掃除しよう!
僕と美雨が学校についた時、三時間目が始まる少し前くらいだった。途中、美雨と並んで電車に座った。
教室の前に来ると、縄張り争いしている謎の哺乳類たちの鳴き声かと思うほど教室が騒がしかった。
「これは」
「……自習だね」
そう、この騒がしすぎる儀式は間違いなく、自習が決定した直後の教室で行われるものだ。
しかも儀式は中盤から終盤とみた。
教室の中をのぞくと、予想通り、人はすでに減っていた。中庭でバトミントンする人たちや、校舎内各地で昼寝をする人たち、オセロトーナメントを始める人たち……色んな場所で、色んなことをする人がいる。
美濃と稲城もいなかった。
「図書室にいるかな……」
僕と美雨は図書室へ向かうことにした。
しかし、途中の渡り廊下で。
「美雨、あそこ」
「あ……開いてる」
窓が開いていた。音楽室楽器置き場裏のところの窓だ。
「美濃も稲城も、ここにいたのか」
音楽室楽器置き場につくと、美濃と稲城が床に座っていた。稲城はいつも通りパソコン、そして美濃はぬいぐるみを作っていた。
「つばき……ごめんなさい。最悪なこと言って」
美雨は美濃を見るなり、美濃の前に座って謝った。
「ええええ? え? あ、ああああ……ごめんなさい……」
美濃はかなり盛大にうろたえた後、美雨に謝った。美雨と美濃はお互いしばらく目を合わせてた。その顔は少しずつ、二人ともいつもの可愛らしい笑顔へと変化していく。稲城もいつもはあまり見せない優しい表情で、それを見ていた。
「……それにしても、二人とも……ここにいるなんて」
僕は美濃と稲城がここに戻ってきてくれたことに感動して涙が溢れ出していた。
「羽有、泣いてるのか」
「違うぞ稲城。小さなゴミでも入ったんだよ。たぶん。ここ埃っぽすぎるからな」
「そうか、ちなみに自分は図書室よりも居心地がいいから偶然ここにいるだけだからな」
「へえ、そうなんですか。こんな座り心地も悪いのにですか? 稲城くんは変わってますね」
そう稲城に反応した美濃も涙が浮かんでいた。
「あれ? 私の目もホコリに反応してしまったみたいです掃除しましょう掃除!」
「そうだね! 掃除しよう!」
美雨が音楽室の掃除用具入れからホウキなどなどを持ってきた。
それから、僕たちは大々的に掃除した。
ホウキで大きなゴミを集めて、床を丁寧に水拭きし、窓も拭いた。
自習時間が終わった時、音楽室楽器置き場裏は美しい空間へと変わり果てていた。




