17 動けなくなるような光景(大洲のお話)
さて、最後は大洲についてのお話をしたいと思います。
大洲市は、以前お話した内子町の隣に位置する街。北側は瀬戸内海に面する一方で、中心市街地は盆地の中にある自然豊かな街です。
同時に昔ながらの街並みが残る場所としても知られており、「伊予の小京都」なんてキャッチコピーもあるんだとか。
松山からだと、高速を使って約1時間程。電車なら「特急 宇和海号」で35分です。
この街最大の観光名所といえば、なんといっても大洲城でしょう。
ここは肱川という川のほとりに建てられたお城。
そしてどこか懐かしく、のんびりとした雰囲気漂う大洲市街地の中にあります。
天守閣は明治時代に1度取り壊さたそうですが、平成初期に再度復元されました。
大洲城のHPによると、明治時代の古写真などを元にした一大プロジェクトだったそうです。
お城は白と黒の壁がなんとも美しい木造。中に入ると、とても良い木の香りが漂っています。
そして、天守閣に登ると見えるのはそばを流れる肱川。そして川の向こうには盆地に作られた大洲市街地が眺められます。
肱川は大洲の市街地の西側を大きくカーブするように流れていて、ダイナミックでありながら、落ち着いた雰囲気も感じます。
さて、大洲に来たらもう1か所、是非見ていただきたいのが臥龍山荘です。
ここは大洲城から車で5分程。肱川河畔の最も美しい景勝地、と言われる場所に作られた山荘です。
公式HPによると、元々江戸時代に大洲藩主によって庭園が作られたらしいこの場所。
そこに、明治時代の豪商が立てた別荘が、現在残っている山荘だそうです。
入口から入ると、まず通されるのが臥龍院。ここは茅葺き屋根で平屋建ての、いわゆる田舎の立派な屋敷、といった建物です。
ミシリ、ミシリ、と歩くと音を立てる木造の建物は、どこか静寂を感じる……すごく格調高い、和を感じる場所です。
そして、その奥には茶室である知止庵。
そしてさらにその奥に、私がことさら感動した不老庵があります。
ここは肱川のそばにある崖から、せり出すように建てられた建物です。
私が始めてここを訪れたのは秋の終わりのこと。
山荘の奥へ進むと、ほんの少し紅葉の残る木々に囲まれた、茅葺き屋根の建物が目に飛び込みました。
縁側とを隔てる障子が開け放たれていることで、なんとも開放的な雰囲気も感じるその先には、どこか寒々しい雰囲気の大きな川が流れています。
ここは本来夏向きの建物だそうなので、ベストシーズンは夏なのでしょう。
けれども、北風吹きすささび、落ち葉が音を立てて舞う庭。そこに佇む、どこか寂しげな雰囲気のある庵。
その向こうに広い川。大きな山。それから、どんよりとした空が広がる光景に、私は思わず立ち尽くしてしまいました。
前回お話したしまなみ海道が陽の美しさでしたら、この時見た景色は陰の美しさでしょうか?
はたしてうまく言い表せているか。そもそもこの建物の正しい楽しみ方なのかも分かりません。
けれども、この時に見た不老庵の景色は、私の中でもトップクラスに忘れられない景色となっています。
もちろん、公式HPによれば春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は時に雪。
四季折々の美しさがあるようですので、どの時期に行っても素晴らしい景色を楽しめると思います。
さて、ここまで愛媛県の各地の魅力についてささやかならがお伝えしてまいりました。
今回取り上げた以外にも、愛媛県には魅力的な場所がたくさんあります。
未訪問の場所だと高知県境に近い四国カルストや、西日本最高峰の石鎚山も、いずれ訪れたい場所だったりします。
もちろん、愛媛県以外にも四国、そして日本全国に素晴らしい場所はたくさんありますよね。
皆様も、時には日々の疲れを癒やしに素敵な旅へ。
その時、「愛媛県、良いかも」となってもらえるようなお話が出来ていましたら、私としては望外の幸せでございます。
ここまでえらく長いお話ではございましたが、お付き合いいただき、心より感謝いたします。
不老庵です。




