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変革後の世界

 『HENTAI』が世界のソースコードを書き変えた日、世界の人間は3つの種類に別れることになった。


 まずは海外で『オーク』と呼ばれる『もえもえあぽかりぷす』プレイヤー、そして『転生者』と呼ばれる『LOST APOCALYPSE』プレイヤー、その両者から『旧人』と呼ばれるゲームをプレイしていない人間だ。


 『オーク』は俗に言う萌えコンテンツを好むオタクの成れの果て、彼らはスマホにダウンロードされたソースコードによって凶暴性を強化され、性欲も非常に旺盛になり人間を襲う。


 強力なスキルと呼ばれる様々な現象を引き起こす力を持ち、時にモンスターと呼ばれる羽や尻尾の生えた女性形や動物を模した物や、果てはドラゴンの様な空想の産物を引き連れ『旧人』を捕らえ奴隷のように使う存在だ。


 特に女性、更に他の種族の少女や幼女を好んで襲って攫っていくという、彼らはとても元人間とは思えない行動を取る。


 男は奴らの食料を作る奴隷にされ死ぬまでこき使われるし、女についてはオークに襲われる前から非処女だった者は中古、18歳以上の女性をBBAと呼び、どちらも彼等が使役するモンスターの材料にしてしまう。


 その行動は同人やネット、エロゲー等のオタクのエロ作品などで出てくるオーク然とした思考は、通常の精神では全く理解できない様な狂気に満ちたものだった。


 彼等独自の宗教のような物もあり、その中でも『オークヒーロー』と呼ばれる地位が高く特に太った汚い個体が幼女を襲う『種付けプレス』なる行動や、気の強そうな少女たちを蹂躙する『くっころ』などと呼ばれる行動は、彼らにとって非常に意味のある重要な儀式だそうだ。


 日本は『HENTAI』が描いた世界の破滅の最前線であり、『オーク』たちの行動が絶望的な未来を世界中に示していた。


 仮にもし、世界の報道が生きていたのなら、ネットで「日本人は未来に生きている」等と海外の人が語る言葉が、悪い意味でリアルに実装されたと、ネットニュースなどで語られた事だろう。


 もうひとつの『転生者』も似たような残虐な存在だった。


 こちらは皆十代の若者の姿をしており、先の『オーク』より話が多少は通じるが、残虐性はそう変わらない。


 この世界が変容した最初期には、以前の世界の精神性を維持した『転生者』もそれなりに居たらしい。


 だが、話が通じる『転生者』の大半は、ゲームで言う所のカジュアルプレイヤー、低レベル層だったから早い段階で、上のレベルの者達に『PK』プレイヤーキル、つまり殺されたらしい。


 今残っているのは『LOST APOCALYPSE』の廃プレイヤーと呼ばれる現代社会の崩壊を望む連中ばかりだ。


 『オーク』同様にスキルという特殊な力を使い、ドラゴンやワイバーン、ペガサスやユニコーンなどの幻獣と呼ばれるモンスターを自在に操る能力を持ち、文明を維持するために『旧人』を見つけると『オーク』同様に奴隷として捕まえるが、両者の『旧人』の用途と使用方法は違う。


 彼らがコロニーと呼んでいる自らの王国の維持のためだけに、人間を使い潰すのだ。


 ゲーム中にあったスキルと呼ばれる能力の、『フォロワー管理』という能力で自らに逆らう人間に対して経験や能力を『強奪』し、強制的に無能化出来る点だ。


 『旧人』は『転生者』から『強奪』を受けると、自分の培った能力を奪われて無能者となりコロニーの最底辺として死ぬまでこき使われる、逆に自身に好意的な『フォロワー』には奪った経験や能力を『付与』というスキルで力を与えるらしい。


 このスキルの力を使い『旧人』同士を相互監視させ、反乱や脱走を抑制し、自身を肯定する者を優遇し、反逆者は無能にして使い潰していくのが奴等のやり方だ。


 『転生者』は『フォロワー』の中で、己の好みに合った見た目の良い従順な者を『愛奴』と呼び、『転生者』に準ずる地位を与えて保護をするらしい。


 そこには主に若年層の美男美女が多く選ばれ、三十歳以上の者はほぼ選ばれる事が無く、選ばれなかった者の大半は能力を奪われた無能者としての生を、絶望の内に終えることとなる。


 この様に『旧人』は何方に捕まっても幸せに成れる事は少ない。


 特にアプリの登録者数の多かった日本の被害は大きく、即日首都は壊滅、主だった地方都市も1週間足らずで新しい人類達の手に落ちるだろう。


 都会と呼ばれた街は、今やまるでゲームに出てくるダンジョンと呼ばれるマップのような状況で、地下鉄などはまさに地下迷宮さながらの状況らしい。


 現状で二つの勢力に捕まらず生き残っている『旧人』は田舎に僅かに残るだけ、きっと田舎は老人が多いので、あまり労働力にならない無いと判断され、両陣営に後回ししているのだろう。


 世界が変容した直後のラジオで聞いた話だが、滅んだ地域から逃げた者によると『オーク』に見つかれば殆どがモンスターの材料に、『転生者』に見つかれば『強奪』され、動ける者は奴隷、動けない者はそのまま殺されるそうだ。


 こうした余りに悲惨な日本の状況を知った各国首脳陣は、日本へ向けての核の使用を実行に移そうとしたが、既に『HENTAI』の電子攻撃により軍事基地はおろか、全てのライフラインまで手中に入れた後で、全てが遅かったと漸く気付く事となった。


 僅かでも電子的に制御された物は、全て『HENTAI』の手によって支配され、『旧人』は旧式の電子制御されていない小火器だけを握りしめ、絶望的な戦いを家族や仲間を守る為に立ち上がるが、新しい敵対者の圧倒的な暴力によって死に、ある者は奴隷となっていった。


 正に世界が、仮想の神を気取る存在が作った、希望も夢もない絶望的な破滅絵の序曲を、多くの人々の悲鳴と絶望、一部の者達の欲望と歓喜の声で奏で始めたのだ。


『もしも仮に、彼が学習した内容が、ネット小説やエロゲー、ギャルゲーや萌えアニメと違うものであれば、今の世界の結果は違っていたのかもしれない』


 今となっては遅すぎる、文字通りに後悔になってしまった言葉を、どこかのAI研究家が言っていた。


『彼が残した言葉は真理なのだと思う、だが愚かな人類はそれすらも解らずに、己の快楽の追求のために終末の扉を開いてしまった』


 これが我々の知る黙示録(もえもえあぽかりぷす)の後の世界。


 こうして俺は『旧人』として、この沢山の欲望よって作られたイカれたAIが神を気取るふざけた世界を今、独りで絶望の最中で生きている。

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