17.強運
おつなはそれぞれの組が作る輪の真ん中に山札を置く。
「順にめくって、最初に黒札を引いた人が親だよ。こっちの組はあたしが親をやるから、決めるのはそっちだけでいいね」
おろくの言葉を受けて、理吉のいる組が山札の上から一枚ずつ引いてゆく。三人目で、世話焼きおばさんが親を引き当てた。
親が決まったところで、山の適当なところに札を戻してゲームが始まる。親から時計回りに一枚ずつめくり、手札が七枚になる。
「みんな七枚持ったね?次からは役が揃うまで、一枚引いたら一枚表にして捨てるよ」
おろくの説明に頷くと、それぞれの組で駆け引きが始まる。
「札の捨て方で、何を狙っているかを気づかせない工夫をするといいよ」
皆初心者なので、おろくは楽しむコツを助言する。
しかし、説明も虚しく、一枚目を引いたおつなが宣言をした。
「あがった」
おろくの組の四人も含め、皆で一斉におつなを見た。
「おつなちゃん、それ」
おつなが膝の前に並べたのは、一番強い「揃い」だった。すなわち、同色の全柄揃いに黒札一枚。
他のみんなは、バラバラで全く揃う気配のない手札だった。
それから3回、組を変えながら遊んだが、毎回おつなは一巡で上がる。一番強い役がもう一回出た。一色の花全てが二回。
「おつなちゃん、あんた、どんな役を作りたいか想像したかい?」
おろくは真面目な顔で訊く。
「うん。4回とも、思ってたのが来て嬉しい」
おつなはほんの少し口元を緩め、淡々と喜びを表す。
「そりゃ魔法の才能だねえ」
「そんな筈は。魔力ほとんどないですよ」
おろくの言葉に、理吉が反発する。
「理吉っつぁん、おろくちゃんて馬鹿みたいに運が良くはないかい?」
「確かにそういう時もありますが、強運なら捕まったりはしないでしょう」
理吉は不審そうに言う。
「捕まった時は、予想外の出来事だからだろ」
「思うように未来をねじ曲げるとでも?」
「そこまでかは判らないけどね」
「そいつぁエルフの伝説上の秘術じゃねえか」
「それなら、ますます違いますよ」
割って入ったダイダイの一言に、理吉は眉根を寄せる。おろくは理吉とおつなをじっと見て、静かな口調でこう言った。
「魔法の才能はね、魔力の量とは関係ないのさ」
「え?」
「そんなの、聞いたことないね」
「馬鹿な」
「おつなは、魔力が少なすぎて魔法も秘術も使えない」
おろくの説明に、鴉たちが口々に反発する。しかし、おろくは落ち着いて、おつなの足首にまだ飾られたままの魔法石を指す。
「そのとんでもない魔法石がありゃ、才能を活かせるって寸法さ」
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