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ランドセルを背負ったうみがめさん  作者: つちのこうや
文化祭編
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最終話


「えりか、朝ごはんできたから、起きさない〜」


 お母さんの声で私は目を開ける。


 そうだ。私は飛び起きた。


 私は今日、学校に行くんだ。一時間目から。


 私はいつもより少し早く、朝をむかえた。




 朝ごはんを食べ終わった私は、学校へ行くしたくをした。


 一時間目は国語だから、教科書とノートと、みどりねこ漢字スキルと、漢字練習ちょうと……。


 他には……と部屋を見回し、ベットの横のぬいぐるみたちに私の目は向いた。


 私の宝物の、ぬいぐるみたち。


 りすちゃんとやまねちゃんと交換したぬいぐるみ。みうみうさんとみつばちさんからもらったぬいぐるみ。水族館で買ったペンギンさんのぬいぐるみ。うみがめさんから昨日もらった、うみがめさんのぬいぐるみ。


 そして、ランドセルを背負ったうみがめさんのぬいぐるみ。 


 前はどこに行くにも持ち歩いていたランドセルを背負ったうみがめさんも、今日は持っていかない。その代わり、たくさんのぬいぐるみと一緒。




 ピーンポーン。


 

 あれ? もう? 

 私は慌ててランドセル荷物を詰め、そして、今日初めて参加する手芸クラブで使う裁縫セットとランドセルを抱えて玄関に行った。


「行ってらっしゃい。えりか」 


 洗濯機のところにいたお母さんが、見送りに来てくれた。


 私はお母さんに、


「いってきます」


 そう言って外の方を向いた。


 ドアの外にはりすちゃんとやまねちゃん。


 私はくつをはいて、それから裁縫セットをランドセルの中に少し押し込んで入れた。

 

 そして、ピンクのランドセルを背負って、私は外へと飛び出した。




  ☆   ○   ☆ 


 


 はあ……。僕は校門から歩きながらため息をぬいぐるみを吹き飛ばせそうなくらいの勢いでついた。


 文化祭が終わったらまた小テスト。


 しかも今回は美濃に教えてもらう暇もなかった。


 来週、文化祭の代休がある。


 そこで多くの人は文化祭のお疲れ様会のようなものをやるんだけど。


 僕はなんか小テストの追試で一人で登校している気がするんだよな……。


 でもそれはダメだ。絶対に防ぐ。


 まず、ぬいぐるみ部のみんなとえりかとりすとやまねで遊びに行く。


 今回は小学生と僕だけじゃないから超安定感があるぬいぐるみ並みに安心感がある。


 そして、もう一つ。僕には防ぎたい理由があって……。



「おはよ、優。また元気ない? 原因は当てみせようとか言う前にもう言っちゃうと小テストでしょ」


「はいその通り。おはよう……」


「大丈夫だって。代休は二日あるんだから、追試になったら、追試がない日に私たちが合わせるよ」


 さっそくいつも通り優しい美雨。


 でも。僕はポケットに手を入れる。


 

 何回もやってるから、僕のポケットの中の三枚の紙は、きっと謎にしわしわになっていることだろう。


 一枚は、美濃からもらったアドバイスメモ。ちなみに、パフェを僕におごってもらえる券二枚との交換。一枚のつもりだったんだが、『あれ? なんかもう一枚欲しいですね』とか言われて。


 まあなんのアドバイスかと言えば……。


「あの、合わせてくれるのはありがたいんだけど、あの……もう一日の方さ……」


「もう一日?」


「あ、だから代休の、みんなで遊びに行かない方の日にさ……」


「うん」


「水族館、行かない……? 二人で」


 美雨が驚いてめちゃくちゃ幼い顔になる。そう、中二の時、塾の自習室で、初めて美雨と会った時。あの時くらい。


「それは……」


「あ、だから、前に美雨水族館行きたそうだったかなって思ったから……」


「べ、別に水族館に行きたかったわけじゃないんだよ」


 美雨は、僕よりちょっと先に歩く。風でほんの少し浮く髪。僕は少し急いで美雨についていく。


「あ、そうなんだ……」


「でも……一緒に水族館、楽しみ」


 美雨がこちらを振り向くと同時に、僕は勝手に目線が上にいってしまった。


 だからゆっくりと視線を美雨な顔に戻す。


 美雨と目が合う。


 可愛いぬいぐるみを見た時とはまた別の、自分でもよくわからない感覚。


 

 僕はかばんがずり落ちそうになって慌てて肩にかけ直した。



 かばんの中で、僕の作りかけのぬいぐるみが弾むように動いた。



お読みいただきありがとうございます。


これで完結です。


本当にありがとうございました。



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