24(2)話
二章 第二
志藤さんが、放課後に俺の家に来るようになることが決まってから数日が経った。
あれ以来、志藤さんは毎日のように俺の家に来る。とはいっても、家に来たらすぐに母さんの部屋で魔導の練習をし始めるので、俺がやることといえば、俺の家から志藤さんの家まで、彼女を送ることぐらいだった。魔導の練習はほとんど夜が更けるまで行われるため、女の子一人で帰らせるのは不安だと判断したからだ。
母さんの話を聞く限り、志藤さんの練習は順調なようだ。もともと彼女の要領がよかったのか、母さんに言われたメニューを着実にこなしていけているらしい。もしかしたら、彼女が魔導を習得するまでそこまで時間はかからないのかもしれない。
で、今日も魔導の練習を終えた彼女を家まで送ったのだが……、
「はい」
自宅に戻ると、母さんがレンタルショップ店のロゴが入ったレジ袋を手渡してきた。中にはブルーレイケースが数個入っている。
「えーっと、一応聞いてもいい? なにこれ?」
嫌な予感しかしなかったが、念のため母さんに問いかけた。
母さんは困ったように笑って、
「え、えっとね、今からこうくんにそれを返しに行ってもらえないかなぁって」
そう言うと両手を合わせる。
「はあぁ……」
嫌な予感はあたった。思わずため息が出る。
「今からじゃないとだめなの?」
今の時刻は午後八時。
夕ご飯もまだなのでお腹が空いたし、レンタルビデオ店はここから距離があるから、今から行けば帰ってこられるのは九時くらいになってしまう。
それになにより、こんなことを頼むなら志藤さんを送る前に頼んで欲しかった。それなら、一度に用事を済ますことができたのに。
母さんも俺の心情を理解しているのだろう。
申し訳なさそうに両手を合わせている。
「ごめんね。今日が返却日ってことをすっかり忘れててっ」
「……わかった。それじゃ、これを返してくるよ」
これ以上すねるのもみっともない。
それに、母さんがあまりにも申し訳なさそうなので、さっさとこちらが折れることにした。
「ありがとう。今日の晩ご飯はこうくんの好きなから揚げだから、いつもより多めに作っておくわね」
玄関のドアに手をかけると、母さんの安堵した声が背後から聞こえた。
「うん、行ってきます」
そうして、俺は今日二度目となる夜の外出をすることになったのだった。




