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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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47海里目 問題と対話

 レイグル王国を出発してすぐに、連合艦隊はより実戦に近い訓練を行う。

 訓練内容は現在位置より東側にあるクレバイルの一国、クレイル連邦から敵艦隊が襲撃してきたと仮定したものだ。

 まずは昼間の戦闘だ。主に砲撃戦が中心になる。駆逐艦の砲撃はあまりあてにならないような感覚ではあるが、木材を主材料としている帆船相手なら十分に効果的だ。

 敵の砲撃範囲外、かつこちらが十分に狙える距離から攻撃を行う。防衛連盟で愛用されている大砲と同等の性能であると仮定するならば5kmの位置で砲撃するのが最適であるはずだ。

 俺の頭の中にある架空の敵艦隊をもとに、連合艦隊の動きを指示する。単艦だけなら問題ないような動きも、艦隊として動くとうまく行かない所もまだまだあるものだ。これは後々の課題ということになるだろう。

 夜になると、探照灯での近距離砲撃戦だ。5kmよりも近い距離で探照灯を照らした状態での攻撃は、昼間よりも難易度は格段に上がる。

 まだ修正できる箇所があるような感じではあったが、ロード演習作戦開始時よりかはスムーズになっている。これも成長したおかげだろうか。

 そんなことをしている内に、次の目的地であるランスエル公国に到着する。



 ランスエル公国は文字通り貴族が君主とする国家だ。トーラス補佐官曰く、防衛連盟の中でもかなり古い時代の文化を持っている国で、その風習などもで伝統に則っているらしい。防衛連盟加盟国となってはいるが、あくまでも自国の利益を優先にする「偏った中立国」のような立ち振る舞いが見られるため、裏ではいい噂を聞かないようだ。



「…そんなわけだから、今回のロード演習作戦で最後まで訪問の交渉に手こずった国でもある」

「話聞く限り、今まで以上の堅物のような国がよく防衛連盟の一員でいられますね…」

「あの国はそういう国だ。諦めろ」


 そんな感じでランスエル公国の軍港、リヒト港へ入港する。

 いつも通りの入港手続きを終えると、港の外ではいつものように関係者が待っていた。

 だが、いつものとは一つ異なることがある。

 ほかの国では車だったものが、ランスエル公国では馬車だったのだ。古い伝統に則っているってここだったのか…?


「独立統合戦術機動部隊の皆様、よくいらっしゃいました。我々が首都までお送りいたします」


 そう言われ、馬車に乗り込む。

 早速出発するが、これまでの移動と比べて非常に遅い。それに揺れもそこそこに酷い。車に慣れている分、馬車の悪さが際立ってしまう。いや、元の世界に比べたら、この世界の車も随分酷かったりするんだが。

 数時間ほど馬車に揺られると、首都のラインネストに到着する。

 そこにある比較的豪華な装飾を施している屋敷があった。

 中に入ると、その豪華さに拍車がかかる。やがて奥の方に案内されると、一人の男性に出会う。


「殿下。お客様をお連れしました」

「よくぞ来た。私はランスエル公国の君主であるリュシューファンだ」

「初めまして、リュシューファン殿下。私が連合艦隊の司令、海原駆です」


 リュシューファン殿下の第一印象としては、威厳に満ちていて、かつ落ち着いているような感じだ。

 その挨拶が終わると、いつものように事務次官級の会合が行われる。そして、いつものように俺はランスエル公国の国内情勢視察のために、首都近郊の駐屯地を訪問していた。

 部隊は騎馬隊を中心としており、機動力に重心をおいているように見える。これ自体には何ら問題はないだろう。

 こうしてこの日は終了し、俺は指定されたホテルへと戻った。すると、そこでトーラス補佐官に話があると言われる。


「それで、話ってなんなんですか?」

「それはだな…。結論から言うと、今日の会合は明日も行うことになった」

「…ん?どういうことですか?」

「実は今日の会合で条約やら協定やらを全部締結するつもりだったんだが、軍事協定に関しては承認できないと言われてしまってな。明日も協議に入らないといけなくなった」

「…それってそこまで深刻な話ですか?」

「割とな。これまでは各国が防衛連盟の理念のもとに集っていたから、比較的簡単に協定などを結べていたのだがな。ランスエル公国は防衛連盟に消極的であるが故に、交渉がより難しくなっている」

「はぁ」

「この協定は単純に協力を仰ぐだけでなく、連合艦隊制定法に示された以上の協力体制を整えることも視野に入れていた。そうなれば、ランスエル公国側はより消極的な立場にならないといけないだろう」

「それで今日の会合は進まなかったという訳ですか」

「そういうことになる」

「でも、それが俺となんら関係あるとは行かないですよね?」

「それが関係あるんだな。明日はカケル司令も会合に出てほしい」

「ウッソでしょ?」

「本当だ。司令直々に意見をいうならば、公国側も動かざるを得ないだろう」

「希望的観測ぅ…」

「交渉とはこういうものだ。明日は頼むぞ」

「えぇ…」


 そんな感じでよく分からない内に会合に参加させられることになった。

 翌日、最初にきた屋敷にやってきた。その中にある一室が、今回の会合で使われたらしい。そこにトーラス補佐官と他数名と共に入室する。

 内装は豪華なものの、そこに置かれている机などの事務用品はかなりシンプルな印象だ。


「わざわざ連合艦隊の司令官がお越しになるとは、申し訳ないですな」


 まるで嫌味のような発言に、俺は内心ムッとする。

 そんなことは心の中に留めておいて、俺たちは席につく。

 まず最初にトーラス補佐官が切り出す。


「さて、昨日の続きと行きましょうか。ランスエル公国は連合艦隊とは無条件では協定を結べないと言っておりましたな」

「それは昨日も申しましたでしょう。連合艦隊は防衛連盟軍の部隊である以上、防衛連盟の規則に準ずるだけです」

「それは連合艦隊制定法に基づいて指揮権は連合艦隊司令官たるカケル司令に譲渡していると言いましたな?つまりこれは、防衛連盟軍とは異なる武力組織と解釈することもできるでしょうな」

「それはあくまでも解釈の問題でしょう?少なくとも我々にとっては連合艦隊の最終意思決定は防衛連盟本部にあると思われますがね」


 あぁ…。法律の解釈違いでバグが発生しているようなやつだ。かなり面倒なことになっているなぁ…。

 しょうがないな。仲裁とは行かないが介入するか。


「少し、よろしいですか?」

「おや、指揮官直々に発言ですか。なんでしょう?」

「純粋な疑問なんですが、どうしてランスエル公国はそんなに防衛連盟に消極的なんでしょうか?」

「言わなければなりませんかね?簡単なことですよ。我が国の利益を守るためです」

「理由はそれだけですか?それだけではないような気がしますが」

「というと?」

「自国の利益を守るというのなら、消極的である意味がよく分からないということです。それはつまり、クレバイルの脅威があまりないか、守るべき利益が少ないと考えられるんですよ」

「それは面白い考察ですね」

「それは肯定とみなしていいんですか?」

「いえいえ、私は肯定も否定もしていないですよ」


 あぁ、これは面倒な感じになってきたな。どこかで話を切り上げないと永遠にループしそうだ。

 うーん、こうなると方法は限られてくる。少し早いかも知れないが、あの話をするべきだろう。


「一つお聞きしてもよろしいですか?」

「なんでしょう?」

「ランスエル公国は今後についてどのようにお考えでしょうか?」

「…今後とは?」

「すなわち、この戦争が終わった後の話ですよ」


 すると、部屋の中は騒然となった。それは触れてはいけない内容に触れたような感じだ。


「あ、あなたはこの戦争の未来を予測できるというのですかな?」

「いえ、それは不可能です。ですが私の協力がなければ、高確率で防衛連盟は敗走するでしょう」

「それで、司令官は何が言いたいのでしょうか?」

「防衛連盟が敗走したときでも同じことが言えるんです?そんな場合ではないと思いますけどね」

「それはその時でしょう」

「今考えないで、いつ考えるんでしょうか?それに、そうやって負けた時もノラリクラリ交わしていくんですか?」

「…いえいえ、真面目にやっていますよ」

「あなたたちはそう思っているかもしれませんが、残念なことに軽く見積もっても良い方向には流れないでしょう」


 部屋の中は不穏な空気で満ちていた。

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