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空で襲われる鬼女と女騎士と魔術師と盗賊

 東の国を目指し始めて数時間、俺達の旅は順調……とは全く言えなかった。

 様々な魔物に囲まれながら、俺達はハーティに空を駆け抜けてもらう。

 東の国に向かい始めたら、一気に東の国の魔物が襲ってきやがった!


「メシア、バリアを拡大出来るか? ハーティを丸ごと包める程だ!」


「勿論、任せて……!」


 まだ任せてか、メシアの方は少し余裕があるみたいだな。

 俺の指示通りに、ハーティの周囲にバリアがググっと押し広げられていく。

 良し、これなら包囲網を一気に突破出来る筈だ。


「ハーティ! メシアのバリアを信じて突っ込め!」


 心強い咆哮が返ってきた後、魔物の包囲網に向けてハーティは一気に加速する。

 だけど勿論、そのまま突っ込ませるわけにはいかない。

 俺がある程度、魔物を倒して道を作る!


「【同時発動】、【爪技】獣王爪斬×【爪技】獣王爪斬……引き裂けぇっ!」


 両腕を上に高く掲げ、バリアの外側に巨大な獣の腕を2つ作り上げる。

 交差させながら腕を振り下ろせば、巨大な獣の腕がハーティの前に居る魔物をバラバラに引き裂いた。

 俺でも一撃で薙ぎ払えるような魔物なのは助かる、メシアがバリアの維持に集中出来るからな。


「昨日とは打って変わって、激しい歓迎じゃな!」


「ああ。だが予測してなかったわけじゃない、このまま強引に突破する!」


「だがこれだけの魔物を引き連れて、街に行く事は不可能だ。まずはあの大群を振り切るか、殲滅しなければならない」


「だから纏めて吹き飛ばしてくる。シーリアス、無鬼(ナキ)が飛ばされないように抑えてくれ。メシア、バリアの後ろに出口を頼む」


「分かった、気を付けて……!」


 俺はハーティの背で立ち上がり、引き離された魔物の大群を睨みつける。

 メシアが杖を翳すと、ハーティを包むバリアに穴を開けた。

 俺は躊躇する事無く、魔物の大群に向かって全力で跳ぶ。


「ローブ、何をするつもりじゃ!?」


 俺は右手に球体のノーフォーム、左手に弓メダルを持って空中で組み合わせた。

 ノーフォームを弓形態に変形させ、魔物の大群に向かって弦を引く。

 撃つのは魔力の矢じゃなくて、魔法だ!


「【同時発動】、【弓技】メテオライト×【神聖魔法】ホーリードラゴンッ!」


 神聖属性の魔力で矢を作り、指を離す。

 放たれた矢が隕石のように膨らみ、口を開けて龍の姿を取った。

 超高速で撃ち出された光の龍は、魔物の大群を次々に呑み込み消し去っていく。


「ローブが落ちるっ! ハーティ殿、急いで旋回を!」


「ううん、止まるだけで大丈夫……今、行くから」


 ハーティが空中で羽ばたいて静止すると、メシアのバリアが消えた。

 落ち始める俺の目の前にメシアが現れ、俺の服をキュッと掴む。

 そう、俺にはメシアが居るから大丈夫だ。


「ふぅ……メシア、ありがとう」


 メシアの【転移魔法】が発動し、俺達はハーティの背中に戻ってくる。

 取り敢えず、あの大群は光の龍で全滅させられる筈だ。


「ううん、気にしないで……それじゃあ、バリアを貼りなおす」


「ああ、頼む。ハーティ、直ぐに出発だ! 真っ直ぐじゃなくて、膨らむような軌道で東の国に向かってくれ!」


 メシアが指を鳴らすと、ハーティの周囲にバリアが張りなおされた。

 これで第一波は、終わりだと考えても良いだろう。

 ハーティが大きく返事した後、少し軌道を変えながら飛び始めた。


「ローブ、お疲れ様だ。飲み水は居るか?」


「ああ、いただくよ」


 シーリアスが差し出してくれた水筒を一口飲み、軽く息を吐く。

 メシアが手を出してきたので水筒を渡し、俺は頭の中にパトリオット王国から東の国までの地図を思い浮かべた。

 魔物の襲撃は予想していたけど、まさかこんなに早いなんて……


「昨日ぱとりおっと王国へ向かう時は、追手など全く()らんかったというのに……! 東の国に向かい始めたら、何故一気に襲撃が増えたのじゃ!?」


「うーん……東の国に、向かい始めたから……?」


「そうかもな。あの御方は無鬼(ナキ)が、東の国に辿り着くのを嫌がってるように思える。これから東の国に近付くほど、襲撃が激しくなるのは間違いないな」


「では、このまま空を行くのは危険ではないか? 辿り着くまでの苦労は増えるだろうが、魔物を迎え撃ちやすい地上のルートに変更するのはどうだろう?」


「いや、このまま空で行こう。地上で俺達が迎え撃ちやすいって事は、魔物もこっちの襲撃をしやすいって事だ。まだまだ空中で戦える魔物が相手の内は、空中で突き進みたい」


「……空中での戦闘で一番負担があるのは、ローブとメシアだ。君達が大丈夫だと言うなら、自分も言う事は無い」


「シーリアス、心配してくれてありがとう……でも俺達なら大丈夫だ」


 あの程度の魔物なら、俺のスキルだけで幾らでも倒せる。

 それにしてもあの御方の目的が分からなくなってきた。

 無鬼(ナキ)の保護か抹殺、どちらにしろ東の国に近付くのは良い事の筈。

 なるべく自分から離れた所で、魔物に無鬼(ナキ)を始末させたいとか……?


「鍵はやっぱり……無鬼(ナキ)とあの御方か」


 せめてどちらかの正体がハッキリすれば、何か掴める気がするんだけど……

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