表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/168

50話

「ん、どうかした?」

 無言の俺を怪訝に思ったのか、七海がこちらを覗き込むように尋ねてきた。そこで俺も我に返る。

「あ、いやっ、ごめん。ただ、七海が笑っているのが新鮮で……。ほら、夜にこうして会うときの七海は学園での七海と別人のようだったから」

 そこで七海もハッとする。どうやら無意識だったらしい。

「あっ、えっと、これは……」

 指摘を受けた七海は視線を泳がせながら言葉を探す。どうやら、今の言動は自分にとっても思いもよらぬものだったらしい。


「いや、七海は笑っている方がいいと思う」

 あたふたする七海を落ち着かせるように、俺は穏やかに呟いた。

「えっ?」

 七海が首を傾げる。

「ほら、学園にいるときの七海は明るくて、クラスのムードメーカーだったから、俺、初めてあの夜に七海に会ったときは、七海が別人のようで驚いたんだ。いきなり刀を突きつけてきたし、いつもツンケンしていたからな。どっちが本当の七海なんだろうって思ってた」

「……」

 七海は静かに俺の言葉に耳を傾けている。

「正直、七海のことが怖かった。俺が全然知らない七海だったからさ。でも、それってどっちも七海なんだよな。クラスで明るく振舞う七海も、怪異を倒しているときの七海も。だって、さっきの笑顔は、どっちも一緒だったから。それを踏まえて、やっぱり七海には笑顔が似合うなって思ったんだ」

 先ほどの七海の笑顔を見て思ったことを正直に口にする。それほどまでに、先ほどの笑顔は魅力的だと感じた。


「……バカじゃないの?」


 七海は顔を俯けてながら、俺を罵倒してきた。しかし、その声は少し震えていて、耳も赤くなっているように見えた。

「こっちの私が本当の私。学園での私は、……ムードメーカーという役を演じているだけ。……、さ、早く食べよ? 次の怪異の討伐に行かないとっ」

 そう言って、七海はお弁当箱からおにぎりを取り出して、手に取ったそれにかぶりつく。


 俺はそんな彼女を横目に見ながら、自らも目の前のおにぎりを頬張るのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ