表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/100

来訪者と模擬戦を行う盗賊

「ならば開始の合図は妾が出してやろう。2人とも少量とはいえ酒も入っておるし、はしゃぎ過ぎぬようにな?」


 俺とソルマが向かい合うと、無鬼(ナキ)がグラスを持って間に立つ。

 無鬼(ナキ)の言う通り、酔いで力加減が僅かに狂うかもしれない。

 その僅かな誤差でも、俺の能力値(ステータス)では酷い事故を起こす可能性もある。


「勿論、そうならないように気を付けるとも。とは言え私は『剣士』として、剣を使わせてもらうがね?」


「ああ、構わない。折角だし俺もノーフォームを使いたいけど、アレは家の中に……ん?」


 俺の手の中に、何時の間にか球体のノーフォームとメダルを入れた小袋が握られている。

 家の方を見てみると、メシアがこっちを向いてピースしていた。

 成程、流石は俺の相棒……考えてる事を見透かされている。


「久しぶりだね、Ms.メシア。少しお邪魔して、少しローブをお借りしているよ」


「うん、久しぶり……まあ、今の貴方なら……貸してあげる……」


「あの、本人の意思は……いや、まあ良いんだけどさ。俺も結構ノリ気だし」


 小袋から剣のメダルを取り出し、ノーフォーム片手剣に変形させた。

 更に味方から盗む(フレンズスティール)によって、シーリアスの【王女の剣】で青い水晶剣を左手に取る。

 手加減するつもりは全く無い、俺は全力でソルマの全力を受け止めるつもりだ。


「二刀流か……しかもその水晶剣は、スキルによって作られている。不思議なスキルを手に入れたようだね」


「これに関しては、手に入れたんじゃなくて借りてるんだ。まあ、後で説明するよ。それより今は……」


 俺とソルマは互いに構え、睨み合う。

 自然と口角が上がり、酔いと興奮で心臓の鼓動が速い。

 こんな風に戦いが楽しめるようになったのは……無鬼(ナキ)の言った考え方で言えば、ソルマのおかげかもな。


「2人とも、準備は出来ているようじゃな? それでは……始めるのじゃっ!」


 無鬼(ナキ)の開始の合図で、ソルマが一気に走り出す。

 対する俺は2本の剣を構え、どんな動きをしてくるのか見極める為に待った。


「左手に剣……右手の義手に何も持っていない……?」


 確かソルマは右利きで、右手に剣と左手に盾を持つ基本的な構えだった筈。

 さっきの動きの確認からして、義手はそこまで悪い物じゃない。

 むしろ逆に高性能だからこそ、右手を自由にしているのか……?


「受けてみろっ!」


「おっとっ!」


 目の前に来たソルマの最初の一撃は、義手による強烈な右拳だった。

 両手の剣を交差させ、刀身でソルマの拳を防ぐ。

 しっかり踏ん張っていたというのに、少しだけ後ろに押されてしまった。


「この程度か、君の防御を崩す自信があったのだが」


「いやいや、俺を少し押し下げるだけで充分だろ……?」


 一応俺はダンジョンマスター数匹分の強さを凝縮した、とんでもない能力値(ステータス)の塊の筈。

 まあその割には戦いで、ボロボロになる事も多いけど……

 今度は俺から前に出て、両手の剣を駆使して舞う様に斬りかかる。


「やはり、一撃一撃が……重いっ! ギリギリで逸らすのが、精一杯だ……くぅっ!?」


「本当に凄いよ、あの決闘の時とは比べ物にならない。だからもう少し、強く行く……!」


 ソルマの強さに尊敬し、俺は剣を振るう速度を上げて込める力を増やしていった。

 更に今では剣だけで攻撃していたが、蹴りや拳を交えていく。

 それでもソルマは防ぎ、受け流し、的確に凌ぎ続けていた。


「くっ、【剣技】七宝斬っ!」


「じゃあこっちもだっ!」


 止まらない連撃の隙を突き、ソルマが円と星の煌めきを描く派生技で打破しようとしてくる。

 だが俺はメシアの【宣言破棄】を借りて、同じく円と星の煌めきを描いて全て相殺した。

 同じ派生技ならば、後はお互いの能力値(ステータス)勝負になってしまう。

 結果として俺が押し勝ち、ソルマは体勢を崩した。


「これが私の奥の手だっ!」


「なっ!?」


 ソルマが右拳を何とか俺に向けると、義手が勢いよく撃ち出される。

 その予想外の奥の手に思わず固まりかけるが、背骨を折るように上体を無理矢理逸らして躱した。

 その一瞬はソルマが体勢を立て直すのに充分だったようで、既に左手の剣を振りかぶっている。


「刃よ、届けっ!」


 ソルマの剣が、体を起こした俺の頭に迫っていた。

 【爪技】の火焔爪で迎撃も間に合いそうにない、だったら!


「っ!」


「歯だとっ!? なっ!?」


 ソルマの刀身を噛んで受け止め、そのまま首を振って投げ飛ばす。

 地面に倒れるソルマに両手の剣を投げつけ、左腕の袖と右足のズボンの裾を地面に()い付けて動けないように固定した。

 トドメに獣王爪斬で巨大な獣の腕を作り上げ、ソルマの喉元に突き付ける。


「ソルマも強くなっていたけど、俺もまだまだ強くなっている。上には上が居るって、あの魔王が体に叩き込んできたからな」


「フッ、それがローブらしいよ。そんな君だからこそ彼女達は支えてくれるのだろうし、私もこうして変わる事が出来た」


 ソルマの拘束を解き、手を貸して助け起こした。

 意外な驚きがあって、シーリアスとの模擬戦とは違う楽しさがある。

 また、模擬戦出来ると良いな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ