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女騎士の相談を受ける盗賊

 シーリアス王女が2人きりで話したいと言ってきたので、もう1つの寝室に移動する。

 相談したい事か……一体何だろう?

 シーリアス王女は忙しいし、東の国まではついてこれないとかそういう事かな。


「シーリアス王女、相談したい事ってなんです?」


「本題の前に軽い相談なのだが……ローブ殿、自分に敬語を使うのは止めないか?」


「え? いや、まあ止めても大丈夫ですけど……良いんですか?」


「ああ。自分もローブ殿を呼び捨てにするから、ローブ殿も遠慮なく自分を呼び捨てにして欲しい。敬語を使われると、仲間外れの感じがして寂しくてな……」


「す、すいません……いや、ごめん。シーリアス、これからは気を付けるよ」


「ああ。ロ、ローブ……お願いする」


 なんか急に敬語を止めるって、凄い恥ずかしい気がする。

 でも俺の敬語のせいでシーリアス……が寂しい思いをしていたのなら、止めないわけにはいかない。

 これからは頑張って、シーリアスにも普段通りの口調で居よう。


「それじゃ、本題の方なんだけど……」


「ああ。これはメシアや無鬼(ナキ)殿には内緒にしてほしいのだが……」


 メシアや無鬼(ナキ)には秘密……一体、何を相談するつもりなんだ?

 真剣なシーリアスの表情に、俺も自然と顔が強張(こわば)る。


「パトリオット王国に戻ったら、自分を職業神殿に連れて行ってくれないか?」


「職業神殿!? そ、それってつまり……」


「ああ。自分はアムルンさんの酒場で冒険者として登録してもらい、『職業』を手にしようと思っている。どうだろうか?」


「いや、駄目とは言わないけど……何で急に冒険者になろうと?」


 ついこの前まで、シーリアスは冒険者の事を嫌っていた。

 今は少しマシになっただろうけど……それでも急にこんなこと言い出すのは、何か理由があるに違いない。

 俺に駄目だと拒否する権利は無いし、せめて理由を聞いて納得しておこう。


「簡単だ。自分は力が欲しい……騎士として、君やメシアを守れる盾となりたいんだ。ローブの負担を、減らしてあげたい」


「俺は別にそんな……」


「いいや、ローブの負担は間違いなく多い。索敵、攻撃、防御、攪乱、陽動、回復、思いつくだけでこんなにある。その内の1つ位、減らしてあげたいのだ」


「気持ちは嬉しいけど、狙い通りに守れる職業になれるとは限らない。複数の職業が候補に挙がる事もあれば、1つの職業しか選べない事もある……俺みたいにね」


 俺は『盗賊』しか選べなかった、それでもメシアと冒険が出来るならと『盗賊』を選び……後悔してしまった。

 防御が出来る職業、言い換えれば盾で守れる職業は少なくない。

 でもシーリアスが狙うのはパーティーを守れるような職業、となると種類は限られてくる。


「それでも、自分は魔物と戦える力が欲しい。ローブとメシアが激しく戦う中、自分が腰を据えて無鬼(ナキ)殿を守れた方が良い筈だ」


「……そうだな、シーリアスの言う通りかもしれない。じゃあパトリオット王国に着いたら、案内するけど……2人には秘密にすれば良いんだよな?」


「ああ、上手く誤魔化してほしい。自分が職業を手にした事は、必要な時が来るまで隠しておくべきだろう。東の国の敵は、まだローブとメシアしか警戒していない筈だからな」


「分かった。メシアと無鬼(ナキ)が屋敷に準備している間に、職業神殿に行こう。お目当ての職業になれたら、おっちゃんの所に行って装備も整えないと」


「ありがとう、ローブ。時間を取らせてすまない、自分はハーティ殿を街の外に待機させておこう。君の準備はメシアがしてくれているのだから、あまり動かずに待っているのだぞ?」


「分かってるよ。ありがとう、シーリアス」


「そ、それでは行ってくる」


 お礼を伝えると、シーリアスは頬を赤く染めながら部屋を出ていってしまった。

 やっぱり呼び捨てにするの、凄く照れ臭い。

 まあそんな俺の感情は置いといて、シーリアスが冒険者の職業を……


「職業神殿、俺がメシアから離れる事を決意した場所……」


 正直、もう2度と行きたくない場所と言っても過言じゃない。

 でもあそこに行けば、【盗む】の異常な強さの原因の手がかりを掴める可能性がある。

 そう考えるとシーリアスの申し出は、良いタイミングだ。


「ローブ、こっちの寝室に居たの……?」


「メシアか。居るよ、どうかしたのか?」


 考え事を遮ったのは、ノックとメシアの声。

 扉を開けると、ダンジョン攻略の装備に着替えたメシアが立っていた。


「準備が出来たよ、いつでも出られる……シーリアスは?」


「もうハーティを連れて、街の外に居るよ。それじゃあ無鬼(ナキ)を連れて、先に向かっててくれるか? 俺はアミチェさんに改めて挨拶してくるよ」


「分かった……それじゃあ、ちょっとの距離だけど……炎の蝶、置いておくね……!」


「……悪いな、メシア。折角のバカンスだったのに、全然休めなくて」


「気にしないで……困った人を見過ごせないのは、ローブの良い所……! むしろバカンス続けるなんて言ってたら、逆にブッ飛ばしてた……!」


「本当にごめん……無鬼(ナキ)の無事が確保出来たら、東の国を観光しよう」


「うん、そうだね……!」


 その為にも無鬼(ナキ)を狙っている奴を、見つけ出さないとな。

 バカンスを滅茶苦茶にされた怒りを、全力で叩きつけてやる……!

 

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