表彰式前
三日間の終わりにふさわしいような穏やかなBGMの中帰っていくお客さん。
その様子を、僕は陶芸室から眺めていた。
えりかとりすとやまねは、大成功で終わることができた最後の公演の後、お母さんたちと一緒に帰った。文化祭のあちこちでもらった景品やパンフレットや部誌がなくなり、舞台裏は空間が大分空いてしまった。
あとは、表彰式と後夜祭。
ここからは、僕は何も関わってないので、完全にお客さんだ。
「ひょーい。あとは楽しむ側ですね! 後夜祭の放送部のシフトなしにしてもらったんです! せっかくなので楽しみましょう!」
「そうだね!」
美濃と美雨のテンションは、圧縮されたぬいぐるみが膨らむ感じに変化している。
「自分は表彰式が終わったら帰るつもりだ」
それと対照的に、何も変わってない稲城は立ち上がってカバンを持った。
稲城は確かに後夜祭とか興味なさそうかな。
僕と美雨と美濃も、荷物をまとめ、そして僕たちは講堂へと向かう。
講堂の様子は、開会式の時と見た目はあまり変わらないのに雰囲気が違った。
かなりの人数がやり遂げたような顔をしているように見える気がした。
「ちなみに、今日は得票数の更新はないぞ。つまりここでの発表を聞いて初めてわかるようになってるわけだな」
稲城が教えてくれた。
まあ、ぬいぐるみ部は結局革命的なことも起こらなかったし、特に何も起こらないだろう。つまりは良くて真ん中ちょい上。
審査も、アンケートも自信がない。だから気にせず、盛り上がる雰囲気に乗って、拍手する側になろうと思う。
という前置きはいいか。
とにかく、人がどんどん増えていく。開会式式よりも人が多い。準備が終わってない人は開会式はサボる人が多いけど、表彰式はみんな来るもんな。パソコンでまた何か難しそうなことをしている稲城は帰りたそうな雰囲気だけど。
美濃は後夜祭の当番がない代わりに表彰式では忙しいらしく、早速席を離れて、もう多分終わりまで仕事だろう。
『ただいまより、表彰式を始めます。まずは結果発表です』
アナウンスがざわざわとした話し声よりも大きく響いた。
そして、審査委員長と、統計をまとめる会の会長と思われる人が出て来た。
ここから、一つ一つ入賞団体を呼んでいく、結果発表の始まりだ。
お読みいただきありがとうございます。
これで69部分目ですが、おそらく73部分目くらいで最終話になります。




