100話
「ようやく来たか……」
俺が学園に戻ると、保健室の前には遼と牧原さんがいた。
「か、叶耶は……?」
「大丈夫だ。今ちょうど目を覚ました」
「私と遼くんが生徒会室の鍵を閉めようと外回りから戻ってきたら、中で叶耶ちゃんが倒れていたの」
二人が状況を説明してくれたが、頭でうまく整理できなかった。ただ、叶耶が無事であることと、彼女を遼たちが助けてくれたことは理解できた。
「ありがとう、二人とも」
二人に頭を下げる。
「櫻木さんが、昂輝のせいじゃないって言っていたから、今回はあまりとやかく言うつもりはない。でも、大切な彼女なら絶対目を離すな」
遼が俺の肩に手を置いた。
「うん、わかってる」
すると、遼はもう大丈夫だと判断したのか、
「じゃ、俺らはもう帰るわ。後はよろしくな」
それだけ言って、玄関口へ向かっていく。
「桂くん、叶耶ちゃんをよろしくね」
牧原さんも遼の後を追いかけていった。
遼たちの姿が見えなくなると、俺は保健室の扉に向き直った。
「さて……」
おそらく、叶耶は自分の身に何が起こったのか分かっているはずなのだ。それに、この前のことも。
きちんと彼女の口から話してもらわなければならない。そうしないと、彼女をまた見失ってしまう。
俺は覚悟を決め、保健室の扉を開けた。
ガララッ
一番奥のベッド。そこに彼女はいた。
扉の開く音に気がつき、彼女はこちらを見る。その表情はどこか愁いを帯びていているように見えた。
しかし、顔色に問題はなく怪我も見受けられない。
とりあえず彼女が無事だったことに安堵した。
「……心配をおかけしてすみません」
「うん、全然大丈夫。叶耶が無事だったから」
「……」
彼女は顔を俯けた。
「……」
「……」
「……それで、叶耶に一体何が起こったのか教えてくれないかな?」
しばしの沈黙の後、俺は本題を切り出した。
俺の真剣な表情を見て、もうごまかすことはできないと悟ったのか、彼女は、はぁっとため息をつく。
「もうこうなっては仕方ありませんよね。わかりました、全てをお話します」
そして、彼女は真実を語り始めた。




