96海里目 改良は続く
30分ほど飛行を行ったオーウェンは、速度を落として「龍驤」の艦尾側から接近してくる。
「こちらオーウェン、これより着艦体制に移る」
このような通信が艦橋に入ってくる。
俺はその通信を受けて、飛行甲板にいる隊員に指示を出す。
「RAF-4Eが着艦する。総員、着艦準備」
飛行甲板では、バタバタと隊員たちが着艦作業に追われる。
その間に、俺は飛行甲板脇に出て、着艦の様子を見守ることにした。
甲板後部では、着艦のためにアレスティング・ワイヤーが合計で3本準備される。
このワイヤーに、航空機側についているアレスティング・フックがひっかっかるようにするのだ。
着艦の準備が整った時に、RAF-4Eが艦尾側から速度を落として進入してくる。
そして高度を下げつつ、RAF-4Eは飛行甲板に主脚をおろした。
その瞬間、アレスティング・ワイヤーにフックが引っ掛かり、速度を急激に落とす。
そして艦中央部で完全に停止した。
着艦成功である。
隊員たちが一斉にRAF-4Eのもとに駆け寄る。
それは整備のためだったり、RAF-4Eを格納庫に戻したりするための作業だったり、理由は様々だ。
そんな中、RAF-4Eからオーウェンが降りてくる。
「空の旅はどうだった?」
俺はオーウェンのそばにより、感想を聞いてみる。
「あぁ、思ったより快適だったな。なんとも清々しい気分だった」
「そりゃ良かった。これで文句を言われたらどうしようかと思ったよ」
そういってオーウェンはその場を去っていった。
この後は、もう一つの目的である「龍驤」の公試である。
今回の公試は、そこそこの結果を残していた。
そこそこというのは、「龍驤」自体の操舵性や艦の揺動がひどく、うまく操縦できなかったことが判明したからだ。
これについて原因考えたのだが、理由は一つしかないだろう。
「バランス、悪いからなぁ」
そう、「龍驤」と言えばなんたってこの圧倒的バランスの悪さが一番に出てくるだろう。
それを補うために、艦底部にはジャイロスタビライザーが装備されていたそうな。
今回、公試の結果が芳しくなかったのは、おそらくこれが原因だろう。
これは、帰ったらジャイロスタビライザーを装備するしかないだろうなぁ。
こうして公試から帰ってきた直後に、俺は早速改良を加える。
艦底部の甲板をいくつかぶち抜き、大型のジャイロスタビライザーを設置する。
史実ではこのジャイロスタビライザーは100tもあったとかなんとか。
それに準じ、俺は100t越えの重りを使ってジャイロスタビライザーを作成する。
また、それを動かすための動力も新しく作り、完成した。
早速試運転しよう。
ジャイロスタビライザーの電源を入れ、重りが回転を始める。
それにより、艦全体が安定することになるだろう。
今度はジャイロスタビライザーを動作させながら公試をさせてみる。
そうすると、それをつける前よりも結果が各段に向上した。
あとは各種装置の点検やら整備をすれば、完成といったところだろう。
そんなある日の執務室に、ヤーピン皇国から書類が届く。
「あれについての書類かな?」
あれというのは、乙賀組に関する情報だろう。
早速書類を開けてみると、様々なことが書かれていた。
現在、乙賀組は諜報活動を全面的には行っておらず、技術の継承という点のみで活動している組織である。
そのため、うまくやれるか心配ではあるものの、ぜひやらせてほしいとのことだ。
「現在は活動してないのか…。少し心配だな」
だが、乙賀組がここまで言っているのだから、これを無視するわけにもいくまい。
俺は一度会ってみたいという旨の返事をする。
返事はすぐに返ってきた。
どうやら、担当者をヒルノ海上国家のヤーピン皇国大使館に向かわせるとのことだ。
早速俺は指定された日時に、ヒルノ海上国家へと向かう。
ヤーピン皇国大使館の窓口で要件を話すと、すぐに奥のほうへと通される。
応接室のような場所に通されると、そこには特命全権大使の坂下さんと、もう一人スーツ姿の男性がいた。
「どうも、司令長官。私が乙賀組の組長である登坂です」
「これはご丁寧にどうも…」
乙賀組の組長と名乗った登坂は、ソファから立ち上がって礼をする。
俺も反射的にお辞儀をした。
「それで、乙賀組になんのようがあるのでしょうか?」
「あぁ、そのことなんですかが…」
お互いソファに座りなおし、俺が事情を話す。
クレイル連邦での諜報活動を行ってほしいこと、そのためには乙賀組の力が必要であることを話した。
それを静かに聞いていた登坂さんは、ゆっくりと口を開いた。
「聞いた限りですと、我々乙賀組にしかできないことであることは分かりました」
「実際にこれを実行できるのも乙賀組だけなんです。どうかお願いします」
俺は座った状態で頭を下げる。
「…分かりました。ご期待に添えるかどうかは分かりませんが、できる限りのことはしてみます」
「ありがとうございます」
こうして乙賀組の協力を得ることができた。
その後、詳しいやり取りが行われる。
「では、クレイル連邦に上陸する方法として、そちらで整備した大発で上陸するということになりますが」
「えぇ、その方法で行きましょう。護衛に関しては我々の方から出すということで」
「分かりました。情報の伝達はどうしましょう?」
「長距離でも通信可能な小型の通信機を持たせましょう。それもこちらで準備します」
「何から何までありがとうございます」
「いえいえ。これもひとえに防衛連盟の勝利のためですから」
こうして乙賀組の登坂さんとの話し合いは終了した。
これ以上の詳しいことは、後日の書類のやりとりで決定してくことになる。
さて、ヒルノ海上国家には、もう一つやるべきことがある。
それはロディ研究室での通信傍受装置の進捗状況だ。
テラル島をでる前に、書類ではこの通信傍受装置は仮完成したとの報告を受けている。
そのため、進捗の確認と同時に仮完成した装置の状況を見ようと考えたのだ。
「司令長官、お待ちしていました」
ロディ研究室に向かうと、代表が待っていた。
「通信傍受装置が仮完成したと聞いたのですが」
「えぇ。あとは試験をするのみといったところまで漕ぎつけました」
案内された部屋の中央には、机に置かれた見た目普通の通信機と変わらない装置が鎮座していた。
「これが例の装置ですか?」
「はい。大きさが大きくなったのと、中の回路を弄った以外には特に何も変わっていません」
「まだ試験はしていないと言っていましたね?」
「そうです。もし試験に通ったとしても、以前司令長官が懸念していた内容で使い物にならない可能性もありますし」
懸念していた内容とは、クレバイルが使用している周波数が変わっている可能性のことだ。
もしそうだとしたら、せっかく作ったこの装置も役に立たないことになる。
だが、可能性を否定してしまうのはもったいないというもの。
俺はその可能性に賭けるのだ。
「とりあえず試験してみましょう」
俺は一旦ヒルノ海上国家へ乗って来た「吹雪」に戻り、いくつかの単語を発信してみる。
その単語をロディ研究室の通信傍受装置で拾い、また答え合わせするというものだ。
単語を発した俺は、ロディ研究室に戻ってくる。
そして答え合わせをした。
「…全問正解です。傍受は完璧に行われているようですね」
「あとは実践で役に立つかどうかですが…」
「大丈夫、使えても使えなくても我々はなんとかしてみます」
そういって、俺は今回の依頼料を支払った。
こうして次の作戦のための布石がされていく。
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