トト、ドリーの戦闘向けにしておこう。

 では改めて。魔法核生成発動。

 ≪術者座標に海がありません。浮遊岩が強制選択されます。≫

 あれ?


 それから一週間。とても暇だった。

 だってさぁ。魔法核生成の魔法陣が発動した後ずっとそれにかかりきりになるかと思ったら、魔法陣の中にいるのが必要なだけで、僕がやることなんかないでやんの。暇で暇でしょうがない。

 でもそれももう終わる。

 ≪浮遊岩核の生成が終了しました。続いて岩殻の生成に入りますか?

 もちろんです。

 ≪周囲に取り込める岩がありませんでした。岩殻生成を終了します≫

 な……んだと。

 ≪以降、核に岩を接触させることにより取り込むことができます≫

 これは岩を集めざるを得ないな。

ぽーん

『やっほー毛皮丸。第二陣の情報って聞いた?』

『いや。そういえばもう来てるころだっけか』

『それがね。最初の地点がパツダじゃないんだって』

 なんですと?

『なんでもこの大陸の反対側が開始地点になっているらしいよ』

 うわー。運営やるな。第一陣の攻略情報がほとんど意味をなさないのか。

『情報さんきゅー』

『クラスの一部が第二陣で来てるんだけど、毛皮丸に合う予定が狂ったーっていってた』

『それは頑張って攻略を進めないといけないな』

『それじゃ、またね』

 運営め。開始時期ごとにスタート地点を変える気か?それはそれでありかもな。

 さて。すぐに会えない悪友どもことはひとまず脇に置いて蹴り飛ばしておいて。

 どこにいけば岩があるだろうか。ストーンサークルやストーンヘンジの岩を使うのはまずいよなぁ。

 うん。とりあえず米喰いに行こう。

 ステ減少の解除も待たないといけないしな。

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