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66話★

「ねえみんなでこれに参加しない?」


 いつものメンバーで昼食を食べていると、七海が一枚のチラシを机の上にたたきつけた。

「ん、なにこれ?」

 俺たちは七海が取り出したチラシをみんなで覗き込む。


 そのチラシは、約二週間後に始まる学園祭の有志企画に関するものだった。

 十一月上旬に開催される星華学園の文化祭―――通称、星華祭では、各クラスや文化部による出し物の他にも、午後から有志による体育館での出し物がある。

 そして、七海が今取り出したチラシはその有志企画への参加者を募るものだった。


「ななちゃん、いきなりどうしたの?」

 牧原さんがみんなの心の声を代弁してくれた。

「えっ、だから、ここにいるみんなでこの有志企画に参加しないかって言ってるの。なんか、高校生活の思い出作りになりそうじゃない?」

 気軽に言う七海。

 七海以外のみんなが目をぱちくりとする。

 そんな俺たちを七海が見渡した。

「で、どう? 面白そうじゃない?」

「はぁ、それって実際どんなことするのか考えてるのか?」

 遼が頭を抱えながら尋ねた。

 七海が顎に手を置き考える。

 そして、

「そうねぇ、人数的にはバンドを組んでライブとかどうかしら?」

「なるほど、学生ライブか……。わるくはないな」

「たしかに面白そうね」

 遼と志藤さんは七海の意見に肯定的なようだ。

「それじゃあ、七海の言う通り、これに参加してみようか」

 せっかく遼たちとこの学園で出会えたのだ。俺も何か思い出に残ることをこのメンバーでやってみたいと思った。

「だとしたら、パートはどうするの?」

 企画への参加が決まり、すぐさま次の話に進める。

「ん、俺はキーボード以外ならできるぜ」

「わたしはギターかベースかな~」

「私はドラム以外ならできるわね」

「えーっと、ピアノならある程度弾けるからキーボードなら……」

「だったら、パートはこんな感じはどうかな?」

 牧原さんが先ほど分担をしたのだろう手書きのメモを机に置いた。それによると、


『ボーカル――――――――――志藤綾女

 ギター ――――――――――― 笹瀬七海

 ベース――――――――――――牧原友愛

 ドラム――――――――――――大道寺遼

 キーボード――――――――――桂昂輝』


「……」

 俺はこの時、ある一点に目を見つめていた。


『ボーカル――――――――――志藤綾女』


 思い出すのは、転校初日の出来事。屋上で初めて志藤さんと出会ったときのことだ。あの時の彼女の歌は今でも鮮明に覚えている。

 綺麗にすんでいて、心が浄化されるようなそんな歌。また歌っている彼女を見ることができる。

 俺は、体育館の舞台にのぼる彼女へと思いを馳せた。

 そして、俺以外のみんなもこのパート決めに納得のようだ。

「あっ、綾女がボーカルっていいわね。たしか、中学のときは合唱部だったのよね?」

「ええ、でも中学二年のときにやめてしまったけれど」

「大丈夫、大丈夫。ガチの人がいるのは心強いわ」

「へ~、意外とすんなり決まったし、しっくりくる分担だな」

 サムズアップする七海に、謙遜しながらも嬉しがる志藤さん。遼はその隣でふんふんと頷いている。

「よし、じゃあ文化祭では学生ライブをやるわよ~」


「「「「おー」」」」


 こうして、俺たちの有志企画参加が決まったのだった。

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