27.追手と助太刀
「こっち」
おつなが先に立って走り出す。
「あっ?」
「あいつ!」
嫌な回転音がして、殺人光線を放つ少女が現れた。木の葉を蹴散らす慌ただしい足音もする。
「ダイダイのーっ!無事かあ」
「マルアオ先輩」
「なんだ、連絡とったのが悪手かい」
おろくが唾を吐かんばかりの調子で噛み付く。
「ちっ、癪に触るアマだぜ」
「ジンザはこう見えて真面目な調査員だぜ」
「今そんなことどうだっていい!」
ダイダイが叫び、おつなを追って走る。おろくも続く。
「文明を守れ!俺たちはあの猫ゴーレム擬きをなんとかしてやるぜ」
黒塀の屋敷で見かけたヤクザ者のジンザは、自信満々で破壊少女を引き受けた。青い鳥と連携して、何か大技をするらしい。魔法の力が膨らんでゆく。
「ぐっ!魔力が土地に吸われる?おつなちゃん、大丈夫かい」
「へいき」
「無理なら魔法で運んでやる」
「なんだダイダイ、優しいじゃないか」
ジンザ達の魔法は、土地の魔力を借りるものとみえる。そうして減った分を、今度は土地が別の生き物から奪うのだ。
「魔力が少なきゃ住めない訳だよ」
おろくは吐き捨てるように言って、おつなを気遣う。おつなは、先程拾ったばかりの小さな魔法石を入れた袋をしっかり抱えて懸命に先を急ぐ。
おつなの案内でエルフの森の入口に着いた。あたりは暗くなり始めていた。里のみんなは鴉の姿で飛んできた。
「いくよ」
おつなは黒札からラベンダーの札を取り出して振る。飛び出したのは、薄紫のちりちり頭をした細身の少女。緑のノースリーブワンピースに緑の靴を身につけている。靴のつま先はくるりと丸まっている。
「さあ、エルフの森、エルフの町、答えておくれ」
「答えを求める花だな」
言う間にラベンダーの少女は扉に触れて苦もなく開く。鴉達は次々に扉を潜る。背後では雷のような音や、鉄砲水のような轟音が響いていた。
「山、くずれないかな」
「安心しな、おつなちゃん。俺たちは文明を守る」
「魔法文明保護って言ってもさ、一般文明とバランス取らないとどっちも滅びんのさ」
「エルフの移住もそれかもな」
「だね。こんな魔法使う施設に住んでるから、バランス崩れて魔力を土地に持ってかれたんだろ」
「この辺にはずいぶんたくさんの魔法存在が住んでるみたいだからな」
魔法生物たちは土地とうまく魔力を循環させて住んでいた。しかし、生きる為に必要な以上の魔力を借りてしまい、結果生きる為に必要な分まで取り返される場合もあるのだ。
「前に住んでたとこも同じじゃないのかい」
「そうなのかも知れません」
扉で合流した理吉が申し訳なさそうに呟く。
「ああ、いや」
おろくは理吉を責めたわけではない。
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