18.魔法石を見つけた場所
結局、黒札はおつなの一人勝ちであっという間に終わった。おつなのいない方の組はそれなりに時間がかかるので、二回目くらいまでは、おつなのいる組の鴉たちは見学に回っていた。
しかし、見るだけだとすぐに飽きてしまう。鴉たちはどうやら何事も参加するのが好きなようで、ただ眺めているのは退屈なのだろう。
鴉たちは、三回目が始まるくらいから見学組が飽きて帰り始めた。人数が減り、とうとうおろくとダイダイの他は鴉の兄妹だけになってしまった。
「おつなちゃん、その魔法石はどこで見つけたんだい」
ダイダイがなんでもなさそうに口を切る。
「ダイダイ!仁義にもとるよ!」
おろくが紫の目を釣り上げる。
魔法石には、発見場所での採掘または採取の権利が発生しないのだ。だから、良い場所を見つけると秘匿するのが普通だ。
そして、互いに聞かないのが暗黙の了解である。もっとも、自力で見つければ自由に採掘や採取を行えるので、小競り合いは常にある。
「いいよ、エルフの遺跡だから」
おつなは気にせず淡々と明かす。おろくは聞きなれない言葉に首を捻る。
「エルフの遺跡?」
「うん。エルフの森の奥にある」
「古代エルフが住んでいた場所かい?」
「エルフはもう森にいない」
「え?」
「遺跡は昔、エルフが来た時のもの」
おつなの説明は断片的でよく解らない。おろくは助けを求めて理吉を見やる。
頼られたと感じて、理吉はやや上気した様子を見せる。ダイダイがまた嫌そうに尻尾の先で床を叩く。
「エルフは昔どこかから、今エルフの森と呼ばれている場所にやって来ました」
「何処からかは分からないのかい?」
「大昔のことですから」
「ふうん」
「その時から遺跡はあると聞いています」
「昔の街なのかね」
「たぶんそうでしょう」
とりあえず、エルフの遺跡が何なのかは解った。
「それで、なんでそこで見つけたことは言ってもいいんだい?」
「ああ、エルフでなければ入れないからですよ」
ただし、血が薄まっても入れるらしい。理吉とおろくの兄妹も、何の問題もなく遺跡に入れる。
「面白いから時々行く」
「遺跡には、自然に開く扉や、乗ると動き出す床があるのです」
「昔の街なのに、魔法が生きているんだねえ」
それはたいしたことであった。
普通の魔法装置は、動力となる魔力や魔法石を装置に取り付けてある魔法陣に充填しないとならない。充填が必要な頻度は装置によって違う。しかし、遺跡と呼ばれるほどに古い時代から動き続けているのは、おろくもダイダイも聞いたことがなかったのである。
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