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俺ゼウスの生まれ変わりなんだけど、無双してたらボッチになった件について  作者: 紅羽 慧(お神)
すねはかじれるだけかじるのが当たり前じゃね?編
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★この世で一番危険な仕事①

「良い天気だ……空が眩しいぜ。ふぅ。ついに来てしまったか、、、この時が」



――――俺の名前はヘルメス。類まれなる美貌と才智に溢れた、オリュンポス12神の一人だ。伝記では伝令の神と言われているが、正確には『運び屋』だ。


 犬の糞からダークマターまで、ありとあらゆるものが俺の運搬対象だ。そう、俺に運べないものなどこの世にはない、へへっ。


 だが、なんでも運べるということは裏を返せば危険な物も運ばなくてはならないことになる。

 今日はついに来てしまった『D-day』。世界平和を守るためとはいえ、少しでも粗相(そそう)をすればまず命はないと考えていい。運び屋というのは、かくも危険なお仕事なのだ。



 俺は額からにじみ出る油汗を手の甲で拭うと、秋葉原近郊にそびえ立つ高級マンションを見上げた。



「でかいマンションだなぁ。向かいのボロアパートとは雲泥の差だ」



 見るからに金持ちが住みそうな高級な外観に見とれつつ、向かいにあるすぐにもつぶれそうなボロいアパートで現実に引き戻される。



「よし、いくか。オリュンポスの名のもとに、現身(うつしみ)よ彼方へ。インビシブル!」



 この魔法は姿を消すだけではなく、集中すれば壁をも通り抜けることもできる。スケベなこともし放題だ。そんなことはしないがな!



 俺は監視カメラやセキュリティをかいくぐりながら、目的の場所――最上階36階へと向かった。




………………




 くそ、手の震えが止まらねぇぜ。遺書も書いてきた。エッチなグッズも処分してきたし、いつ死んでも大丈夫なはずなのに。



「はぁ、はぁっ、やばいクスリを運ぶときよりも緊張するな。よしっ!」



 意を決した俺は懐から大量の本、計300冊を放出し玄関の前にきれいに並べた。


 いよいよだな。張り裂けそうな心臓の鼓動に耐えながら、インターホンを押してみた。



「おそおおおおおおおおおおおおおおおおおぃぃっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「うわぁっ!!!!!??」



 インターホンを押した直後に勢いよく扉が開けられ、真っ赤な顔をした御仁(ごじん)が姿を現した――我らの女神ヘラ様である。



挿絵(By みてみん)



「お、お疲れ様です」


「疲れてねーよ!」


「えぇっ!? あっ、今日もご機嫌麗しゅう」


「うるさいんじゃぼけっ!!!!」



 俺が挨拶をしようと試みると、即座に彼女の超音波でかき消された。



「御託はいいから、早く! 早く中にアタシの大事なBLを運びなさいよ! もう、待ちきれなさすぎてドロップキックかまそうかと思ったわ」


「ご、ごめんなさい」


「無駄口をたたく暇があったら、きびきび動きなさいよ! 命が惜しければね?」


「しょ、承知いたしました」


「ふざけんじゃないわよほんと使えないわね! はーつっかえ!」


「も、申し訳ございません」


「あっ、万が一アタシのBL本に傷1つでもつけたら、灼熱に熱した油鍋の中で煮てやるからね?」


「こわすぎしんどい……もうマヂ無理」


「何か言った?」


「何でもないですぅ!」



 俺は彼女に散々脅されながら、急いでBL本を家の中へと運び入れた。


 運び屋とはかくも大変なお仕事なのだ……。




………………



「デュフフゥェヒヒヒしゅごぉぃぇいい」



 俺が黙々と作業をしている横で、ヘラさんはベッドでBLを読みながら気持ちの悪い声を出していた。見慣れた光景だが。



「それにしてもすごい量だなぁ。図書室ですねもはや」



 梱包を一つずつ丁寧にほどきながら、移動式本棚にBL本を隙間なく詰めていく。なんやかんや、新品の本を綺麗に敷き詰めていくのは、ちょっと楽しかったりする。本ていいよね。



「あーーっ! なんでそれ全部そこにしまってんのよ!」


「うわっびっくりした!? えっ、ダメでしたか?」


「ダメに決まってんでしょ! 本棚へは2冊! 残りの4冊は別の場所でしょー? 当り前よね?」


「いやいや今初めて聞きましたよ! えっ、何これ。なんで同じ本が6冊もあるんだよwww」



 本棚にしまうのに夢中で気づかなかったが、なんと全く同じ本が6冊もあるのだ。



「えっ、同じだよな? 表紙もタイトルも同じ、だよな? もしかしてアレスが間違って発注した?」


「いや、違う違う。アタシが6冊買ってって言ったの」


「えっ、何で?」


「何でって、馬鹿ね~そんなの読む用、飾る用、布教用、書き込み用、保存用と万が一のための計6冊よ」


「何それ無駄すぎ吹いたwwwww」


「――――――は?」



 一瞬、素で馬鹿にしてしまったことに気づかれると、ヘラさんは鬼の形相で睨んできた。



「えっ、いやその」


「えっ、いやっちょっと待って、あんた今ひょっとして、もしかして、もしかするとアタシのことバカにしたん??」


「いや、これはそのですね、、、てへwみたいな?」


「てんめぇっこのやろぉなめてんじゃねぇぞクソガキャア!!!!! 臓物引き裂いて豚の餌にしてやろうかぁぁあああんっ!!!!!!」


(こわすぎちびるわwww)


「おわびとして、あっちのBL倉庫の整理もやって」


「えぇっ! やですよそんなん、僕の仕事じゃないです。僕はヘラさんの奴隷じゃないんですよ!」


「そういうのは奴隷のように働いてから言いな!」


「むちゃくちゃすぎるwww」


「あとアンタ、今アタシに口答えしたから次の配送料タダね」


「え?」


「えっ、じゃないわよ。当然でしょ?」


「こ、困りますよいくらなんでも! さすがにそれは、どんだけ手間と時間がかかると思って――――」

「ああんんん?????????」


「ただでいいです」


「当然よね」


(もぉーめちゃくちゃや。たまらねぇぜ)



 この後もことあるごとに脅され、なぶられ奴隷のようにこき使われた後に、やっと解放されたのは深夜3時頃である。



 運び屋とはかくも大変なお仕事なのだ……。




………………


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