表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/108

78話

 七章 


 七章 第一


「ふ~、ようやく終わりました」


 叶耶は大きく肩を伸ばした後、宿題で使っていた教科書とノートを片付ける。

 今日は、数学の宿題がいつもより多く出されていたため、想定していたよりも長い時間を費やしたようだ。

 この後は、今日の授業の復習と明日の授業の予習をしなければならない。

「でも、一度休みましょうか」

 家に帰ってから一時間以上机に向かって勉強をしていたのだ。集中力を切らさないためにも、少しの休憩は取っておいたほうがいいだろう。


 叶耶は椅子から立ち上がり、その後、ベッドに寝っ転がった。

 疲れた後にこうして横になるのはとても気持ちがいい。

 ふと、自分の机を見た。正確には机の上においてある色褪せた一枚の写真を。


 その写真には、教室で昂輝と彼のクラスメートが楽しそうに話している様子が写っていた。

 実のところ、この写真は自分が撮影したわけではない。これを撮影したのはまた別の人だ。自分は、今のマンションに引っ越してくるときに、これを持ってきただけ。


「結局、うまくいきそうにありませんね……」

 写真を見つめながら、叶耶は嘆息する。

 叶耶の目的は、昂輝と綾女が恋仲になることだった。

 しかし、普段の様子を見ている限り、彼らが恋人同士になるのはまだまだ先のように思える。

 まだまだ先だと意味がない。もうタイムリミットは近づいている。

 とはいえ、二人が付き合わなかったときのことも考えてある。まだ彼を救う方法は残されている。


「もしかしたら私は、桂くんたちに付き合ってほしくないと思っていたのかもしれませんね」


 優しそうに笑う彼の表情を思い浮かべる。それだけで心が温かくなってくる。

 最初は本当に、彼と志藤さんを恋仲にしようと思っていた。

 しかし最近、彼と志藤さんの一緒にいるところを見るのが辛くなる自分がいる。

 自分が彼の隣に立っていたいと思ってしまう。


「ふふ、こんなの、うまくいくはずがありませんよね」


 自分の矛盾した気持ちに気づいてしまい、思わず笑いが零れる。

 ああ、いつの間に自分は、彼に想いを寄せていたのだろう。

 自分の心に問いかけてみるが、その答えは自分で出せそうにない。


 プルルル、プルルル……


 その時、スマホのアラームが鳴った。休憩時間の終わりを知らせるアラームだ。

「それでは、勉強を再開しましょうか」


 そうして、叶耶は再び、勉強机に向かったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ