63海里目 成功と失敗と改善
季節的には春なのだろうが、如何せん赤道直下の場所にあるため季節の変わり目があまりない3月。
新たに製造した小銃を「45式小銃」と命名し、試作品1号を完成させた。
これからテストしようかなと思っていたところで、ある連絡が入る。
モールス信号の送受信機が完成したとのことだ。
早速俺は「吹雪」を使って、ロディ研究室に向かう。
「こちらが試作品になります」
出されたものは、なんとなく見たことある電鍵である。
試しに少しいじってみると、なんとなくそれっぽかった。
「試験はすべて順調です。あとは実地試験になります」
「ありがとうございます。では早速、わが艦隊の艦船に搭載してみましょう」
すぐさま近くの軍港に停泊している「吹雪」に搭載してみる。
ここで一つの実験をしてみた。「吹雪」の艦橋からある符号をロディ研究室に送り、その符号をそのまま返すという実験だ。相手はどんな符号が来るか分からないようにしている。
試しに「SOS」の符号である「トントントンツーツーツートントントン」を送ってみた。
すると、数秒後に同じ符号が返ってくる。そのほか、様々な符号を送ってみたが、見事にすべて正確に返ってきた。
「これは成功ですね」
「そうですね。よかった」
俺は彼らと固い握手をかわす。
こうしてロディ研究室とは、連合艦隊との技術開発を専属に行う契約を交わすことにした。
その後、俺は設計図を持ってターンドコム製造所に向かう。
「意外と早かったな」
「そうですね。私自身も驚いています」
早速材料を生成して量産を依頼する。前金にいくらか持っていかれたが、今後の艦隊活動が有利に動けるならば安いものだ。
「さてと、やることは終わったし、小銃の動作確認でもするかぁ」
俺はテラル島でも人気のない場所に向かった。そこで土の山に向かって何発か射撃を行った。
45式小銃は何とか射撃に耐え、実用に向けた試験に移行する。
すなわち、実際に隊員に小銃を扱ってもらうのだ。
早速テラル島にある兵学校の隊員に複数の小銃を渡し、射撃訓練をさせてみる。
「これが新しい銃ですか…」
「えぇ、実際に射撃を行ってみて、その性能を確認していただきたいんです」
「なるほど。やってみましょう」
その後約1日をかけて小銃の性能テストを行った。
その結果、性能はおおむね良好だ。実戦に出しても良いくらいである。
「これでよし。早速アンデルトに持っていこう」
そういって俺はアンデルトに向かった。
「これはまた大変なものを持ってきたなぁ」
「どうかお願いします。これがあるのとないのとでは今後のクレバイルへの反撃に差が出るほどのものなんです」
「それを言われちゃうとこっちとしては苦労しちゃうんだけどなぁ」
「お願いします」
「まぁ、断れないよ。ラインも組んじゃったし…」
「では?」
「依頼してくれたらやってあげるよ」
「ありがとうございます!早速依頼をします」
そういって俺は45式小銃の実物を簡単な設計図を提示した。
コンウェイさんはそれを持って事務所の奥へと行く。
しばらくした後、コンウェイさんが戻ってきた。
「それぞれのラインに連絡を取ってきたよ。どこも準備できてるって」
「ではすぐにでもお願いします」
「分かった。あとこの実物は預かっちゃってもいいかな?」
「大丈夫です」
「じゃ、すぐにでも生産に入っちゃうね」
こうして依頼金を払い、45式小銃は生産体制に入った。
俺はテラル島に戻ると、そのまま兵学校のほうへ向かう。
小銃の量産が確定になったのだから、今の新人隊員に小銃の使い方と戦術について教授しようと考えているのだ。
「というわけで、これから45式小銃を扱ってもらう。まずは小銃の使い方からだ」
この小銃の特徴は、なんといっても扱いやすさに特化していることだ。AK-47に似た見た目をしているほか、30発の弾倉や単発発射など、限りなくAK-47っぽい銃である。
そんな45式小銃を使わせると、少しばかりの戸惑いがあった。
そりゃそうだろう。この世界ではいまだマスケット銃が主流であるからだ。ほとんど見たことないような弾丸や近代的な銃なんかは扱いが難しいと感じるのも無理はないだろう。
それから1週間がたった頃、アンデルトの方から連絡が入る。どうやら45式小銃の最初の型が出来上がったそうだ。
早速俺はアンデルトを訪問する。
「初期ロットが完成したよぉ」
そういって見せられたものは、驚愕のものであった。
全体的にガタガタであり、公差が想像以上に甘く、ライフリングもまともに施せていない不良品が出来上がっていたのだ。挙句の果てには、引き金を引いても動作しないという感じである。
「これは…」
俺は言葉に出さなかったが、これはあまりにもひどかった。
「これじゃあ実戦には出せないですよ…」
「なにぶん初めて作るものだからねぇ」
「うーん…。どうしましょう?」
「こうなったら司令官にも手伝ってもらうしかないよ」
「そうなりますよねぇ…」
というわけで俺はアンデルトの製造ライン向かう。
まずはライフリングを加工する工場だ。
「まずはどんなふうに加工しているか見せてもらってもいいですか?」
「あいよ」
そういって銃身になる前の、鉄パイプのようなものを取り出す。
それを専用の工具を使ってライフリングを施すようだ。
だが、引っ掻いてライフリングを施すのに、うまくいっていないようである。
それは見てすぐに分かった。工具を引き抜く時の引っ張り力が足りてないのだ。
これではすぐにライフリングがダメになってしまう。
「これなら、新しく造ったほうがいいですね」
そう意見した俺は現場の声を聞きながら、新しく工具を引っ張れる工作機械を作り上げた。
この工作機械はライフリングを施すのに特化した機械であるため、用途は限られているが、ないよりはマシだろう。
こうしてライフリングの問題は解決した。
そのまま別の製造ラインのほうに向かい、そこでの問題を次々と解決していく。
日が暮れるまでそれぞれの製造ラインを転々とした。
「ぬわぁぁぁ、疲れたなもー…」
アンデルトから帰ってきた俺は、本庁舎執務室のソファに寝ころんだ。
だが、確かに技術力は向上したはずである。
今後の生産に期待するとしよう。




