後夜祭で手を繋ぐ
結局、ぬいぐるみ部は十二位だった。
あれだけ最後に伸びても、一桁順位とはいかなかった。
まあ他の年代層の票が少なかったので仕方ない。
今年も一位をとったステージを盛り上げる会は講堂のステージでうほうほしはじめて、未だ盛り上がりが収まりそうにない。
というかステージを盛り上げる会は後夜祭でもメインに近いのだが。疲れないのかな。
そして生徒はその盛り上がりを維持したまま、校庭へと移動する。
後夜祭用の超でかいステージが中央にあり、光り輝いている。
すげえななんか、本当にこれで最後って感じだ。
「自分は帰る」
「おお。三日間お疲れ様」
稲城はあんまり感動してなさそうで、校門の方向に歩き始めた。
残ったのは美雨と美濃と僕。
だと思ったら、美濃がいつの間にかいない。さっきまで美雨と何やら色々話していたのに。僕は何話してたかはよく聞こえなかったけど。
もしや人が消えていくのかな、怖すぎる。
美雨が緊張した様子で僕を見た。
だよな。なんか怖いな。稲城の消え方は全く怖くなかったけど。
美雨が手を握って来た。そうだな。怖いな。
いよいよ後夜祭が始まるということでステージに当たる光量が増した時、僕は光に当たる美雨の横顔を見た。
美雨の顔の形がよくわかる角度から光が当たっていて、綺麗だ。
美雨の頰は赤く、そこから芸術的にグラデーションになって全体は桃色になっていた。
今気づいたが、美雨は全然怖がってない。
この時僕はなぜか空気が読める人になり、なぜ美濃がいなくなったか、そして美雨がなぜ手を握ってきたかが、なんとなく、綿をつかむ程度にはわかった。
だからこそ、後夜祭が始まってステージが騒がしくなっても、僕の意識は、薄暗い中繋がれている僕と美雨の手に集まったままだった。




