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ランドセルを背負ったうみがめさん  作者: つちのこうや
文化祭編
70/73

ぬいぐるみ部の運命は、小学生以下の女の子にかかっている


「はあー、長い結果発表だね」


 途中で一度挟まれる休憩の時、美雨が言った。身体を伸ばして服が伸び、大きいことが自明になる美雨の胸。


 隣で見ると近いからなんか、おおっ、って感じだな。


 現段階で発表されたのは、審査とアンケート。残念ながら審査とアンケートもぬいぐるみ部が入ることはなかった。


 呼ばれた団体が順々に大々的に表彰されて、そこで入賞団体が色々話したりパフォーマンスをしたりする。


 審査金賞の演劇部なんて、オリジナルミニ公演をそこで始めちゃうしな。そんなことするから時間がかかるんだよな。すごく面白かったけど。


 というかあのオリジナル公演を見れば、美香の小説が原作という以前に、演劇部の実力が高いということがわかった。




 とにかく、あとは得票数だ。これは何がすごいかと言えば、全ての団体に緊迫が走る。


 得票数は、三位までしか表彰はされないが、審査やアンケートと違って、一位から最下位までわかるので、自分たちの部活が何位かが気になるのだ。それに、この順位は、来年の予算にも影響する。


 ぬいぐるみ部は二十位以内であってほしい。まず全校生徒に存在を知ってもらいたい。そして誰か、ぬいぐるみ部を継いでくれる人が入ってくれれば、ぬいぐるみ部は存続する。


 二十位以内ならまあまあの人が、へえこんな部活あるのか、くらいにはなるだろう。


 本当はアンケートで入賞して、ぬいぐるみ部弱小部活卒業が目標だったんだけど。





『休憩おしまいです。席についてくださいー』


 マイクを通した美濃の声がした。


 あっという間にみんな席に戻る。


『ではでは、文化祭の得票数を発表そろそろしたいなと思いますので、あ、えっと、なんて読むんだっけ、あ、ごめんなさい……笹原さんお願いします』


 笹原は読めると思うのだが……。メモかなんかしててそれが汚かったのかな。


『統計をまとめる会の投票担当の笹原です。では今年はスクリーンで性別年代別に発表していきたいと思います!』


 その言葉にみんながおおおお、と反応する。


『スクリーンを見てください。それぞれの部活が三列に横に並んでいます。ここから、ここに性別、年代ごとに得票数を出していきます。得票数に比例して棒グラフが伸びるので、みなさん注目で! じゃあまずは六十歳以上男性!』


 笹原さんがそういうと同時に、深緑の棒が生えて来た。


 現段階の一位は……演劇部か。普通だな。


 しかし、よく見ると普通ではない。


 何個か、知らない部活が現時点で上位だ。


 歴史研究部、盆栽を愛する会……こんなのあったんだな。


 ちなみにぬいぐるみ部は……なんか少し生えたかな? コケくらいだろうか。



 いやしかし、ここからだ。



 それから、六十歳以上女性、三十から六十歳男性女性……と続き、男子高校生、女子高生、男子中学生、女子中学生、まで終わった。


 ここからが勝負だ。ぬいぐるみ部にとってはな。しかし……。


 現段階でぬいぐるみ部は逆に少ない側で目立っている。というか薄いハムやレタスを重ねたみたいになっている。


 ステージを盛り上げる会とかはカラフルな棒が高々と積み上がっているのに。


『では、小学生以下男子!』


 ぬいぐるみ部は微動だにしない。


 周りは盛り上がりがすごい。


 科学部や生物部といった理科系の部活、未確認生物同好会、そしてサッカー部が一気に上位に躍り出たからだろう。


 

 盛り上がりが収まってきた。


 僕は目をつぶった。


 ぬいぐるみ部の運命は、小学生以下の女の子に、かかっている。




『では、小学生以下女子!』


 それぞれの部活から、ピンク色の棒が伸びた。しばらくして、その伸びが止まった。


だが、二つだけ、未だに伸び続けている棒があった。


 アニメ研究会。



 そして、ぬいぐるみ部だった。



 おおおおお! 


 

 周りはぽかんとした感じで、盛り上がってはいなかった。まあどっちも知らない人が多いだろうからな。


 しかし、誰もがその二つの棒に注目していただろう。


 そして、アニメ研究会の棒が止まった後も、ぬいぐるみ部の棒は伸び続けていた。

 

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