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49話

「ごめん、待たせちゃったかな?」


 櫻木さんはすでに図書室にいた。

 今はテスト週間であるため、図書室を利用する生徒は多い。見ると、図書室の至る所で勉強をしている生徒がいた。

 どうやら、櫻木さんは早めに来て、二人分の席を確保してくれていたようだ。

 彼女は俺を見つけると、優しく微笑んだ。

「いえ、私もついさっきついたばかりですよ。あ、ここが桂くんの席です」

 櫻井さんが確保していた席を指す。

「うん、ありがとう」

 椅子を引き、腰を下ろした。

 確保してくれていた席は横並びの席だった。


「それではさっそく勉強を始めましょうか。えーっと、桂くんは何から始めますか?」

「うーん、物理をやっておきたいかも」

「いいですね。では、物理から勉強しましょうか」

「ありがとう」

 お礼を言うと、鞄から勉強道具を取り出す。


 物理については苦手科目というわけではないが、得意科目というわけでもない。それに、今回の範囲は広く設定されていたので、しっかりと復習しておかないと、厳しい成績を取りそうだった。

 テスト範囲である教科書のページを読みながら、各章末に載せられている練習問題を解いていく。

 物理の担当教師である川島先生は授業を分かりやすく進めてくれる。そのため、教科書に書いてある内容は、どれもすんなりと頭に入ってきた。

 各章末にある練習問題も授業で解説してもらったものばかりだし、さくさくと解き進めることができた。

 テスト範囲の半分ほどを消化したとき、ふと、隣が気になった。

 目の端で彼女を捉える。


 櫻木さんは、すっと背筋を伸ばし、お手本のような姿勢で机に向かっていた。

 雪のように白い肌に、長いまつげ、そして桜色に色づく唇。

 彼女の有無を言わせない美しさに、いつのまにか俺は目を奪われていた。

「ん?」

 その時、隣の視線に気が付いたのか、櫻木さんがこっちに振り向いた。

 彼女のヘーゼル色の瞳が俺を捉える。

「えーっと、桂くん……私の顔に何かついていますか? さっきからすごく見られている気がするのですが……」

 櫻木さんは困惑した表情を浮かべた。

 この時、ようやく俺はずっと櫻木さんを見ていたことに気が付いた。

「あっ、ごめん。な、なんでもないっ」

「そ、そうですか……? それならばいいんですけど……」

「集中を乱してごめん。じゃ、勉強の続きをしようか」

「はい……」

 櫻木さんは頭上に?を浮かべながらも、すぐもとのようにペンを動かし始めた。

 それを見て、俺も自分の勉強に再度集中する。

 雑念を振り払うように教科書の字句を追い、問題を解いていく。

 そのかいあって、思いのほか早く、テスト範囲の復習が終わった。


「んー」

 両手を天井に上げ、上半身を伸ばす。思ったよりも疲労がたまっていたようだ。

「ふふ、お疲れですね」

 隣を見ると、くすくすと櫻木さんが笑っていた。

「あー、うん。ちょうど、教科書のテスト範囲も読み終わったしね」

「なるほど。あ、それなら、一緒に物理の問題集を探しに行きませんか? 私もさきほど、教科書の復習が終わって、問題演習をしようと考えていたところなんです」

「それ、いいね。自分が本当に理解できたのか試すことができそう」

「ありがとうございます。それでは見に行きましょうか」

 貴重品だけポケットに入れて、俺たちは席を立った。


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