バカンスに来た女騎士と魔術師と盗賊
「凄いな、これが海か……ダンジョンじゃない、安全な海が実在するなんて思わなかった」
青く澄み渡る大空、漂う白い雲……そして、広い砂浜と輝く広大な海!
俺とメシア、シーリアス王女とハーティの3人と1匹でバカンスに来ている。
闘技場の控室で、メシアと約束したからな。
それにメシアとパーティーを組んでから、凄い勢いでお金が溜まっていくし……やっぱSランクの依頼って凄い。
「本当にビーチを貸し切らなくて良かったのか? 父上に相談すれば、数日なら自分達だけで使う事も可能だが……」
「いやいや、俺達しか居ないのは寂しいじゃないですか。外出先なのに誰も居ないなんて、逆に気が休まらないでしょうし」
「むぅ、そういうものなのか。まあ自分はローブ殿とメシア殿に誘ってもらった身、君達の流儀に従おう」
「えっと、じゃあ……宿は、大丈夫……?」
「ああ、大丈夫だ。アムルンさんの妹が近くの町で宿を経営しているらしい。預かっている手紙を渡せば、必ず部屋を用意してくれるってさ」
アムルンさんの妹……どんな人なんだろうなぁ。
まあ宿の場所も把握してるし、慌てなくても今日会えるのだから楽しみにしておこう。
今はとにかく、初めての海を楽しまないと!
「それじゃあ、水着に着替えたい……シーリアス王女、場所分かる……?」
「ああ、勿論だ! それでは更衣室に案内するが……ローブ殿はどうする? 誰かがハーティ殿と荷物の傍に居なければならないだろうし、自分が戻ってきて案内しようか?」
「ああ、いや俺は大丈夫です。実は海が楽しみ過ぎて、もう服の下に水着を着ていまして……」
「子供かっ!? まあそれなら少し待っていてくれ、メシア殿と着替えてこよう」
「ローブ、後でねー……!」
着替えの入ったバッグを持って、メシアとシーリアス王女が更衣室に向かっていった。
俺はハーティの背中に載せていた荷物を下ろし、パラソルやシートを用意しておく。
多分メシアは少し遊んだら、体力が無くなって後は休んでそうだからな。
準備が終わって服を脱いで、水着の姿で2人の帰りを待っていると……
「ローブ、お待たせ……ど、どうかな……?」
横から声をかけられ、ゆっくりと振り向く。
スカートの付いた、ワンピース型の紫の水着を着たメシアが立っていた。
大きめの麦わら帽子を被り、恥ずかしそうに帽子のつばを押さえている。
「可愛いと思う……うん、凄い似合ってるよ」
「あ、ありがと……ローブも水着、似合ってる……カッコいいよ……!」
「そ、そうか? ありがとな……!」
メシアが褒めてくれた俺の水着は、焦げ茶色のサーフパンツ。
一応水着の下には水中用の下着を履いているんだけど……なんか、ほぼパンツ一丁って感じで落ち着かない。
でもこれがビーチでは普通らしい……やっぱ海って凄いな。
「先に戻っていたのか、メシア殿探したぞ……」
シーリアス王女が溜息を吐きながら、メシアに声をかける。
全身にピッタリと貼りつく、前方にチャックの付いた黒のウェットスーツ。
シーリアス王女の水着、ボディラインがハッキリと出て……これはこれで、凄い。
「ローブ、シーリアス王女は水着……凄いんだよ……!」
メシアがシーリアス王女に近付き、ウェットスーツのチャックを下ろす。
隙間から見えたのはきれいな肌と、大胆な赤色のビキニだった。
予想外の衝撃的な光景に、俺はシーリアス王女の水着から目が離せない。
「ロ、ローブ殿……! この水着はその……君以外には、見せないからな……?」
チャックを元に戻しながら、シーリアス王女は小さく呟いた。
先日のドレスの時もだけど、俺の為にって言われると……本当に嬉しい。
それにしてもこの水着が……
「まさか、この水着をおっちゃんが作ったなんてなぁ……」
「ワタシのも、おっちゃん作……」
「自分もだ。身に着ける物は、何でも任せてくれと言っていたからな……」
「じゃあおっちゃん、短期間で俺達3人の水着を仕立てたのか……」
おっちゃんが親指を立てて、ニッコリ笑っている姿が頭に思い浮かぶ。
バカンスが終わったら、おっちゃんに何かお礼したいな。
今度メシアとシーリアス王女に相談して、何か考えてみよう。
「それでは最初は自分が荷物を見ておこう。まずはローブ殿とメシア殿、ハーティ殿で初めての海を楽しんでくると良い」
「ううん、皆で一緒に行こう……? 荷物番なら、ワタシが用意する……!」
そう言ってメシアが、持ってきた荷物の中から世界樹の杖を取り出した。
杖の先を荷物に向けると、人型の青い炎が2体産み出される。
【炎魔法】最強の派生技なのに、贅沢な使い方だな……まあ、こういうのもメシアらしいか。
「デーモン討伐の時の青い炎、このように人型でも出せるのか。だがこれはメシア殿が、操らなければならないのではないか?」
「今回は、荷物に触れた何かを……勝手に攻撃するようにしたから、大丈夫……! もし倒されても、自爆するから安心……!」
「いや、自爆はさせられないから。まあ俺もこまめに【索敵】しておくよ、50メートルも離れる事は無いだろうしな」
俺はメシア、シーリアス王女、ハーティと視線を移す。
そして大きく頷いた後、広い海を指で示した。
「それじゃあ、今日は何もかも忘れて遊ぼうか!」
「「おおーっ!」」




