20.遺跡の調査
「おろく、調査に行くぞ」
理吉から得た情報は、魔法使いにとって大事件である。そこでダイダイが、おろくにエルフの森の調査を促す。
だが、おろくはのろのろ札を片付けながら、気乗りがしない様子であった。
「はあ、この規模じゃあ、仕方ないね」
「まったく、やる気あんのか」
「あんまりないねえ」
おろくは魔法使いだが、ダイダイのように世界全体の魔法については興味が薄い。ダイダイは、魔法連合本部で使命感を持って働いている。
ダイダイが志願して連合職員になったのに対して、おろくは、スカウトされての参加だ。
特殊な魔法使いは保護する、という連合の方針もある。この方針に従えば、エルフと鴉のハーフであるおつなの強運の魔法も保護対象となりそうだ。
「遺跡にはエルフの血が入ってないと入れませんよ」
理吉が再度説明をする。
「なに、ちょっとした抜け道かあんのさ」
「おい、おろく」
「いちいちうるさいねえ、違法じゃないよ」
ダイダイが眼を細めて警告するが、おろくは取り合わない。魔法には国際法があり、あまりにも危険な魔法は違法な場合が多いのだ。
「おろくさんは、やはり凄いですねえ」
「やだよぅ、照れるじゃないか」
また2人がもじもじし始める。ダイダイが無視して戸口に向かう。おつなも続いた。
「遺跡に魔法石を返したら、代わりがないときつい」
おつなはダイダイにこぼす。
「それ拾う前はどうしてたんだい」
「小さいのが拾えるとこがあるから、それでなんとか繋いでた」
小さな魔法石は、エネルギーを自然に放出しやすく、長くは持たない。
魔力が少ないと具合が悪くなってしまうここ鴉の里で暮らすため、エネルギーが空っぽになる前に新しい魔法石を手に入れる。
その為、おつなは常に魔法石を探していた。そんなある日、エルフの森の奥にある遺跡で、大きくて良質な魔法石を見つけたのだ。
「行くにしたって、今日はもう遅いですよ」
理吉の冷静な言葉に、外に出ようとしていたダイダイとおつなが足を止める。
「やっぱり里に泊まって、明日遺跡に行きませんか」
「そうだねえ」
「そうさしてもらうか」
理吉の提案におろくが言えば、ダイダイも頷く。
「おつなちゃん、予備の魔法石はないのかい」
泊まる挨拶の為に里長の部屋へ向かう途中、おろくがおつなに訊いてみる。
「ない」
「近くに拾えるとこは?」
ダイダイが確かめる。
「ある。暗くなる前に探す」
「おろくさんも行きますか?」
理吉の誘いにおろくは驚く。
「えっ、いいのかい?」
「お世話になりましたから」
小さくても、魔法石は魔法石だ。拾える場所を教えてもらえるのは貴重である。
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