16.組分け
皆の注目を集めたおつなだが、特に動じる様子はない。淡々と希望を述べる。
「やってみたい。どこに座ればいい?」
「適当に山札の回りに座っとくれ」
「わかった」
おつなは緑色の巻き髪をふたつ、頭の脇で揺らして座る。それにつられて、部屋になんとなく居残っていた数名が車座になった。
「どれどれ、ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな。七人かい。あたしを入れたら八人か。末広がりだよ。めでたいね」
世話焼きのおばさん、その友達らしき大人しいおばさん、緑の兄妹、若いお兄さん、おじさん二人組、以上七人。おつなを除いた六人の鴉が、大きな翼を背中に畳んで正座する。なかなかの圧迫感である。
おろくは山札を手に取って、中から二色を四枚ずつ取り出した。
「あたしも含めてふた組に分けるよ。順に一枚ずつ引いて、同じ色同士でやろう」
理吉はちょっと落ち着かない。おろくが色々と逃げる手段を持っていると知って、多少は安堵した。しかし、先程襲ってきた謎の攻撃少女におろくの住みどころが知られてはいないか、心配ではあるのだ。
「理吉っつぁん、聞きたい事でもあんのかい」
おろくは、理吉の気持ちをはっきりとは判別できずに、とりあえず聞いてみた。
「ああ、いえ、そういう訳では」
言い淀む理吉に、ダイダイが軽く尻尾を振って嫌そうに顔を背けた。
「ふうん。とにかく札引いて組み分けよう」
おろくはよく解らずに、ゲームを進行することにした。理吉は通じなくて良かったような、なんとなく面白くないような、落ち着かない気持ちで札を引いた。
組分けは、おろく、若いお兄さん、おじさん二人組の四人と、おつな、理吉、おばさん二人組の四人になった。理吉はちょっと眉を寄せたが、すぐにまた静かな半眼に戻った。
その様子を見ていたおつなは、無言でダイダイと目混ぜをした。
おろくは気にせず、帯の間からもうひと組の黒札を出す。こちらには、金銀砂子(キラキラの粒)が裏面に撒かれている。
「おろくの帯は色々入りそうだねえ」
世話焼きおばさんが感心する。
「ちょいとずるしてんのさ」
「魔法かい?」
「帯裏に、無限箪笥を仕込んでんだよ」
「何だいそりゃ。何でも入んのかい」
「入るさ」
「便利だねえ」
おろくが住む虫喰い長屋の部屋にある箪笥も、形ばかり普通の小さな貧乏箪笥だが、中は無限箪笥である。
おろくは皆が引いた札を集めたが、おつなは札をじっと見つめている。
「おつなちゃん、札戻しとくれ」
「これ、さっきの?」
「ん?ああ、投げたやつだね」
鴉の兄妹を助けた時に投げた黄色い鳥の札は、いつの間にかおろくの手元に戻っていたのだ。
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