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ランドセルを背負ったうみがめさん  作者: つちのこうや
文化祭編
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三日目の始まりと格差


「ところで羽有、渚ヶ丘の文化祭のHP見たか?」


 文化祭仕様の校門もその周りの雰囲気も今日で最後だというのに、外を見ることもせず、稲城はパソコンの画面に向かって言った。


「ああ、文化祭前日には見たけどそれ以降は見てないな」


「そうか……見ればわかるがな、文化祭一日目二日目で人気だった部活の特集ページを作っている。つまりどういうことかというと、人気団体とそうでない団体の格差が広がるということだ」


「……ぬいぐるみ部はそこには……」


「ない。当然だが」


「だよなやっぱり。真ん中くらいなんだもんな」


 僕は自分のスマホからHPにアクセスして見る。


「稲城作ったゲームがあるパソコン研究部もあるじゃん。あ、美濃のいる放送部もある」


「そうだな」


「あとそれと、演劇部……」


「……」


「あ……」


 演劇部の紹介には、脚本の書いた人の名前も書いてあって、「山桜学園演劇部、海瀬美香」と、書いてあった。


「そうか……演劇部は山桜学園の美香が書いた脚本を使っているのか」



 気がつけば稲城はパソコンに集中していた。僕も縫っている時はそうなるから気持ちがよくわかる。


 僕はぬいぐるみを並べ直したりして、美雨と美濃が来るまで待った。




「今日は最終日。頑張るよ優!」


「今一瞬、余裕に聞こえた」


「くだらな」


 八時ごろに来た美雨はいつも通りだった。明るい美雨を見ると、ほっとするし、気がつけば、見つめ続けてしまう。


『今日は最終日です。最後まで楽しんで、楽しませましょう。後夜祭も楽しみですねー。あ、それと明日の片付けも頑張りましょう』


 美濃もいつも通りだな。美濃は放送部で放送劇とかもやってるみたいだし、聞きに行きたかった。


 まあ、弱小部活はずっと自分の団体に張り付くという使命があるので仕方ない。


 逆に放送部もぬいぐるみ部も頑張ってる美濃を大いに尊敬しないとだな。





 やがて美濃もぬいぐるみ部に来てくれ、


「最終日も張り切るー!」


「みんなにたくさん楽しんで欲しいよー」


「私頑張るよ。いろんなこと」


 三人も疲れてると思うのに、元気いっぱいな感じで来てくれた。


 えりかはしっかりとした眼差しで、僕をそして、ぬいぐるみ部のみんなを見た。




 三日目。最終日でかつ、例年一番来場者数が多い日。


 だいぶ出来上がって来たように見えるぬいぐるみでもまだ完成までは遠いように、まだ文化祭も終わりまでは長い。


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