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俺ゼウスの生まれ変わりなんだけど、無双してたらボッチになった件について  作者: 紅羽 慧(お神)
すねはかじれるだけかじるのが当たり前じゃね?編
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★BL奪還作戦!中編



「えー、こほん。これより、ヘラ討伐大作戦会議を始める。ちなみに、難易度は超絶地獄G級だ。ひと狩り行こうぜ!」


「ひと狩りのレベルじゃなくてマジもんのラスボスだろwww」


「えっ、ヘラさん討伐とか命がいくつあっても足りんやつやん。そこまでの戦いなら、それに見合った報酬なんだろうな?」


「あぁ、もちろんだ任せろ!」


「報酬は何?」


「俺様からの有難い感謝の言葉」


「お話にならないねw。お前とは長い付き合いだが、これで帰らせてもらうわ! じゃあね!」


「おいおい!待てwww。頼む!待ってくれ!!!」



 ゼウスは立ち上がるヘルメスの足を必死に掴んだ。



「ゼウス。お前なら分かると思うが、世の中ってのはな。ここにいるアレスみたいなお人好しばっかじゃないんだぞ。俺は報酬を貰わなきゃ仕事は受けないぜ」


「お前が言うことは最もだ。正直、今の俺にはこの作戦の危険度に見合うだけの報酬は用意出来ねぇ。だが、俺はどうしても大切なものを取り返してぇ。ただ、それだけなんだ」


「さっきから気になってたんだが、何が奪われたんだよ?」



 ヘルメスはゼウスの真剣な眼差しを見ると、再び腰を下ろした。



「それはな、、、アレスからもらった"幻のBL"だ」


「幻のBLだと!?」


「前にちょっと話したことあると思うけど、ゼウス君シリーズのサイン付き激レア本。母ちゃんが喉から手が出るほど欲しがってたやつ」


「ゼウス君シリーズか……なるほどな」



 ヘルメスは事の重大さを一瞬で理解した。



「アレス。お前が最後の切り札と言っていたやつ。それをゼウスにあげて、その挙げ句にヘラさんに取られた。こういうわけか?」


「そうだ」


「はぁ……マジめんどくせぇことになってんな」



 ヘルメスは深く大きなため息を吐いた。



「ヘルメスよ。今の俺には金もねぇ。力もねぇ、名誉もだ」


「知ってる」


「だが、志はある。あのBLサイコパスババアを討伐する! その固い志が!!!」


「志低いなwww」



 気持ちが高揚してきたゼウスは立ち上がると、


「俺はあいつを倒して、世界を救う!」


と、体を広げた。



「壮大だなw」


「無駄に熱いなwww」


「たかがBL、されどBL。今こそ大切な物を死んでも取り返す時!」



 ヘルメスはゼウスの本気に感化され、「仕方ねぇなぁ」と頭をかいた。


「ヘルメス! 協力してくれるのか!?」


「いいだろう! だが、やはり対価はそれなりに払ってもらう!」


「金はない」


「じゃあ体かな」


「いやん」


「そういう意味じゃないwww」


「じゃあ、何だよ?」



 ヘルメスは5秒ほど思案すると

「んー。じゃあ、俺の仕事どっかで手伝え」

と言った。



「えー、肉体労働とかきちぃ」


「じゃあ、この話はなかったことに」


「分かったよマイケル。俺の負けだ」


「お前誰だよwww。へへっ、約束だぞ。じゃあ、本題の作戦会議といきますかな」


「けっ! おいお前ら、何か良い案は思いついたか?」


「うーん」



 三人の間に暫しの沈黙が訪れる。ヘラの恐ろしさを知る彼らはこの作戦が如何に困難を極めるかを充分理解していた。やがて口を最初に開いたのはアレスだった。



「BL奪還というが、方法がマジで思いつかねぇな。それに奪還の計画がバレでもしたらどんなおぞましい報復を受けるか」


「そんなんで怯えてても始まらねぇだろ。あいつは俺がこの手で成敗してやる! おいヘルメス、なんか良い案を考えろ!」


「無茶振りかよw。んー、まず家に忍び込むのは正面からじゃ無理だぞ。あのマンションセキュリティが半端ねぇ」


「そうなのか? つか、あいつマンションなんかに住んでやがったのか??」


「え、なんだゼウス知らなかったのか? すぐそこのクソデカマンションだぞ」


「……ん?」



 ゼウスは予想外の情報に目を丸くした。



「ん?じゃなくて、このアパートの真ん前のマンションだよ。ほら、これこれ」



 ヘルメスは所有空間を玄関前に移動させ、マンションを指差した。



「は? ガチ?」


「うん」


「ぬぅわにぃいいいいっ!!!! あいつ俺んちの前の目障りなマンションに住んでたのかよwwwww」


「ちなみに最上階だぞ」


「は?キレそう。最上階とか、あのブルジョワババアめ、やりやがったなwww。俺様がこんなオンボロアパートに住んでるというのに!」



 ゼウスは苦々しい思いで、高級マンションを睨み付けた。



「ま、入ろうと思えば侵入は出来るんだけどさ、俺ならね。でも、たぶんだけど所有空間から抜けた瞬間に気配で見つかると思うんだよね。ヘラさん恐ろしく勘が良いから」


「それなんよな。あいつクソブスの癖に勘だけは昔から冴えてるからな」


「母ちゃんにバレずに浸入かぁ。セキュリティもあるし、ムズすぎだろ」


「ヘルメスお前、ヘラの家に何度も配達で行ってるんだろ?」


「そうだけど?」


「じゃあ、そのノリで俺とアレスを運んでくれ」


「――えっ、なにその作戦。もしもバれたら俺、確実にヘラさんに殺されるやつじゃん」


「大丈夫大丈夫、来世はきっと良いことあっから!」


「何が大丈夫だwww俺死ぬことになってるやん!ふざけんな!」


「一回死ぬくらいの思いをしたほうが生きてる実感を得られていいかもしれないぞ」


「普通にやだよwww俺は平和に暮らしたいんだ。リスクがでかすぎる!」



 ヘルメスは涙目になると、ちゃぶ台を何度も叩いて抗議した。



「えー、あの天才運び屋のヘルメスさんが運べない物なんかこの世にあったんだー、ふーん。いざって時は大したことないんだなぁっ!!!」


「な、なんだと?! 依頼されれば俺はどんな物でも運ぶぞ!」


「じゃあ俺らを運べんのかこのやろぉ!」


「ヌルゲー過ぎて草」



 ヘルメスは右手の中指と薬指を折り曲げ、ゼウスに掲げて見せた。



「俺らを運ぶのは良いと思うが、あの幻のBLがある場所は知ってんのか?」



 アレスは組んだ両手に顎を乗せながら、確認する。



「いつも本棚へ入れる作業は俺がやってるんだけど、この前行った時には新たに高級BL倉庫が出来てたぞ」


「そこかもな。でも、もしそこで見つけられなかったらどうするんだ?」


「そんなの、とにかく愛と勇気と気合いで乗り切るしかねぇだろ」


「作戦ガバガバ過ぎだろwww。こういうのは上手くいかなかった時のことを考えてB、Cプランを用意しておくのが鉄則だぞ」


「そうだよな」


「お前、子供の癖にやるじゃん」



 ゼウスは指を鳴らすとヘルメスを指差した。



「子供じゃないぞ! なんかすげぇ不安になってきた……ほんとに大丈夫かよ。痛い思いはしたくないぞ! し、死んじゃったりなんかしたら」


「ま、お前は実際大丈夫だろ。なんやかんや今のヘラにとっては最重要人物だからな。死んだらBLの配達が滞るし、この世で一番生を保証されているかもな」


「なるほど! いつも死と隣り合わせだと思ってたけど、逆に俺がピンチの時はヘラさんが助けてくれる可能性が……!?」


「んーでも、ヘラがBL飽きたら即死かな?」


「あまりにも軽すぎる命やん……」



 ヘルメスは顔を真っ青にした。



「俺やヘルメスはともかく、オヤジこそ絶対大丈夫だろ。夫婦だしな」


「まぁ、神の俺だったらやりようはあるが、今生身の人間だからな。少し強めのビンタもらったら確実に逝く気しかしないわ」


「俺まだビンタもらったことないんだけど、実際どうなん?」



 ヘルメスは上目遣い気味に聞いた。



「あいつが本気でビンタしたらどんなやつでも99.9%で即死するぞ」


「ひぇ……残りの0.1%は?」


「苦しんで死ぬ」


「どっちにしろ死ぬのかよ。怖すぎる」


「塵も残らねぇぞ。高密度のエネルギーで分子レベルまで分解されるからな。通常ならどんな防御をしようが触れただけで持ってかれるぞ。つーか、触れる前に来る衝撃波であたり一面消し飛ぶがな」


「怖すぎワラタ」


「んーまぁでも、とりあえず一発食らってみて、いっぺん死んでみんのも経験としていいかもしれねぇぞ?」


「やだよwww何が経験だよ。生き返る前提の話だろそれ! 痛いのも死ぬのも嫌です!」


「いろいろおかしいだろwww。オヤジと母ちゃんの伝説は話がぶっとび過ぎてて、本当か嘘なのか分かんねぇんだよな。本気のビンタなんかされたらもう終わりだな」


「過去に何回かヘラが本気の往復ビンタした時があったんだが、あんときゃ俺様が究極の防御魔法使わなかったら全宇宙が跡形もなく消滅してたところだったんだよなぁ、マジで。これはガチ」


「スケールでかすぎだろ! 何それ、ゼウス英雄じゃん!」


「まぁな、へへっ。実は俺、この世界を何度も救ってんだぜ?」


「ちなみに本気のビンタは何が原因なん?」


「俺の浮気」


「てめえのマッチポンプじゃねぇかwwwwww」


「申し訳ないwww」


「てか、浮気で全宇宙が滅びかけるとかギリシャ神話ぶっ飛び過ぎワロスwww」


「まー、神話だからなー。普通の人間には感じ取れないと思うが、この世界は常に次の瞬間崩壊する可能性を秘めた危うい場所だと思っといたほうがいいぞ」



 ゼウスは鼻くそをホジリながら適当に言った。



「主にお前の浮気のせいでな。このバカ夫婦の仲次第で世界の運命が決まるの意味不明過ぎてキレそう」


「あっ、てめぇバカとか抜かしやがったなぁ!」


「いや、バカでしょw」


「よかろう! ヘラを討伐したら次はお前だ、ヘルメスっ!!!」


「いやなんでやねーんwww」


「はいはい、二人ともそれくらいにして。真面目に作戦考えようぜ」



 2人の不毛なやりとりを見かねたアレスは、間に入ると場を取り仕切った。



「じゃあお前が良い作戦考えろ。我が息子よ」


「んー、やっぱり次のBL配達日に紛れて実行するのが一番自然に近づけると思うな」


「たしかに、それだと違和感ないよな。ヘラさんも新刊に夢中で他に気が回り辛いだろうしな。一番現実的でスタンダードなプランだな」


「うーん。なんかパンチきいてねんだよなぁ?」


「なんだよパンチってwww。そんなんいらねぇだろwww。そもそも命がけの作戦の時点で、パンチききまくってるけどなw」


「いやぁ、やっぱりダイナマイト片手に自爆特攻かけるくらいの勢いで行きたいじゃん」


「一人で勝手にやってろwww」


「ま、いいんだけどさ。とりあえずそのスタンダードプランをベースに行くとして、肝心のBLはどう取り戻すんだよアレス?」


「……いつもって配達だけじゃなくて、その後に本棚へしまう作業もやるんだろ?」



 アレスは少しの時間難しい顔をしながら考え、ヘルメスに質問した。



「うん。そうだよ」


「その時にこの所有空間から出してもらって、3人で手分けして探すしかないんじゃね? もちろんある程度場所の目星はつけとかないとだが。それから……あっ」


「それから、何だよ?」


「今三人でと言ったが、やっぱダメだな。この作戦にはBL倉庫内で探している間、母ちゃんの足止めをする囮役が必要だ」


「囮役か、なるほどな。誰がその役割を担うんだ、息子よ?」


「そこはかなり重要だな。計画がバレた時には間違いなく最初にやられるだろう。まず命はないと思った方がいい」


「……」



 三人の間に緊張が走る。話を具体的にしていけばいくほど、1つのミスが命取りになることを全員が理解していた。



「ほ、他にはないか? 最初から三人で行って、BLにハマってる時に隙を見て一気に探すとか。囮役は安全を見て1人じゃなく2人にするとか?」


「いや、1人で探すよりも2人で探すほうが早い。それに、囮役が1人だろうが1000人だろうが、計画がバレたらどうせ全員終わりだ。死ぬまでの時間が少し早いか遅いかの違いでしかない」


「そっか……じゃあ、誰が?」



 ヘルメスは生唾をゴクリと飲み込むと、アレスとゼウスの顔を交互に見た。



「クソガキよ。とりあえずお前は平和のために犠牲になってくれ」


「は?急になんだよゼウス」



 腕を組みながら目を瞑るゼウスは、静かにかつ厳かにヘルメスへと語りかけた。



「平和というものにはな、犠牲がつきものなんだ。平和とはそういうものだ、分かるだろ?」


「そういう場合もあるかもだけど、犠牲者を無理やり作ろうとすなw」


「いや、俺悟りを開いたわ。この役目はお前にしか出来ない大役だ」


「嘘つけよwww」


「お前がヘラを繋ぎ止め、時間稼ぎをする囮役……つまり、生け贄になれば全て丸く収まるんだよ。そんな気がする」


「こういう意味不明で危険な思い込みから、やばい宗教とか生まれんだろうなwww。そんなこと言わず全員で生き残ろうよぉ!」


「いや、お前の名は英雄として深く墓標に刻み込まれ、永遠に語り継がれるだろう。安心して逝けや」


「お前鬼かwww!」


「お前の伝説は俺が語り継いでやるって言ってんだよ。だから、安らかに眠れよ」


「いやいや、最低すぎんw?」


「いいから世界平和のために死ねよ!」


「直球すぎるwww。もはや主人公が使っちゃいけないセリフだろw。それに、世界平和を語るやつが死を強要すな!」


「お前1人が犠牲になることで救われる命もあるんだぞ」


「俺は救われてないんですがそれは? 誰かの犠牲の上にしか立てられない平和なんて、真の平和と言えるのかねゼウス君!」


「この際だ。俺さえ無事ならそれでいいんだよ!」


「それが本音かw。自己中過ぎるだろwww」


「大丈夫、何も心配する必要はない。ビンタは即死だから痛くないよ」


「いや、やだよw。死にたくないよ!」


「尊い犠牲だがすまない……ヘルメス、お前のこと俺、忘れない」


「死亡フラグやめてwww。お前俺をどうしても殺したいのかよ。分かった! もう協力しない!」


「あっあっ、冗談すよ~いやぁ! 君と僕の仲じゃないか~w」


「調子良すぎるだろ! とにかく俺は絶対やだぞ! なんならゼウスが一人で乗り込めよもう」


「は?! お前、俺を単騎で死地に赴かせる気か!? 特攻隊じゃねぇんだぞこらwww!」


「俺が行くよりよっぽど可能性あるだろ! お小遣いくれとか適当な理由つけて行けば不審がられないし、ヘラさんおだててご機嫌を取ればBLを返してもらえるかもしれないぞ?」


「は? なんで俺様がババ活しなきゃいけねぇんだよwww!」


「ババ活は流石にワロタwwwパパ活みたいに言うなwww」


「……はぁ」


 二人の不毛なやりとりを見ていたアレスは、小さなため息を吐いた。



「この二人にゃ任せらんねぇな。仕方ない、、、囮役は俺がやるわ」


「アレス……お前」


「正気か!?」


「あぁ。ヘルメスは宝物庫に入ったことがある。となれば、探索係筆頭だ。後は俺かオヤジが囮役だが、オヤジが表に出てくると勘づかれるかもしれん。それにイレギュラー過ぎて話がややこしくなりそうだ」


「た、たしかに」


「それに俺にはまだこれがある!」



 アレスはどや顔で待ってましたとばかりに、カバンから一冊の本を取り出した。



「それは一体?」


「これはちょこみる先生のサインと月末イベントの握手会参加券セットだ。これを献上すると言えば、母ちゃんの機嫌も良くなり、多少は足止め出来るはずだ」


「お前、まだそんな隠し球を持ってたのか!?」


「親父、取って置きがひとつとは限らないんだぜ」


「息子よ、、、父は嬉しいぞ」


「へっ。これは幻のBLとまではいかないかもしれんが、かなりのレア物なんだ。いや、もしかしたら幻のBLを上回るかも? とにかくこれを献上すると言えば、緊急事態は回避出来ると思う」


「まさに切り札だな。でも、そんな大事な物をかけていいのか?」


「いいんだ。あの幻のBLは俺も思い入れがある。店長との思い出、そして親父との約束の品だ。俺もあれを取り戻したい」


「お、お前……」



 ゼウスは息子の言葉に目頭が熱くなる。



「親子愛で感動してるところ悪いが、話をまとめるぞ。」








続きは執筆中

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