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大暴れする盗賊

「【槌技(ついぎ)】粉砕乱舞っ!、オラオラオラオラァッ!」


「【剣技】七宝斬! ハァッ!」


 ダンモッドが俺の左側で豪快にハンマーを振り回し、ソルマが右側から円と星の煌めきを描く複雑な軌道を繰り出してきた。

 ハンマーは全て左腕にある鉤爪の甲で受け止め、剣の軌道には右手の鉤爪を丁寧に合わせる。

 連撃系の派生技は威力を盗む(パワースティール)を合わせるのは難しい、だがこうやって確実に防ぎ続ければ……


「ここだっ!」


 派生技の終わりに合わせて、大きく武器を弾いた。

 剣を弾かれて姿勢を崩すソルマの胴体に、足裏を叩き込むような蹴りを放つ。

 ソルマは何とかバックラーを挟み込むが、大きく吹っ飛んで背中から叩きつけられた。


「くぅ……っ!」


「くたばっちまえぇっ!」


「甘いんだよっ! 【盗む】装備を盗む(イクイップスティール)!」


 ダンモッドが背後からハンマーを薙ぎ払うが、振り返って手で受け止める。

 次の瞬間には、俺の手にダンモッドのハンマーが装備されていた。


「なっ、俺のハンマーをっ!?」


「たまにはぶん殴られる気分を味わえよっ!」


「ぐげぇっ!」


 奪ったハンマーを両手で握り、ダンモッドに全力でフルスイング。

 ダンモッドは大きな盾で防御するが、容易く貫いて一気に壁に激突させた。


「ソルマ、ダンモッド……立て直せ、【弓技】ブランチシュート!」


 エイロゥが俺に向けて真っ直ぐ魔力の矢を放つと、矢が枝分かれして同時に迫ってくる。

 俺はマントの端を掴んで体の前に持っていき、ブランチシュートの直撃を防いだ。

 だが地面に何か球体の物が転がってきて、突然煙を噴き出し視界を悪くしてくる。

 ブランチシュートに紛れ込ませて煙幕か、だが視界を潰しても俺には通じない!


「煙幕なんて『盗賊』には通じない。【索敵】……そこだっ!」


「ぐっ!? 馬鹿な……!?」


 【索敵】で周囲の気配を探ると、背後にエイロゥの気配があった。

 振り返りながらハンマーを投げつけてやれば、エイロゥの腹部に叩き込まれる。


「エイロゥの煙幕と立て直せという言葉は、お前自身が奇襲を仕掛ける合図だ! 気付いてないわけが無いだろ!」


 エイロゥの不意打ちを防いだ俺は、ダンモッドを吹き飛ばした壁を睨む。

 どれだけ視界を遮ろうと、気配を隠そうとしても俺の【索敵】は見逃さない。

 壁から抜け出して膝を着くダンモッドに、【回復魔法】をかける為にビソーが駆け寄るのを。


「ダンモッド! 今治しますよ!」


「おう、頼むぜ……!」


「【回復魔法】ゴッデスヒー――」


「悪いな、それは駄目だ。【盗む】支援を盗む(バフスティール)!」


 ビソーとダンモッドが居るであろう方向に手を伸ばし、派生技を宣言しながら腕を手繰り寄せた。

 俺の体を緑色の光が包み、ダンモッドにかけられる筈だった魔法が癒してくれる。

 と言ってもダメージは全く受けていないので、無駄になっているが。


「ハア!? アイツ手で触れずに盗みやがったんですがっ!?」


「そんな【盗む】もあんのかよ、クソッ!」


 煙が消えていき、俺はゆっくりと周囲を見渡す。

 肩で息をするソルマ、腹を抑えて立ち上がるエイロゥ、壁によりかかり座り込んでいるダンモッドに片膝立ちで俺を睨んでくるビソー。


「このままじゃ駄目だな……決定的な一撃が足りない」


「ローブ、君は何を言っている……?」


「仕方ないんだ。俺の役割はサポート。相手にトドメを刺すのは基本的にメシアの仕事だからな。幾ら俺が強くなったって、お前らを倒しきるのは少し時間がかかり過ぎる」


 獣王爪斬なら決定的な一撃になるだろうけど、ソルマ達に使うには隙が大きすぎるだろう。

 このままジワジワと追い詰めていくのが確実だろうが、それでは俺の気持ちが晴れない。

 あのスキルを使おう、ベイマー森林のダンジョンマスターから盗んだスキル。

 誰かと一緒の時には使えない、危険なスキルを。


「アイツ、何で武器を外してやがんだ?」


「降参のつもり……って事じゃないですよね?」


「何かを仕掛けてくる……ソルマ、気を付けよ」


「勿論だ。もう理解しているとも……ローブは全力を尽くして、何とか戦えるかもしれない化け物だと」


 俺はノーフォームを球メダルで待機状態にして、懐にしまった。

 スキルを使えば敵と定めた相手が倒れるまで、動く物全てに攻撃を仕掛けてしまう。


「このスキルを使う為に、俺は1人を選んだんだ……行くぞ、【凶暴化】!」


 派生技を宣言した瞬間、俺の体から赤い魔力が一気に噴き出した。

 視界が赤く染まっていき、人物を判別する事が困難になっていく。

 心の底から破壊衝動が沸き上がり、張り裂けそうな痛みが全身を襲ってきた。

 これが【凶暴化】、痛みと理性を代償に攻撃に関する能力値(ステータス)を大幅に引き上げるスキル……!


「エイロゥ、ハンマーよこせっ! 俺様がぶっ潰してやる! 確か【凶暴化】中は、スキルが使えねんだろっ!?」


「その筈だ……受け取れっ!」


 エイロゥらしき人影が、ダンモッドらしき人影にハンマーを投げ渡す。

 ハンマーを受け取ったダンモッドは、盾を正面に構えて俺の方へと走ってきた。


「よせ、ダンモッド! 幾ら君でも、今のローブの攻撃は危険だ!」


「受ける前にぶっ潰せば良いだろうが! 【槌技】ミョ――」


「【同時発動】、【凶暴化】×【爪技】裂爪(れっそう)


 ダンモッドがハンマーを大きく振り上げた瞬間、俺は【同時発動】で【爪技】を発動させる。

 素手で発動した【爪技】にも関わらず、盾を引き裂いてダンモッドの鎧を抉った。


「【凶暴化】でも【同時発動】があれば、スキルは使えるんだよ……!」

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