ミニデートでしたか?
陶芸室へ帰る途中、荷物を取るために、僕と美雨は音楽室楽器置き場裏に寄ることにした。
音楽室ではちょうど音楽部の人たちが一息ついているところだった。
「あ、羽有くんに美雨ちゃん、お疲れ様」
三里さんが僕たちに声をかける。
「音楽部、すごい人気っぽいですね。やっぱり流石です」
「え、いやまあ結構きてくれたんだけど。例年より少し少ないかもしれないね」
え……僕は人気部活と弱小部活の格差にショックを受ける。
通りすがった生徒が体育館の客席がほぼ満杯って話してたのが聞こえたんですけど……。こっちは陶芸室の半分も満杯にならないのに。
「やっぱり、私の責任かな。例年より人が少ないのは、例年、地区大会で銀賞以上とってるのに今年は、銅賞だったし、私って、リーダーシップないし、中途半端だし……友達と仲直りすらできない人間だからね」
「いや、三里さんなんでそんないきなり自信無くしてるみたいな感じになってるんですか?」
「あ、いや……なんでもないよ。ポジティブが大事だよね」
三里さんは来場者で賑わっている外を見てうんとうなずないた。
「思ったよりも遅かったですね! もしかして美雨とミニデートでしたか?」
帰るなり、すでに戻っていた美濃に僕は突っ込まれた。
「違うって、音楽室楽器置き場裏寄ってたりしたし」
まあビーチバレー同好会あたりでも少し時間使ったりしたけど。
「それで……お客さんは……?」
「かなりいっぱいです!」
「え、うそ?」
「ほんとです、ほんとなんですけど……」
美濃の口調が微妙にほつれた糸みたいな感じになっている理由は、待機列に行って見るとわかった。
「あ、羽有くん〜」
「うゆゆだー!」
「ぬいぐるみげきー!」
そのほか僕を呼ぶ声などなど。
梨田さんと、児童館で見てくれている小一小二の子達だった。それで二十人くらい稼いでいて、そのほかに二十人くらい。それで合わせて約四十人。
知りあいとかではなくて、五十人くらいを目標としていた僕としては、少し残念。でも。今回も同じ。僕たちの全力のぬいぐるみ劇をやる。
えりか、りす、やまねは準備順調かな? と思って舞台裏に行くと、
「二回目も頑張るよ〜」
「いつも一緒に見ている人に見られるってちょっと特別な感じー!」
「さらに気持ちを込めてやりたいよ」
三人はやる気満々だった。そう。音楽部の何分の一かは知らないけど、ちゃんと見にきてくれている人がいるんだ。
ぬいぐるみの可愛さ、そして魅力を、お客さんの頭の中でぬいぐるみが自由奔放に動くイメージがしばらく続いてしまうくらい伝えよう。
そう僕は決心してから、二回目のぬいぐるみ劇に臨んだ。
お読みいただきありがとうございます。
本作にも登場する、お子様ランチを極めている田植を主人公とした物語をスタートさせてみました。
タイトルは、『お子様ランチを作ると、彼女(幼馴染)と妹と後輩と小学生がおいしいって言ってくれるので僕は満足』です。
https://book1.adouzi.eu.org/n5649fu/




